★☆アドベンチャー狂詩曲★☆


  第十三話 [炎の中の再会と別れ(2)]  


 「ミル・・・」
「ミルフィー!」
暗闇の中、ミルはミルフィーの姿を見つけ、駆け寄ろうとしてその1歩手前で立ち止まった。
「ミル。」
「ミルフィー、私・・・」
たとえ身体が妹のものであっても、時々入れ替わっても構わない。ミルフィーの傍にいたい。そう言おうとしていたミルが口を開く前、ミルフィーは黙るようにと人差し指を口に付けた。
「ミル・・・・今度会うときは、正真正銘の男として君の前に立つ。だから・・・それまで、その言葉はしまっておいてくれないか。・・・・いや、その時は、オレの方から言う。だから、それまで・・・。」
「ミルフィー・・・・」
ゆっくりと頭を振って頷いたミルに、ミルフィーはにっこりと微笑むとそっと彼女の額にキスをした。


「ミルフィー!」
「ミル?」
「え?・・・・」
がばっと起きあがったそこは、ベッドの上。宿の一室。闇の中へ消えていったミルフィーの代わりにミルの視野に入ったのは、フィーだった。
「フィ、フィー?」
「よかった、ミル、気が付いて。」
「え?私?・・・ミルフィーは?」
ミルの問いに、首を振ったフィーの表情は沈んでいた。
「他のみんなは?」
「リーリアたちなら全員いるよ。」
「じ、じゃー・・・・・・」
ミルはじっと屋敷での事を考えていた。
あの炎と爆発の中・・・・炎に巻き込まれながらも自分を風に乗せてくれたミルフィー。風に飛ばされる直前、ミルはミルフィーを振り向いていた。一瞬だけだったが、2つの影がミルフィーの横に駆け寄ってきていたような気がした。
「・・・大丈夫よ。」
「ミル?」
「きっとミルフィーはレオンやレイムと一緒に帰ったのよ。」
「・・・ミル。」
「そうよ・・・そうに決まってるわ・・・・ぜったい。」
屋敷内に3人がいたのは、フィーも姿を見かけて知っていた。
「ああそうだよ、きっと無事に帰ったんだよな。」
うつむいて自分に言い聞かすように繰り返すミルに、フィーは頷いていた。
「え?」
フィーの言葉に、顔をあげて彼を見たミルは、驚いて小さく声をあげた。それは、・・・ミルの心がそうみさせたのか、それとも夢の残像なのか・・・フィーの顔にミルフィーの顔が重なって見えていた。
『今度会うときは、正真正銘の男として君の前に立つ。』
ミルフィーの声が耳に響き、ミルの目に涙がにじみ出る。

「どうした?どこか痛むのか?」
フィーの声と共にミルフィーの顔はすうっと消える。フィーの中へ溶け込むように。
「・・・大丈夫。」
「そこに薬湯がおいてあるから、それを飲んでもう一眠りするといいよ。・・じゃ、オレ・・・」
気が付いたのにいつまでもいれば、そのうち出て行け、と言われるのが分かっていたフィーはミルに優しく微笑むと、部屋の外に出ていこうと席を立つ。
「・・・フィー・・・取ってくれない?」
「あ、ああ・・・。」
思っても見なかった事を言われた喜びと、引き留めているようなミルの視線に、フィーはゆっくりとベッドの傍に戻り、そっと薬湯をミルに渡す。
「ありがとう。」



 真っ赤な夕日が、壁側を向いて眠っているミルと、そのベッドの傍にじっと座り、やさしく彼女を見つめているフィーを暖かく包んでいた。



「ミル?」
それから2時間後、ミルは目を開ける。
「フィー・・・」
「大丈夫か?」
「うん・・・大丈夫。」
「そろそろ食事の時間なんだけど、起きられるようなら。」
「あ・・うん。」
ミルに手を添え、彼女が起きあがるのを介助していたフィーは、ほっとした安心感と、いつにもないそのしおらしさに、無意識にそっと唇を近づけていた。
「ミル・・・・」
「え?」
頭がぼ〜っとしていて、それを認識していなかったミルだったが、ふれあう直前、その事に気付く。
−バッチーーン!−
「痛っ!・・・」
顔を引くと共に、強烈なビンタがフィーの頬に飛んだ。
「出てけっ!この狼野郎っ!」
「あ・・ミル・・・オレ・・・」
そんなつもりじゃなかった、と言い訳しようとしたフィーに、ボスッ!と勢いよく枕を投げてミルは睨む。
「聞こえなかったのか?」
「ミル・・・」
ガシっとベッドの傍らに立てかけてあった剣を掴んで睨むミルに、フィーは仕方なく部屋の外へ出ていった。


「あ、あんなの・・・あんなのミルフィーであるもんか!・・・あんな奴。」
フィーに重なって見えたミルフィーの顔。もしかしたらフィーがミルフィーなのでは、と思ってしまった事を、ミルは後悔していた。
どちらかというとミルの方がその気になって(?)寄りかかっていたダンスの練習。それでも、それらしいことは何一つしなかったミルフィーと比べ、ミルは別人だと自分に言い聞かせる。
(急な別れだったから・・・・そうとは思いたくない私の心が見させたのよ・・そうに決まってる。)
ミルフィーの明るい笑い顔と夢の中で最後にしてくれた額へのキスを、ミルは切ない想いと共に思い出していた。
「だから・・・ぜったいに、違うっ!あんな奴であるはずはないっ!」
そう言い切ってから、ミルは沈む。
「・・・・死んでないわよね、ミルフィー・・無事に戻ったわよね?」
もしかしたら戻る時の爆発で、再び心が入れ替わったのかもしれない。・・・そして、本当のミルフィーの心は、それから、どうなったのか・・・・。
そんな考えが脳裏を横切り、ミルはぼんやりと窓から見える星を見つめていた。


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