★☆アドベンチャー狂詩曲★☆


  第二話 [驚愕の事実?それは小説より・・・]  


 「お、王女様?」
「ああ・・・・そうだぜ?・・・・・なんだ知らなかったのか?」
ミルフィーが王女だったことを全く知らなかったフィーは驚いてターナーに聞き返す。
リーリアやカノンとも視線を合わせて聞いてみるが、2人も初耳だった。
「しかしなんだな・・・戻ってきてまた行くなんざ・・・一度は王命とかで、どこかの王族か貴族へ嫁いだのかな?・・・・それを気を取り直したお前のおやじが奪いにいった・・・とかなんだろうか?」
「まだ嫁いでなかったんじゃないのか?」
「いや、そうじゃないだろう。嫁いでないのなら、奴が・・・お前のおやじが一人ここへ戻ってくることはないはずだ。それもあの沈みようは普通じゃなかったからな。」
フィーの疑問に、ターナーはその時の様子を思い出しながら答えた。
「素敵!」
「は?」
うっとりしたように小声で呟いたリーリアにフィーらの視線が集中する。
「だって、素敵よ〜〜。王命でいやいや嫁いだその嫁ぎ先からさらってくれるなんて・・・・。やっぱりおじさまっていいわ〜〜。う〜〜ん、ロマンチックぅ〜〜。」
「ロマンチックって・・・・・」
「ねー、フィー・・もしも・・もしもよ?・・私がそうなったら、フィーもそうしてくれる?」
「な、なんでオレがそんなことしなきゃならないんだよ?」
目を輝かせつつ、夢みるように言ったリーリアの言葉に、フィーは焦りながらちらっとミルを見る。
「そりゃいいや。もしもの時は白馬の王子様登場ってな。」
ミルはからかうような笑みをフィー送った。
「いや、でもやっぱりその前にはっきりさせておくべきだろ?本気なら。」
「ミルっ!」
「そりゃそうだ。それに奴ならそうしたはずだ。だから・・あれだろ?」
「あれ?」
面白そうに言ったミルの言葉に思わず怒鳴ったフィーも、そしてミル、リーリアも、何を言いたいんだろう、とターナーを見る。
「彼女は奴の事なんざこれっぽっちも思っていなかったってことだ。」
そうだろ?と目で付け加えるターナーに、そう言うことか?と3人は目を見合わせる。
「ひょっとしたら、嫁ぎ先だって彼女が気に入らなかったわけじゃないかもしれん。」
「というと?」
「つまりあれだ・・・嫁ぎ先で静かに暮らしていた彼女をだな・・・・」
(無理矢理・・・つまり・・略奪?)
その先は言わなかったが、ターナーのにまりとした表情に、その事に気づいた3人は自分のことでもないのに、焦りを覚えていた。
「やるじゃない。・・・いかにも温厚そうな紳士だと思ったけどな。それは欲しかった人を手に入れ、歳を重ねたからというわけ・・なのかな?」
ちらっとフィーを見てからミルは呟く。
「『欲しかった』って・・・・そ、それに・・・父さんと母さんは・・・・」
幼い頃から見慣れたアツアツさ。愛し合っていることは絶対確実だ、無理矢理などでは・・・とフィーは続けたかったが・・・無意識にその言葉を飲み込んでいた。
「略奪愛かー・・・・それもよさそう。本当に愛してくれてるって感じしない?」
「リーリアっ!」
そんなバカなことは何かの間違いだ!とフィーは思わずリーリアを睨む。
「あらー、それから愛が芽生えたのかもしれないわよ?」
「リーリアっ!」
フィーの顔は赤くなっていた。
「あんた・・・顔は父親似でも、そういうとこは、母親似なんだな。」
「ミル・・・」
リーリアからミルに視線を移したフィーは、一層赤くなっていた。が、落ちつくように、と言い聞かせてからフィーは彼女を見つめなおす。
「オレは・・そんなことはないと思ってる。だけど、もしそうだったとしても、親父の気持ちも分かる気がする。」
「そうなのか?」
「・・・オレは君が好きだ。女の子を好きになったのは君が初めてだし、これから先もオレが好きなのは君だけだ。・・・オレには君しかいない。だから、もしも君がそうなったら、オレでもそうしてしまうかもしれない。・・・・いや、オレならその前にはっきりさせる。必ずオレに振り向かせてみせる。他の男になど君を渡さない。他の男など見つめさせない。」
「ち、ちょっと・・・・・」
急に真剣な表情ですぐ目の前に迫るフィーに、ミルは焦りを覚える。
「リーリアだって冗談で言ってるだけなんだ。オレの気持ちは知ってるはずだ。」
「えへへ・・ごめん・・・」
ぺろっと舌をだしてリーリアはミルに苦笑いする。
「べ、別にオレに謝らなくっても・・オ、オレはなんとも思ってないんだからな・・・」
いかにもオレが気にしてるみたいだろ?とミルは焦ってリーリアを見た。

「へ?・・・・ということは・・・ひょっとすると、お前も彼女の時のように女の子・・だったのか?」
「あ・・・・・・」
ターマンの言葉に、ミルはぎくっとする。
「バ、バカッ!言わなきゃばれなかったのに!」
「ご、ごめん・・・・」
ミルに小声だがきつく言われ、それまでの勢いもどこへやら、フィーはしゅんとして謝る。
「はっはっはっはっ!・・・もしかしたら、とは思っていたが・・・・こりゃいいや・・・歴史は繰り返される・・か?」
2人のその様子を見て、いかにも面白そうに笑ったターナーを、ミルはうらめしげに見上げる。
「な、なにが面白いんだよ?」
「いや・・・まー、いいさ、ミル。どっちにしろ、今ばれなくてもこいつがお前にほの字なら、ばれるのも時間の問題だったんだろ?」
「う・・・・やっぱ疫病神だよな〜〜・・・」
「それはないだろ、ミル?オレは本気で・・」
「うるさいっ!こんなとこで、それ以上言って見ろ!その喉元かき切って二度とそんなセリフが言えないようにしてやるぞ?」
ガタン!と勢い良く立ち上がって怒鳴ったミルに、フィーは温かく微笑む。
「じゃー、ここでなけりゃいいのか?」
その笑みの中の真剣な瞳に、ミルは言葉を失って口ごもる。
「う・・・・・・・」
「ばーーーはっはっはっはっ!」
そんな2人のやりとりを見ていたターナーはいきなり大声で笑い始めた。
「はっはっは・・・からかうのは彼女の方が数段上手だったな。それくらいじゃびくともしなかったぞ?」
「タ、ターナー・・・」
「いや、その彼女と奴の息子だから、そこのところは両方とも十分踏まえて事を運んでるわけか?」
「事を運んでるって・・・・・」
焦った表情で自分を見ているミルの肩をぽん!と軽く叩くと、ターナーは言った。
「後も先もお前一筋か・・・その点奴より許せるかな?」
「ターナー!」
ますます焦りを覚えて、思わずミルはターナーを睨む。
「ははは・・そうだな・・・・・決めるのはお前だよな?」
「あ、当たり前だろ?」

しばらくミルを見つめながら顎に手をあてて考えていたターナーは、決心したように言った。
「そうだよな・・・・・よし。」
「なんだよ?」
「オレも仲間にいれてくれ。ちょうど今フリーだしな。」
「タ、ターナーが?」
「なんだ、オレじゃ不服か?」
「い、いや・・・そんなことはないけど・・・。」
ミルはちらっとフィーとリーリアに視線を流す。
「だけど、急になんでだよ?」
「なんでって・・・そりゃー、お前・・・」
不思議そうに聞くフィーに、ターナーはにやっと笑って答える。
「今度こそお姫様を誰かの毒牙から守るために決まってるだろ?」
「ターナー!」
ミルは真っ赤になって思わず大声をだし、フィーもまた、その言葉に声を粗げた。
「毒牙ってどういうことだよ?それに、ミルを守るのはオレに決まってるんだ!」
真剣な表情で睨むフィーに、ずっと年上のターナーは余裕を持って一応それなりの真剣さで対抗した。

「・・・オレの事はオレが守る!誰の世話にもならん!」
にらみ合っている二人に、バン!とテーブルを両手で叩くと、ミルはすたすたと店から出ていこうとする。
「あ!ミル、待ってくれ!」
「そうだ、ミル。ここの勘定があるぞ?」
「は?」
フィーの言葉には待つつもりはなかったが、ターナーのその言葉に、ミルは振り返る。
「それはあんたが勝手に・・」
「どっちだろうと、もうその気だしな。」
ぐるっと見渡し、上機嫌で酒を呑んでいる冒険者たちをターナーは顎で示す。
「さしあたってここの勘定を払うため、オレの顔があった方が仕事が入る。ここの主人もオレの顔なら払いを待ってくれるだろうしな。」
「あんたが勝手に言ったんだから、あんたが払えばいいだろ?」
ぐいっとミルはターナーを睨んで言う。
「いや・・これは、お前たちのおごりでなくちゃ場が収まらん。」
「収まらんって?」
「村の酒場は、自然とそれぞれ層が決まっていてな。塔に近い方は、新参者や若者が多い。その反対に村の奥にあるここは、ほとんどが昔っからいる奴らばかりだ。」
「ということは・・・・」
はっとしたような顔で呟いたフィーに、ターナーはにやっと笑う。
「そうだ、いわばお前のお袋さんに憧れた奴が多い・・・というより、ほとんどと言っていいかもしれん。お互い口には出さなくてもな。・・で・・・ザドガが話していないわけはないだろう。一人にでも話せば、もう話は行き渡ってるとみていいだろうしな?勿論、オレ達の話も筒抜けだろうし。」
「う・・・・」
思わずフィーは、周りを見回す。今にも因縁つけられはしないかと。
「さてと・・そんなわけで、オレたちも改めて呑もうじゃないか?パーティー結成のな?」
(オ、オレの責任じゃないだろ?)
フィーの視線からそれを読みとるとターナーは、にやっと笑って、座れと目で合図する。


(・・・・父さん・・まさか・・・父さんが有名な女たらしで、それで、みんなのあこがれだった母さんを、しかもどこかの国の王女だった母さんを・・・略奪したなんて・・・・・?)
聞いてはならなかったことを聞いてしまったと、フィーは目眩を覚えていた。
(父さんは、まさかみんなに恨まれてるなんて思ってもいないんだよな?)

酒場の中、周りのにぎやかさなど耳に入らないほど動揺しながら、ターナーにすすめられるまま、フィーはビールを口に運んでいた。いかにも不機嫌そうに呑んでいるミルを時折横目でちらっと見ながら。




♪Thank you so much!(^-^)♪

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