### エンディング(3)・神の国へ ###

 そして、翌日からセクァヌは飛び回った。まるで悲しみを忘れようとするかのようにあれこれいろいろ指示し、何かあると真っ先にそこへ駆けつけた。傍目には悲しみから立ち上がり、意欲的に動いているかのようにみえた。が、シャムフェスはそんなセクァヌを見るたびに胸が痛かった。
まるでピンと張った糸のように常に張り詰めているセクァヌ。微笑んではいてもどこか違う。いつその糸が切れてしまうのか・・・心の支えになれない自分がシャムフェスは悲しかった。

そんなセクァヌを、シャムフェスは気付かれないようにそっと見守っていた。
時として励まし、時として叱り、シャムフェスは自分の心の傷よりセクァヌの方が心配だった。

それから数ヵ月後、国もようやく落ち着く気配をみせはじめた頃、そんなセクァヌの元に不思議な訪問者があった。
「どなた?」
「私はレイチェル。あなたを迎えに来ました。」
「迎えにってどういうことでしょう?」
「そうね、何から話しましょうか・・・・・・」

迎えに来た不思議な衣装を着た少女、ちょうどセクァヌと変わらないくらいのその少女は、セクァヌが思いもつかなかった事を話し始めた。

「う〜〜ん・・・そうよねー。普通に話したのではわかりにくいかもしれないわね。じゃー、こう考えてみるといいわ。つまり、女王様をあなたたちの宗教観の精霊王とみなして、世界は、精霊王の御手の中にあるの。で、その世界を息づかせるために、9人の『守護聖』と呼ばれる精霊がいて、精霊王はその力とご自分の力を融合させて世界を正しく導いているの。」
「え、ええ・・それなら分かるような気がします。でも、それと私を迎えにいらしたという事は関係ないようにも思えるのですが。」
「それが大ありなの!」
ふふっとその少女は笑って続けた。
「あなたの中にその守護聖の1人としての力が見つかったの。」
「え?私・・の中ですか?」
「そう。あなたの中に、『闇のサクリア』があることがわかったの。」
「闇のサクリア?」
「そう・・・安らぎをもたらす闇のサクリア。」
「でも、その守護聖様はもういらっしゃるのでは?」
「それが守護聖はそれぞれ宇宙に、いえ、世界に1人ずつしかいないの。新しい守護聖が現れるときは、それまでの守護聖がその力を失くした時なの。」
「では、今までの守護聖様は?」
「あ、でも・・そこのところは今回少し事情が違ってるんだけど・・・詳しいことは聖地でお話するわ。」
「聖地?」
「あ、そうね、えっとーー・・神の国?・・それとも精霊王の住んでいる国と言えば理解できるかしら?」
「あ、はい。でも、本当に私が?」
「そうよ。」

断ることはできない雰囲気だった。セクァヌは、迎えに来たと言うその精霊王(?)の使いのレイチェルという名の少女に半日だけまってもらうと、シャムフェスら主だった者たちに、ここを、この大陸を、この世界を、発つと告げ、そしてアレクシードの墓を訪れ、神の国でも頑張るからと告げる。

そして、その夜、スパルキアの民は見た。
夜空に輝く金色の光の輪の中、アレクシードの形見である成長した愛馬イタカに乗り、やさしく微笑む女神の御許へと、天かけ、登っていく銀の姫を。

 

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