★☆アドベンチャー狂詩曲★☆


  第三話 [スーパーヒロイン?(2)]  


 「な、なんだ、ここは?」
「ど、どうなったの?」
「どうしたんだ?」
眩い光が消えた、その時、酒場にいた全員は全く違った空間にいた。
そこは、どこまでも続く荒野。遠くに山々が見えるが、それ以外多少の起伏はあるものの、何もない広い平地だった。
その景色にも驚いたが、今一つ驚いた光景があった。
それは、つい先ほどまで巫女装束だったミルフィーが、銀色に輝く鎧に身を固めて立っていたこと。そして、大きさこそ異なるが、彼女が手にしている剣の柄は・・・光玉の中に浮いていたものだとフィーは判断していた。


−ザン!−
「えっ?!」
そして、不意にその剣を自分に向かって振り下ろしてきたミルフィーに驚きながらも、フィーは、上手くそれを避ける。
「か・・・?」
母さん?といいかけたフィーは、そこにいるミルフィーがそうではないことを咄嗟に感じ、瞬間的に剣を抜くとそこに身構える。
−ザッ−
その場に居合わせた男たちは、そのただならぬ雰囲気に慌てて場を空ける。

−キン!ガキン!−
「くっ・・・・・・」
避けることも中断させることもできなかった。フィーは、ただ、必死になってミルフィーのえぐるような鋭い剣を受け止めていた。
銀色の筋を創ってミルフィーの剣が空を裂き、鋭い風圧とともにフィーに襲いかかっていく。
−ガチッ!−
「う・・・・・・」
その重圧感、威圧感は、それまでカルロスから受けていたものと異なるものがった。まるで人間のものではない威圧感。絶対なる者の放つ征圧感があった。
(か、母さんじゃない・・・ど、どうしたんだ?)
数年前魔龍との戦いの時に見た剣士としての母、ミルフィーの姿。その時もその剣士ぶりには驚いたが、今はその時と全く比較にならない激しさがあった。

「なっ?!」
全力でミルフィーの剣を受け止めていたフィーは、自分の剣に驚き目を見張った。
彼の手にしていた剣は、刃先まで常に手入れをし、刃こぼれ一つしていなかったはずである。それが、ミルフィーの剣と交えていたところから亀裂が入り始めていた。
−ピシピシピシ!−
そして、それはフィーが見ている間に、刀身全体へ広がっていく。
−ズザッ!−
剣がその姿を無くしてしまうその直前、フィーはなんとか止めていたそれがなくなっても安全な位置へと、自分の身を移動させる。
−ザッ・・・ザクッ!−
が、その直後に新たなるミルフィーの攻撃が入り、フィーは転がるようにそれを避ける。
−シュン!・・・ガキン!−
避ける余裕はない、とフィーが覚悟したその時、彼の目の前に飛び出してきた影が、ミルフィーの剣を止めた。
「と、父さん・・・」
この空間へ転移したと同時に、ミリアはカルロスの元へ転移していた。彼女の第六感が危機を知らせていた為である。
「大丈夫か?」
「あ、は、はい。でも・・・」
「オレなら大丈夫だ。」
背後のフィーを心配しつつ、カルロスは剣に力を込める。
−グギギギギ・・・・・−
「ふん!」
−ザッ!−
渾身の力を込め、カルロスはミルフィーの剣を跳ねのける。
「ミルフィー!」
そして、剣を掲げ、数歩前に仁王立ちしているミルフィーに声をかける。
が、そのミルフィーの口から出た声色と、口調は彼女のものではなかった。
「退け、カルロス!」
「な?」
驚きの眼差しで、そこにいた全員が見守る中、ミルフィーの背後にゆっくりと龍の姿が立ち上がる。それは、かの地の神龍。創世の銀龍の姿。
「銀龍?・・・なぜ?」
ミルフィーの背後の小山のような巨大な姿を見つめ、カルロスは問う。
「そのものは試されねばならぬ。」
地を響かせ、空気を振動させ、銀龍の声は響く。
「試されねば?」
「そうだ。その者は我が光玉に触れた。そして光玉は判断した。我が騎士となりうる才を持っておると。」
ぎょっとして自分を振り返ったカルロスに、フィーは、そうだとは知らずに手をのばしたのだと、目で答える。
「待ってくれ、銀龍・・」
順を追っての説明が欲しかった。ミルフィーの意思ではないと分かってはいるが、今にも攻撃をしかけようとしている彼女を止めようと、フィーをかばうようにカルロスは2人の間に立ちはだった。
「なぜフィーなんだ?それに、ミルフィーはどうしたんだ?」
絶対なまでの威圧感を堪え、カルロスは銀龍を睨む。
「我が守護騎士になりうるかどうか試さねばならぬ。」
「なりうるかどうか?」
「そうだ。」
ミルフィーの身体を借り、銀龍はフィーを剣で指し示す。
「案ずるには及ばぬ。我が守護騎士は、創世の龍騎士。だが、最初からそのような力を持つ者は滅多におらぬ。これまでがそうであったように、その才を秘めているかどうか、それを確認できればよい。その後成長していけばよいのだ。」
「しかし、ミルフィーは?」
「この者か。この者は・・・・間違うことなき我が騎士。今まで我が騎士の名を与えた者は数十代に及んだが・・・・真実、我が騎士としてその力を開花させたのは、この者と、そして、やはり異世界から呼び寄せた創世の時の騎士、この二人のみ。」
「二人のみ?」
「そうだ。後は・・・その才は秘めておれど、いずれも、開花することなく、名のみの騎士として生涯を閉じておる。もっとも・・それであっても普通の人間の適う腕ではないということは確かだが。」
「それとこの事と・・・フィーを試すことと、どう関連があるというのだ?」
「我が守護せし世界は、今窮地に陥っておる。そして、我が裁決を望んでおるが、我が身はすでにない。故に、我が騎士に命ずることとなるのだが・・・この者は、それを躊躇した。」
「躊躇?」
「この者は・・・我が命より、お主を選んだ・・と言えるのやもしれぬ。」
「は?」
「故に、新たなる騎士が必要となる。そして、喜ばしいことに早くもそれになりうる人物が見つかったのだ。」
「たとえそうだとしても、ものには順序というものがあるはずだ。いきなり攻撃はないだろう?まず、本人の意思を聞いてからというものじゃないのか?」
「創世の神龍の騎士になるのだぞ?」
「それはそっちの勝手の言い分だ。それに、なれるかどうか保証はないのだろう?」
「お主も剣士である前に父親か。剣士なら分かると思ったが。」
「世界は違うがオレも聞いているし、知ってもいる。神龍の剣士は確かに憧れだが・・・少し待たないか?」
「我に待てというのか?神龍に?」
「そうだ!」
事実、明らかに格が違うとカルロスは感じていた。神龍と人間。その差はあまりにも大きい。が、それでもカルロスはその威圧感に耐え、そこに踏みとどまって、ぐっと銀龍を睨む。

「そうよ!待ちなさい、銀龍!」
「は?!」
「何?!」
二人の横からミルフィーの声が聞こえ、そこにいた全員の視線はその方向へ飛ぶ。そこには、確かにミルフィーがいた。
「ミルフィー?」
「か、母さんが・・・二人?」

それは確かに銀色の剣士姿のミルフィー。二人ともまるっきり同じ格好をしていた。
カルロスにはそれが霊体のミルフィーが実体化した姿なのだとすぐ分かった。
「銀龍・・・覚悟はしてるんでしょうね?」
「な、何をというのだ?」
その口調には、つい今し方の威厳のあったものに、少し焦ったような響きが混ざっていた。
「とぼけないでね。勝手に私の身体に入って、しかも、勝手に息子を試すなんて・・・そんなことを許す母親がこの世にいると思うの?私を息子殺しにするつもり?」
「いや、試すのであって、決して・・・・」
−ズン!・・・・ゴゴゴゴゴォ〜〜−
神龍の言葉を最後まで聞かず、ミルフィーは手にしていた銀色に光る剣を地に突き刺す。と、大地に地響きが走った。
「お、おい・・・・何をしてる?」
「何をしてるって?」
「分かっておるのか?我が守護騎士の一撃は・・・地を、世界を破壊することも・・・」
「銀龍こそ、分かってるんでしょうね?」
再び銀龍の言葉を遮ってミルフィーはきつい口調を放つ。
「な、何だというのだ?」
「守護騎士の一撃は、神龍をも殺す。」
「ミ、ミルフィー・・・・お、お主・・・自分の主人(あるじ)に・・創世龍であるわしに向かって何ということを言うのだ?」
「煩いわね。」
「う、煩い?」
「いいから私の身体を返しなさい。主人だからって勝手に使っていいっていう法はないはずよ?試すというのなら順序を踏んでから、守護騎士である私が試すわ。」
「・・・・・・・・・」
「霊体と思ってバカにしないことね。こっちの方が痛みを感じなくてちょうどいいのよ?」
−ヴン!−
ミルフィーが手にしていた剣を肩に乗せる。そして、瞬間的に精神を集中すると、銀色の細い長剣だったそれは、幅広の剣に変化した。
「やる?やらない?どっち?」
ミルフィーの目は完全に据わっていた。
「お、お主は・・まったく・・・剣を持つとなぜそのように攻撃的になるのだ?」
「理由があるからよ。いつもじゃないわ。」
「ま、待て・・・カルロスの前だぞ?」
「今は母親200%よっ!」
ミルフィーのたった一つの弱点といえば、弱点、カルロスの前であるということを言ってみた銀龍の望みは見事に粉砕され、ミルフィーは構わず大きくジャンプした。
−ガキッ!−
ミルフィーとミルフィーが対峙していた。
「それに私は身体を乗っ取られるのはこりごりなのよ!」
過去、ミルフィーに何があったか、そして、そこからくるその言葉がどれほどの思いなのか銀龍は思い出し、・・・・瞬時に彼女の本体から離れた。
もう1秒でも長くいると、彼女は完全にぶち切れる・・・ミルフィーのきつい視線を見た銀龍は瞬時にしてそう判断すると、迷うことなく離脱したのである。


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