★☆アドベンチャー狂詩曲★☆


  第十四話 [過去との遭遇 Part2(1)]  


 「で・・・結局オレたちはどうすべきなんだ?」
ミルも落ち着いた翌日、一行は宿の一室で今後の相談をしていた。
「カノン、魔王、倒しに行くの〜。ミルフィーと約束したのぉ〜。」
無邪気な笑顔で言ったカノンを、ミルは寂しそうな表情で見つめた。
「ね〜、ミルフィーはどこ行ったの?レイムは?」
「カノン・・・」
「カノンを置いてどこか行っちゃったの〜?」
「あのね、カノン。ミルフィーたちはね、大事な用事があってね・・・。」
どう説明したらいいのか、困りながら話したミルに、カノンはにっこりと笑う。
「ふ〜〜ん、それで先に行っちゃったの〜?」
「あ・・・そ、そうかもしれないわね。」
「せっかく、カノン、これ手に入れてきたのに。」
「え?」
にっこり笑って差し出したそれは、偽身分証明書、数枚。
「カノン・・・これ?」
「あのね、風さんに頼んで運んで来てもらったの〜。」
得意げに言うカノンに、どうやらあのごたごたの騒ぎの中、風の精霊に頼んでちゃっかりと入手したのだと、ミルたちは判断する。
全員忙しく(?)敵と戦っている最中だというのに、舞踏会の会場となっていた大広間で、カノンが一人テーブルに上って、上機嫌でご馳走を口にしていたのを全員思い出していた。
(するべき事はするのね・・・・)
カノンのそのちゃっかりさに唖然としていた。どうやら聞いていないように思われる会話もきちんと聞いているらしい。しかも、何処吹く風といった態度でいながら、その状況は把握している(していない点もあるが)。
「カノン・・・」
ミルの笑顔に、カノンは無邪気に微笑み返す。
「せっかくカノンが手に入れてくれたんだし・・・海を渡ろっか?」
「いいの?魔王、倒しに行くの?」
カノンには答えず、ミルはフィーら3人に視線を向ける。
「だめ・・・かな?・・・もう遠い過去の事だったとしても・・もし、残ってるのなら見てみたいんだ、その場所を。」
ミルの問いに、フィーはリーリアとターナーに無言で賛同を問う。
「いいわよ、私は。」
「オレも別にいいぜ。」
彼らが置かれた状況は全く変わっていなかった。この地で何をすべきなのか、それは全く分かっていない今、それが悪いとも良いとも判断出来ないことは確かだったが、それでも一応目標にはなる。漠然として旅をしているよりはいいような気がした。
「じゃー、そうしよう。」
「わ〜い♪」
フィーの答えに、飛び上がって喜んだカノンを、全員温かい目で見つめていた。


そして、その3日後、一行は無事大陸間大型帆船に乗り込むことができた。

−ザザ・・ン・・・・−
「ミルフィー・・・・」
穏やかな波、順調な航海。その甲板で、遠くに見える地平線にミルフィーを思い描いて一人佇むミルの姿があった。


そして、それから約1月後、またしてもミルフィーがレオンとレイミアスと相談していた時の地図と道筋を覚えていたカノンのお手柄で、彼らの旅は順調に進み(単に話の都合上?)、彼らは早くも魔王の居城だった場所へと来ていた。

「魔王・・いないの〜?もう、ミルフィーが倒しちゃったのぉ〜?」
「そ、そうみたいね、カノン。」
「ミルフィー、カノンたちを待っててくれなかったの〜?」
「仕方ないよ、ミルフィーにはね、大切な用事があったんだから。急いでたし・・だから・・・ミルフィーを怒らないであげてくれる?」
「ううん・・カノンがいけないの〜・・もっと早く来なかったから・・・・」
約束を破ったとしてもミルフィーは悪くない。悪いのは遅れた自分だと言うカノンの瞳から大粒な涙がこぼれ始める。
「カノン・・・誰も悪くないよ。だから、カノン・・・」
ミルはそっとカノンの涙を拭いて慰めていた。


魔王の居城だったそこは、絶海の孤島にあった。半分以上崩れ落ちていた洞窟の入口。彼らはそれ以上崩壊はないと判断すると、中へと足を踏み入れた。

−ピチョン・・ピチョン・・・−
洞窟に木霊する水滴の音。そして、彼らの足音。迷路のような洞窟内は意外にもさほど荒れてはいなかった。
が、やはりそこは戦場だったのだろうという痕跡は確かにあった。壁に散った血の痕、風化してしまった骨は、その身に受けたのだろう敵の武器を抱えたまま横たわっている。人間とも魔物とも区別できないくらい洞窟の一部と化してしまっている。

そして、その頂上は・・・・大きな空洞が青空を覗かせていた。

「つまり、ここが最終決戦の場?」
半壊したそこで、一行は周りを見渡しながら、それぞれの思いを胸に佇んでいた。

「あ!」
「どうしたの?」
急に気が付いたように走り始めたカノンを、ミルは慌てて追いかける。魔物はもういないが、内部は迷路のようになっている。一人で行けば迷ってしまう。
「まって、カノン!一人でいっちゃだめっ!」
「だって・・こっちからミルフィーの気配がするのぉ〜!」
「え?!ミ、ミルフィーの?」
こくん!と頷くカノンに、ミルは驚きながら、同じように驚いてカノンを見つめているフィー、リーリア、そしてターナーを見つめる。
カノンが嘘をついているとは思えなかった。4人は黙って頷くとカノンを先頭に急ぎ足で洞窟内の通路へと再び戻った。

「こっち!こっち!」
来た方向とはまるっきり違っていた。しかも、途中、天井が崩れ落ちているところもあり、小さなカノンならまだしも、他のメンバーは結構苦労してその道を進んで行った。
特にターナーは。
勢いよく駆けていくカノンを見失わないようにミルはしっかり彼の手を握って走り続けていた。そして、かなり下へ、そして、奥へと進んでいった彼らは、墓場のようなところへ出た。


「ま、まさか・・・・」
(ここにミルフィーの墓がある?もしかしてここで兄のミルフィーは死んで、妹と入れ替わった?)
呆然と立ちつくすミルだけでなく、カノン以外他のメンバーもその思いに支配され、しばらく呆然と立っていた。
が、カノンはそこで足を止めるわけではなかった。しばらくキョロキョロと周囲を見渡していたカノンは、はっとひらめく。
「風が繋がってるの〜。カノン、ミルフィーのところへ行くの〜。」
タタタッ!と墓場の奥へと走り始めたカノンを、ミルははっとして慌てて引き留める。
「ミルフィーのところって・・カノン?」
「風さんが教えてくれてるの〜。こっちから行けるのぉ〜。」
4人はどうやら自分たちが考えていたこととは違うようだと判断し、顔を見合わせるとカノンと共に奥へ進んだ。


「わ〜い♪風さんなのぉ〜。」
−ヒュ〜〜〜〜・・・・・−
奥のその一角では、風が渦を巻いていた。
「風さん、カノン、ミルフィーのところへ行きたいのぉ〜。」
−ビュオ〜〜〜!!−
「わっ!」
「きゃっ!」
「え?」
「おおっと・・・」
「きゃっほ〜〜〜♪」
ふっと一気に大きさを増したその渦巻きに飲まれ、彼らは逆巻くその強風で上へ上へと巻き上げられていった。
−ヒュ〜〜・・・−


**(2)へ**



♪Thank you so much!(^-^)♪

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