「ぶっわっかも〜〜ん!!プレゼント(ウイルス)付きのメールを届けるとは何事だ〜〜〜!!」
その日の終業も、係長の罵声で締めくくることとなった。
久美子と千里は共に社会人一年生。『(有)スペースデリバリー』の配達課に所属し、なかなか慣れない仕事に、日々てんてこまいしている。
デリバリーカーに乗り、1歩移動空間に出れば、そこはならず者の闊歩する空間。
『ハッカー』という名の海賊や、『デベロッパー』という名の暴走族が待ちかまえている。
各種お宝(データ)を満載して航行するデリバリースペースカーは、とくに彼らの絶好の標的となる。
その海賊(ハッカー)や暴走族(デベロッパー)の放つ、ウイルス砲をかわし、あるいは、アンチウイルスビームで粉砕し、目的地まで行かなければならない。
それは・・・のんきに大学までエスカレーターで出た久美子と千里にとって、あこがれだったが、非常に厳しい現実だった。
しかも・・・彼らは新人だからといって、女だからと言って手加減はしてくれない。
容赦なく襲うウイルスビーム!そして、ワーム砲!
・・・それに相反して、尽きかける彼女たちのバスター魚雷のストック。(ミスばかりしている。)
が・・そこをなんとか切り抜け、無事?帰社したというのに・・・・
「やっぱり、あそこで暴走族(デベロッパー)が不意に引き上げたのって・・ウイルスをもうメールに照射した後だったんじゃない!」
「そんなこと言ったって・・ちゃんとメールを渡す前にウイルスチェックしたよ?」
久美子と千里は、係長の罵声の前、小さく縮みながら言い合う。
「それにしても・・・報告(苦情)って早いよねー?」
「うん。」
「聞いてるのかね、君たちは?」
「あ!は、はいっ!す、すみませんでした!」
「ウイルス情報は常に最新情報にアップデートしておくように言ってあるだろう?ウイルス探知機の情報が古すぎたんじゃないのかね?」
地獄耳の係長には、2人の内緒話も入っていたらしい。
「す、すみません。」
平謝りに謝り、2人はその日もなんとか帰して貰う。
「何よーー!今日のウイルスって・・亜種なんじゃない?」
席に戻ってチェックした久美子が小声で怒ったように叫ぶ。
「え?亜種?」
「そうよ!あの時点ではまだ発見されてないか、発見したばかりだから、どうしようもなかったってこと!」
「でもさ・・・それでもやっぱり配っちゃ、会社の信用問題だよね?」
うーーん、と2人は頭を付き合わせて考える。それはもっともだが、どうしようもないことも確かである。
「あーあ・・・やっぱ免許取得してせめてケーブルエンジンカーにしないとだめね。」
「そうねー・・・いつまでもアナログエンジンカーじゃ、ノルマも十分こなせないし。そうすればハッカーの追撃も振り切れるかも。」
「そうねー。いつまでもC級ライセンスじゃ、バカにされるし。」
「うん。いくら営業ライセンスでもね。」
「どうする?今度の週末、講習あるって聞いたけど?」
「うーーん・・。」
毎日が戦争だった。その為週末は遊ぶどころか、バタンキューなのである。
2人は中継地(アクセスポイント)で見た上のハイウェイを行く流線型の格好いいADSLカーを思い出していた。
「き〜〜!・・もう・・ぐやじ〜いっ!」
「不景気だから他に仕事ないし。」
「そうねー。今更仕事変えるわけにもいかないわよねー?」
「だいたいあなたがいけないんじゃない?」
「え?なんで?」
「デリバリー会社に勤めれば、出会いが増えて選りどりみどりだって言うから!」
「あら!だって、普通じゃ行けない遠くの星とか異空間にあるコロニーへ行けるのよ?限られたところより、広範囲の方が、出会いの幅も広くなるに決まってるでしょ?」
「・・・・出会うのは海賊(ハッカー)や暴走族(デベロッパー)ばっかりだけど・・・・」
「・・・・・・」
大きくため息を付き、久美子と千里は、疲れた身体にむち打ち、家路についた。
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