★☆アドベンチャー狂詩曲★☆


  第四話 [時の悪戯・ミルフィー兄、再び?!]  


 「私、ついさっき思い出したんだけど・・・」
「何をだ?」
トムート村から帰り、ミルフィーとカルロスは自室でゆっくりしながら話し込んでいた。
「今まで思いださなかったのが不思議なくらいだわ。フィーとあなたってそっくりなのに。あなたに初めて出会ったとき思い出してもいいはずよね。」
「だから、何なんだ?」
ミルフィーは、不思議そうな顔をしているカルロスにふふっと軽く笑う。
「私ね、フィーに会ったことがあるの。ううん、フィーだけじゃなくってあのパーティー全員と。」
「パーティー全員?」
なんの事だ?とカルロスはミルフィーの言葉を待つ。
「まだあなたに会う前。」
「オレに会う前?」
「そう。ミルフィー兄だった時。今の銀龍の世界・・・サンタクロースの世界で。」
「サンタクロースの世界?」
「そうなの。でも・・・・」
くくくっっと我慢しきれないように笑い始めたミルフィーに、カルロスはどうしたのか、と見つめる。
「だって、面白くない?たぶん、フィーはもうすぐ会うのよ。」
「つまり・・・兄だった頃のお前と・・・・か?」
「そう。あのぶっきらぼうで、どこから見ても男にしかみえないミルフィーに。」
「・・・しかし、オレは・・」
「そうだったわね。あなたは、兄だった時も少女だと思ってたんでしたわね?女殺しの鋭い嗅覚も、心まで見抜けなかったってことかしら?」
「・・・・・・・」
くすくす笑っているミルフィーを、カルロスは苦い顔をして見つめる。
「私は・・・・フィーが向こうの世界から帰って来た時、顔を合わせるのが恥ずかしいくらいよ。」
「確かに口は悪かったからな。」
「態度もね。」
「まー、男だったんだから仕方ないだろうが・・・・そうは思わないフィーは・・・・。」
「でしょう?」
「今までが聖母のような母親だからな。」
「今日は鬼のような・・・かしら?」
「ははは、それはないだろうが・・・・だが、あの兄を見られては、母親の面子丸つぶれか?」
「かもしれないわ。」
「銀龍が今まで記憶を封じていたんだろうか?」
「さー?どうなのかしら?」
「しかし・・あれだな?」
「あれって?」
「やはり鋭い嗅覚がものをいったんだろ?」
「え?」
「結局は、お前という最高の女性だったんだからな。」
「自分の女房におべっか使っても何もでないわよ。」
「出ないのか?」
「何を出せっていうの?」
「う〜〜ん・・・・」
「何、真剣に考えてるのよ、カルロス?」
くすくすと笑いながらミルフィーはもう一つ思い出したことを続けた。
「そう言えばリーリアが旅立つ前にね。」
「リーリアが旅立つ前に?」
「少し聞き難そうだったけど、目を輝かせて私に聞いたの。もう興味津々っていうのがまるみえよ。」
「何をだ?」
ミルフィーは吹き出しそうなのを堪え、カルロスを少し上目遣いで見る。
「何なんだ?」
「私が王女様だったのかって。」
「は?」
「どうやらあの村で昔の情報を手に入れた、というより、最初の頃、そのせいでフィーにいろいろあったみたいなのよ。あなたにそっくりなのも災難だったわね。」
「おい・・そ、それって・・・も、もしかして?」
よからぬ事に思い当たり、焦るカルロスに、ミルフィーはリーリアから聞いた話をした。
「それから、リーリアったら私になんて聞いたと思う?」
「さ、さあ?」
「『腕利きの女殺しに略奪された時って・・・どんな気分だったの?』ですって。」
「う、腕利きの女殺しに略奪か・・・・」
「本当に、あの子には私の方が負けそうよ。」
「それはつまり・・・当然フィーもそう思ってる・・・ことになるよな?」
「らしいわね。」
「で、聞かれて、訂正してくれたんだろうな?」
「あら、だってあなたが腕利きの女殺しだったって言うのは事実でしょ?」
「お、おい・・・・」
「でも、もう一つは訂正しておいてわよ。」
「どう訂正したんだ?」
気になったカルロスは心配そうな表情でミルフィーに聞く。
「『モテモテの女殺しをあなたのお母さんの背に乗って奪い取ったのは、私なのよ。』って。」
「・・・・そ、それは確かにそうだが・・・・リーリアの言ってる時とは時が違うんじゃないのか?」
「いいじゃないの。その方がドラマチックで。」
「ド、ドラマチックっていう問題か?」
「でも、信用してないみたいだったけど。」
「ほらみろ。・・・ちょっと待て・・・ということは、結局オレが悪者と思われたままか?」
「そうね・・・・言い訳すればするほどダメみたいね。」
は〜っとカルロスは、大きくため息をついていた。
「でも、フィアには黙っててくれるそうよ。」
「・・・・・・・・・・」
ミルフィーよりもオレの方がよほどフィーに顔を合わせにくいじゃないか、とカルロスは大きくため息をついていた。



そして、その頃、フィーは、仲間と共に初めての土地を歩いていた。

とは言っても、来る早々事件が起きるわけでも、世界の内情が分かるわけでもない。守護騎士の認定(?)は受けたといっても、銀龍から連絡があるわけでもなかった。通常している探索となんら変わりない。ただ、そこが塔内部ではないということだけ。


「どうした?ホームシックか?」
「ば、バカ言え!何でオレがそんな・・・・」
町への道しるべを見つけ、そこへと向かう途中、日が傾いてきたことからそこでの野宿を決め、山道から少しは行ったところで夕食を取った後、一人ぼんやりと大木に持たれていたフィーに、ターナーが声をかけた。
「だよな?まだあれから3日しか経ってないんだしな。」
「1週間経とうが1年経とうが、そんなものになりはしないよ!」
「そっか?」
「当たり前だろ?ただ・・」
「ただ?」
ターナーの問いに答えず、フィーは遠くを見つめていた。

「お袋さんとの力の差か?」
ターナーに指摘され、フィーはぎくっとして彼を見る。
「あれだけの差を見せつけられれば無理ないが・・・土台、違うのさ。」
「違う?」
「そうだ。彼女は・・・剣聖の生まれ変わりなのかもしれん。」
「剣聖の・・・・」
「まっ!そう気にするな。あんな人間滅多にいるものじゃない。・・・そうだな、たまたまあんたの母親だったってことさ。」
ぽん!とフィーの肩を叩いてターナーはそこを立ち去っていった。
「・・・たまたま・・・か。」
ミルフィーから受け取った神龍の剣の柄はフィーの手のひらにすうっと溶け込むように入っていった。その右手をぐっと握り、剣をイメージしてみるのだが、変化は全くない。第一段階として、手の甲に神剣の形が浮かんでくるのだ、とミルフィーから聞いていた。が、何度意識を集中しても変化はない。急ぐ必要はない、とミルやリーリア、そしてターナーからも言われてはいるが、フィーにはどうしても気になっていた。

−ドシュッ!・・ドドーーーン!−
「な、なんだ?」
ぼんやりと自分の手を翳してみていたフィーも、そして他のメンバーも、その大きな爆発音と地響きに起きあがる。
「な、なんだ、何があったんだ?」
「山でも崩れたのか?」
季節は新緑の季節。間違っても雪崩などではない。が、確かに山が崩れ落ちるような感じも受けた。

急いで音のした方向へ走ってみると、道は途中で寸断され、土埃が辺り一帯を覆っていた。
「やはり何かが爆発したのか?・・・何が?」
そう思って土埃を睨んでいると、その中に人影が映った。
「む・・・・」
警戒するフィーらの前に、せき込みながら少し収まりつつある土埃の中から出てきた人物が3人。
「ごほっごほっ・・・だから炎はちょっと待てって言っただろ?」
「聞こえてないって、んなこと!げほっ・・・」
「今更言ってもしょうがないでしょう。なっちゃったものはなっちゃったんですから。」
「ん?」
「ん?・・・ああ、悪ぃ・・・近くに人がいたのか?悪かったなおどかしてしまって。・・・って・・・フィア?」
「え?」
土埃から出てきた剣士らしい一人の男が、先頭に立っていたフィーを無視し、そのすぐ後ろにいたミルを見て、声をあげる。
「フィ・・・」
すっと近づこうとしたその戦士を、後ろにいた背の高い男が止める。
「ちょっと待てよ。そんなわけないだろ?・・あるとしたら魔物か何かが化けてるとかくらいしか・・・?」
「誰が魔物だってんだ?」
小声で言ったその男の言葉に敏感に反応してミルが叫ぶ。
「オレのどこ見て魔物だってんだよ?え?」
「でなけりゃ、見たら死ぬって言われるドッペル・・・」
「黙って聞いていれば、何なんださっきから!ミルが何だってんだ?」
ぐいっとその剣士に近づき、フィーは怒鳴る。
「ミル?」
「ああ、そうだ。」
「・・・ミルって・・・・どうなってんだ、これ?・・なー、レオン、夢でも見てるのかな、オレ?」
「さあ?」
その戦士はくるっと向きを変えて、魔導師らしい男に聞く。
「いっ!・・・・・そんなに思いっきりやらなくてもいいだろ?」
「はははっ、こんな時しか痛い思いさせられないからな。」
「おい、レオン・・・お前なー!」
「レオン・・・・って、・・・え?」
頬を思いっきりつねられ、魔導師の男に怒鳴っている剣士と、その魔導師と、そして、今一人、少年僧のような3人を、フィーらは驚きの目で見つめていた。
土埃も収まり、はっきり見えてきたその人物に、フィーたち5人は、その3人とも見覚えがあった。
そして、お互いに呼び合ってる名前で、それは確証された。
「そんなこと言い合ってる場合じゃないでしょう?ミルフィー?」
「なんだよ、たいたいレイムが・・・・」
但し5人が知っている該当人物より、かなり若い、というか、フィーたちと同じ年くらいに思えた。
「あ、ああ・・・まず、間違いない。」
フィーとミル、そして、リーリアに無言でその確証性を問われたターナーは、驚きながらもうなずく。それは紛れもなく彼が知っている昔の3人だった。
「つまり・・・さっきの爆発で時空が捻れて繋がってしまった?」
「かもしれん。」
ターナーは、フィーに大きく頷く。
そして、5人は、まだあーだこーだと言い合ってる3人を、驚きと、そして呆れもまざった表情で見つめていた。





♪Thank you so much!(^-^)♪

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