Stardust Stargazer
−星屑(ほしくず) 星見人(ほしみびと)−


 
その18・巨大母艦シーラカンス  

イラスト by COSMOSさん



プチ加工byくずは
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 暗黒の宇宙空間を一隻の巨大スターシップが移動していた。ゆっくりと航行しているように見えるのは、やはりそのあまりにもの大きさ故なのだろう。数百機の戦闘機、偵察艇の母艦であり、居住区もその中に持つ移動可能なスターベース・シーラカンス。

人類はまだ未遭遇なのだが、掃除屋と呼ばれる放浪戦闘民族は、いずれもそういった巨大な移動スターベースシップで一生を終える。
希に教育課程に置いて、本営に才能を認められれば、聖地にあるエリート士官養成所へ出頭を要請されることもあるが、ほとんどが、同じスターシップ内でその生涯を終えるのである。

人工授精により機械の培養液の中で育ち産声を上げ、幼少期、成長期共に公の施設で集団で育てられる。成長が早く、2才にもなれば一人前の扱いを受け、それぞれ生まれ持った才能により教育を受ける事になる。
あるものはエンジニア、あるものは科学者など様々だが、一般的に兵士になる者が多い。兵士以外の職は、スターシップの維持の為に他ならない。
遙か昔は、彼らも彼らの母星が存在していた。そこから彼らは宇宙へ進出したのである。
だが、今は、自分たちの故郷であり、生涯をすごすそのスターシップが、彼らの唯一の母星となっていた。そして、そのスターシップの頂点となるのが、ガラエラのようなリーダーである。リーダー、つまり総司令官は、本営の膝元にあるエリート士官養成所出身の超エリートであり、摩擦を避けるため、その艦の出身者というケースが多い。
ガラエラのようなリーダー、そして、スターシップは、宇宙にいったい何機放浪しているのか、それは定かではない。本営を中央とし、ネットワークが築かれてはいるが、その実態は、ガラエラのような立場にいても、完全に把握することは不可能なのである。
全てが本営を通す。絶対的な権力を持つ本営に逆らう事は容赦ない粛清の的となるのだが、教育の徹底で、そのような反逆者は滅多にいない。
そして、本営は、リーダー同士で結託し反旗を翻すような事態に落ちないよう、必要でない限り、同族の母艦の所在地さえも、いや、その存在の情報さえも与えない徹底した方針を取っていた。


「どうした?」
ドアが開き、ゆっくり入ってきたゾルをデスクに座ったまま、ガラエラは見上げる。
「4.5月前に掃除した残党の船が50機ほど、この先の小隕石群の影で待機しているのが分かったんだが?」
「ほう。残党がいるとは思わなかったな。逃亡者の報告はなかったぞ?」
「ああ。我々ほどの規模でないにしろ、どうやら、母星から、別天地を目指して航行していた船であることが判明したのだが。それならそうと知らぬ顔してそのまま航行を続けて逃げ落ちればよかったものを。」
「そうだな。愚かな行為だが、本営に知られぬ前に残党の所在が判明したことは歓迎しよう。もし本営から言及されたとしても、あぶり出し作戦を取ったと言える。」
にやりとガラエラとゾルは笑みを交わし合う。
「奴らの残党くらい1個小隊でどうだ?」
「いや、今我々は銀河へ急いでいる。いちいちハエの相手になって遊んでやるつもりはない。」
「では、フロントレーザーで?」
「うむ。小隕石群もろとも焼き尽くせ。だが、どこかに母船がひかえているだろう。2度目の見落としはあってはならぬ。母船の所在を確認後、レーザー全開で照射。一旗たりとも逃してはならぬ。全て抹消しろ!」
「了解。」


それは、赤子を全力でひねり潰すようなものだった。
隕石群の背後に控えていた惑星の影にいた母船の姿がガラエラサイドに確認されると、それは始まった。
もちろん、それまで彼らも必死でガラエラの艦に攻撃を仕掛けてきた。だが、そんな攻撃は痛くも痒くもない。強固なシールドに守られ、堂々と航行を続けるそれに対し、彼らの戦闘艇は、ガラエラが例えたごとく、小さく力のないハエそのものだった。

別名女神の舞いという呼称を持つガラエラの艦シーラカンス。前面に女神の頭部を配置し、それにつながる翼で円を描いた形から来た愛称だが、その額部分に取り付けてある額飾りの宝石部分、それがフロントレーザーの放射台となっていた。
まさに神の手による制裁・・・その光景を見た者はそう感じたかもしれない。もっとも、その神が正しいのか正しくないのか・・・種族もろとも宇宙から抹消されるという非常な制裁を受ける彼らにとって、それが当然の報いなのか否なのか、その判断は・・・・できるものはいないだろう。

ハエはいとも簡単に滅せられていった。女神が放つ光から逃れる術は、何も持っていなかった。漆黒の宇宙に光の束が直線を描いていた。その直線上にいたものは、小隕石であれ戦闘機であれ、すべて瞬時にして消滅した。



「予定通り、コラーム第二星系でディリチジウム鉱石を採取する。私も行くぞ。」
「気分転換か?」
「たまには惑星に降り立つのも気持ちのいいものだ。それにそろそろ知的生命体が芽生えるころじゃないか?」
「確かにシードマスタープログラムによれば、すでに存在していていい頃だ。」



「か、神だーー!神が地上へお降りになられたぞーーーー!」
スターシップの動力源であるディリチジウム鉱石採取は、その機能性、機動力から、スペースバトルスーツ(酸素圏内外で使用可)で行う。
上空を飛ぶ姿あるいは鉱脈のある山麓に降り立ったその姿を見て、星の原住民はそう称し、恐れ敬った。



ガラエラ専用機

  
  


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