その1−2?番外編・龍騎士様がやってきた!

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yhajiさんが作って下さった曲です。
ありがとうございました。
 

 「わ〜〜〜い!龍騎士様だ〜!龍騎士様だよーーーー!」
小さなその村は今や村の隅々まで活気づいていた。
それというのも、神龍の守護騎士、通称、龍騎士と呼ばれる剣士が村へ立ち寄ったからである。
創世の昔から語り継がれている神龍の守護騎士。世界を守護する神龍に直接仕えることから龍騎士とも呼ばれ、その剣の腕は計り知れない。それは、夢みる子供達のそして、剣士を志す男達の(稀に女も?)憧れだった。
実際にはその存在すら不確かではあったが、それでも人々は信じていた。
身分を隠し、世界の平和を守るため、あちこち旅をしていると。
運良くば、出会えることもあるかもしれない。そう思い、諸国を旅する剣士も大勢いた。その誰もが憧れる守護騎士、その守護騎士が村にやってきたのである。
それは、この上なく光栄であり、そして、恐れを感じながらも、最上の喜びでも、そして、村の誇りとも成り得るのである。


「見えないよ〜〜?ねえー、龍騎士様どこにいるのぉ?」
「周りを村の長老たちが囲んじゃってて、見えないよーー。」
広場の中央に儲けられた舞台の上に楽師4人があがっている。彼らはちょうどタイミング良く興行のため村へ立ち寄っていた旅芸人である。
そして、広場の奥の方には、にわか造りで建てた屋根と床だけの家屋があった。その一段上の上座に置かれたイスに龍騎士が座り、その周囲を村も主だった長老たちが囲んでいた。
一般の村人はその家屋を囲むようにして中央にいる楽師たちの演奏を楽しむのだが、その実、村人達の視線は龍騎士に注がれていた。そして、そんなに広くないその広場には、こんなに住人がいたのかと思われるような人だかりができ、背の低い子供には到底その間から龍騎士の姿が見えるようなことはなかった。
「そ、そうだっ!肩車するってのどうだ?3人でさ?」
「そ、そんなの一番上の奴が見れるだけじゃないか?」
「だから、順番に交代するんだよー!」
「そ、そうかっ!」
リロとトルとカイは仲良し3人組。他の子供達と同じように龍騎士を見にやってきたのだが、到底見えそうもない。
父親に肩車してもらって上機嫌で見ている子供に気づいて、リロが思いついた方法を実行することにした。そう、3人の父親は国都へ出稼ぎに行っていた。
父親が帰ってきたとき、このことを話そうと、どうしても龍騎士を一目見たい3人だった。
が・・
「おい、見えたか?」
「う、ううん・・・ま、まだ・・・・・・・・」
「わっわわっ・・・わわわわわっ・・・・・・」
押すな押すなの人だかり。なんとか肩車しようとしたが、バランスを崩してしまってできそうもない。
「そうだっ!竹馬なんてどうだろ?」
「いいかもなっ!」
3人はそのアイデアに閃くと、家へと竹馬を取りに走った。


−ヒュ〜〜・・・・−
が、いつの間にか風が強くなってきていた。
まだ子供で身軽な彼ら、その上、細い竹馬になど乗ったら倒されてしまうほどの風でもあった。
しかも子供用にしては高いものでもあった。それに乗ると1m近く彼らは高くなる。
「だ、大丈夫さ!このくらいの風!」
リーダー格のカイが叫ぶ。
「父ちゃんが帰ってきたとき、オレ、龍騎士様のことを話すんだ!」
「う、うん・・・・」
3人はお互いの決心を確かめ合うと、人垣の少し後ろで竹馬に乗った。

「ま、真ん中のが龍騎士様だろ?」
「う、うん、そうだよね?・・・でも・・はっきり見えないよ?・・・龍騎士様、本当にあそこにいるのかな〜?長老達の顔ばっかで・・・もう少し近づかなきゃ・・・・」
−ビュオッ!−
「わっ・・・わわわっ・・・・・」
不意に吹いた突風が、彼らを襲った。


「ん?」
「大丈夫?」
「あ、うん・・・。ここは?」
「さっきいた広場の近くよ。」
「そ、そっか・・・ぼくたち・・・・」
小さな空き地になっちるそこの大木の下に3人は横になっていた。
竹馬から落ちたはずなのに、不思議とどこにも怪我はない。
「お姉ちゃんが助けてくれたの?」
「そうよ。」
残念ながら、村の大人達は、それぞれが龍騎士を見ようと必至になっていたため、後ろの方で彼らが倒れたことは気づく者はいなかった。
「お姉ちゃん、旅人さん?」
「そう。」
「あっ!龍騎士様見に行かないと!」
がばっと起きあがり、すぐにでも走り出そうとしたカイ。そして、彼に続いて立ち上がったリロとトルをその旅人は止めた。
「けが人が出てもいけないってことで、奥へ入ったわよ。」
「え?・・・じゃ、見れないの?」
「そうね・・・・でも、演奏は続いてるわよ。」
「演奏が?」
それまで気づかなかったが、確かにその空き地まで演奏は聞こえていた。
「でも・・龍騎士様の為の演奏なのに・・。」
「大丈夫。演奏は見るものじゃないでしょ?」
「あ・・・・そ、そっか。」
「飲み物持ってきたの。何か飲む?」
「あ、うん。・・ありがとう。」
「ありがとう。」
「ありがと、お姉ちゃん。」
やさしい微笑みのその旅人へそれぞれ礼を言いながら3人は飲み物とお菓子を食べ始めていた。

「ね、ぼくたち、ここから一番近い村へ行くにはどっちにいったらいいの?」
「一番近いというと・・・東のランダート村かな?」
「うん、そうだよな。」
「どのくらいで着くの?」
「うーんと、大人で4、5時間くらいらしいよ。行商のおばさんたちが朝早く出かけて、夜帰って来るから。」
「そう。・・・4,5時間ね?」
「森を抜ければもっと早いんだけど、獣やモンスターがいるから。」
「ふ〜〜ん。そうなんだ。」
「うん。」


「龍騎士さま〜〜・・・・龍騎士様〜〜〜!!」
「いけない、もうばれちゃったかな?」
「え?」
「あ、ううん・・なんでも・・・。」
広場の方向から数人の村人の声が聞こえてきた。
演奏はまだ続いている。
「どうしたんだろ?龍騎士様に何かあったのかな?」
立ち上がった3人は、声のした方向を見ていた。
「じゃね、ぼくたち。あんまり危ないことしちゃだめよ?」
「あ、お姉ちゃん、行っちゃうの?」
「うん。」
ガチャガチャとコップやジュースのボトル、お菓子の入った器を旅人は手早く片づけていた。
「でも・・・これ返さないといけないわよね?」
「お姉ちゃんのじゃないの?」
「あ、うん、そうなのよ。ちょっと傍にあったのをもらってきちゃったから。」
「お姉ちゃん・・・まさか泥棒?」
泥棒には見えないが、思わずそんな言葉がカイの口から出ていた。
「あ・・・ち、違うわよ。・・・でも、そうね〜・・・・今消えるわけにはいかないわよね、やっぱり?」
3人がお菓子と飲み物を失敬したと誤解されてもいけない、と旅人は思った。
「消えるって?」
不思議そうに3人は旅人を見上げていた。

「龍騎士様っ!」
「こちらでしたか、龍騎士様っ?!」
「え?」
3人はその声に驚いて、息を切らしながら駆け寄ってきた村人を見、そして、その男の視線を辿って、その先に立っている旅人を見る。彼らを助けてくれた旅人、まだ若い女性剣士を。
「あ、ああ・・ごめんなさい。この子たちが竹馬ごと倒れるのが見えたから・・・」
「長老が心配しております。どうかお戻りを。」
その男は、3人をちらっと見ただけで彼らには全くの無関心である。
ふ〜〜・・・・・。
大きくため息をつく旅人を3人は、呆然として見つめていた。
少年達にとってあまりにも意外なその事実に、その旅人の話している声が遠くで聞こえているように感じられた。
雲の上の恐いような人だと思えた龍騎士。すご腕の神龍の守護騎士であるその人物は、もっと強面でがっしりとした剣士だと思いこんでいた。
が、事実は、温かい微笑みの気さくでやさしいお姉さん。剣士の格好はしているが、とてもそんな風には見えないほど。

「じゃーね、元気が一番だけど、あんまり無茶しちゃだめよ?」
その言葉と温かくさわやかな微笑みを残して、後から駆けつけてきた村人数人に囲まれ村の奥にある社の方へ連れて行かれるその旅人を、3人は変わらず呆然と立ちつくしたまま見送っていた。


「や・・・。やったーー!」
「え?」
「ぼくたち直接龍騎士様と会ってお話ししたんだ!」
「あっ!」
姿が見えなくなってからようやく我に返ったカイが叫んだ。
「そ、そうだよ!きっと転んだときの怪我も治してくれたんだよ!」
瞳を輝かし、3人はその場で興奮していつまでも話し込んでいた。


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