青空に乾杯♪


*レイベンさんからいただいた画像です。ありがとうございました*
 
 
100話突破記念画像
『決闘』
続編(1)『決戦前夜』
文:葛葉


 不思議な出で立ちと見たこともないような武器、そして、その戦い。
競技場の観客は全員目を見張って2人の戦いを見ていた。

だが・・・・殺気を孕んだその戦いは、それでもなかなか勝負は決まりそうもなく、国王の計らいにより翌日に持ち越されることとなった。

そして、その夜・・・・・

−バタン!−
カルロス、レオンそして、レイミアスが宿泊している客人用の宮の一室。彼らがくつろいでいる少し広めの部屋に、荒い息をして入ってきた女性が一人。

「ミ、ミルフィー?どうしたんだ、こんな時間に?それもそんなに慌てて?」
入口の方を向いてテーブルについていたレオンが、口をつけかかったグラスを離して声をかける。
「『どうしたんだ』って・・・どうしたも、こうしたもないじゃない?」
ドアの音とレオンの言葉に、入口に背を向けて座って呑んでいたカルロスと、窓辺に肘をつけて夜空を見上げていたレイミアスはそのミルフィーに、思わず胸を高鳴らせる。
そこにいたのは、美しく着飾った王女姿のミルフィー。老婆の家を出る時に近くで見た時以来、遠くからは見ても間近で見ることはなかった。しかも周りから王女として遇されているうちに自然と身に付いたのか、以前にはなかった女性としての色香のようなものがどこそこにじみ出ているような感じもした。

当たり前だがそんなことは全くもって感じていない本人は、カルロスの姿を見つけると、すっとその横へ歩み寄る。
「カルロス、大丈夫よね?明日も勝てるわよね?」
「は?」
ソファにもたれるようにしてゆったりと腰掛けていたカルロスをのぞき込むようにして言ったミルフィーに、当然カルロスは驚く。すぐ目の前にある王女姿のミルフィーにもだが、その言葉にも驚いていた。
そして、当然、レオンとレイミアスもそんなミルフィーに驚く。
「どうしたんだ、ミルフィー?」
「ミルフィー?」
「だって・・・」
カルロスからレオンとレイミアスの方を向いたミルフィーは、いつもの彼女ではなく、不安げな面もちだった。
「レオンだって見たでしょ?今日の試合。」
「ああ、見たけど、それが?」
「レオンたちはどう思った?『夜叉式十手・鬼の伊吉』とかいう人と、『牙神流免許皆伝・真壁五郎左右衛門忠邦』という人の試合。」
「ああ・・それか。確かに出で立ちもそうだが、あんな戦法もみたことないな。」
「でしょ?」
「だが、二人ともかなりの腕だということは確かだな。」
「ああ、そうだよな。ただ・・・鬼の伊吉って言ったっけ・・あんまりよくない感じも受けたな。」
カルロスの言葉を受け、レオンが少し不安そうな表情で付け加えた。
「そうよね・・・そう感じても・・・おかしくないわよね?」
「どうしたんだ、ミルフィー?いつものミルフィーらしくないぞ?」
少し青ざめて震えているようなミルフィーに、レオンは心配になる。
「だって・・・試合の前に目礼した時のあの視線・・・・だめっ!思い出しただけでも身震いがしてくるっ!」
ミルフィーは腕を交差させてぎゅっと自分の肩を抱く。その姿は確かに小刻みに震えているように見えた。
「腕がないなら心配などしないわ。でも・・・あの腕は・・・ただ者じゃないわ。もう一人の真壁五郎左右衛門忠邦という人も・・・でもあの人なら・・・歳は少し多いみたいだけど・・・彼ならまだしも・・・・・」
ミルフィーのその言葉で、レオンは彼女が何を言いたいのか、ぴん!と来た。
「んなこと言ってもだな。まだ奴に決まったわけじゃないし。勝者に嫁ぐと言ったのはあんただぞ、ミルフィー?」
「それはそうだけど・・・・でも・・・・」
生理的且つ直感的悪寒はどうしようもない、とミルフィーはレオンに目で助けを乞う。
「そうは言ってもだな〜・・・今更・・・・」
そして、そんな女心も一応は理解できるが、とレオンは困惑して頭をかく。

「だから・・・カルロス、お願い、明日は何があっても必ず勝って!必ずよ!」
明日の試合で、カルロスは2人のうちの勝者と戦うことになっていた。
「ミ、ミルフィー?」
レオンからカルロスに視線を移したミルフィーの目は明らかに懇願し、不安げに揺れていた。
「オ、オレを心配してくれるのか?・・・そ、それは・・もしかしたら・・オ、オレを・・・?」
ミルフィーのその言葉に驚いたのは、カルロスだけではなかった。それまで全くその気はなかったようにみえたミルフィー。が、やはりそうだったのか?とレオンとレイミアスは焦りとそして、不思議な納得感も感じていた。

「だって、そうでしょ?カルロスが勝ってくれればあとは安心なのよ。」
「安心?」
が、ミルフィーの態度に少し予想したことと違うようだと感じ、カルロスは思わず舞い上がってしまった自分を心の中で嘲笑する。そう簡単に事が運ぶわけはない、なんといってもミルフィーだからな、と思いながら。
「彼らのあの戦法・・・見たことも経験したこともないわ。いつどこからどういう風にくるのか、判断が難しいわ。」
「そうだな。」
2人の試合の時の様子を思い出しながら、3人は相づちを打つ。
「・・・私、自信ないのよ。それに・・あの伊吉っていう人の視線。あれだけで私すくんでしまいそうよ。」
ぶるっと今一度身を震わせたミルフィーに、3人は彼女が女性だったのだと改めて感じていた。
「ミルフィー・・・」
「それと違って、カルロスの剣なら見慣れてるわ。太刀筋だって、どう攻撃してくるのか、だって。」
「は?」
「それに、カルロスなら本気で私に斬りかかってはこないでしょ?」
「・・・そ、それは・・・大会の最後に自分が出るつもりなのか?」
「あら、当たり前でしょ?私を納得させた人物というのが条件なのよ。私に勝たなくてどう納得させてくれるというの?単なる優勝者じゃ信憑性ないでしょ?その試合が弱い者同士のドングリの背比べということだってあり得るじゃない?だから私が最後に出る必要があるの。」
「そう言われてみればそうだが・・・・」
が、今回はそんな低レベルな試合ではないと3人は思う。勿論ミルフィーもそれは承知している。
「・・だから、お願い、カルロス!どうあっても負けないで!相打ちになっても相手を倒すって約束して!」
「お、おい!相打ちになってもって・・・・」
ぎゅっとカルロスの両手を握って懇願するミルフィーには嬉しさを感じたカルロスだが、彼女の言葉には、単純に喜ぶことはできなかった。
「後の連中ならどうにでもできるわ!だから・・カルロス、お願い!」
「お願いはいいが・・・しかしだな・・・・」
カルロスとて、他の男にミルフィーを渡したくはない。当然試合には全力で挑むつもりだが、ミルフィーの言葉には、・・・納得いかないものがあった。

「ぶっ!ぎゃははははっ!」
突然大笑いを始めたレオンに、3人は驚いて見つめる。
「ミ、ミルフィー・・・やっぱ、ミルフィーだよな〜・・わははははっ!」
「な、何よ、レオン?」
カルロスの手を握ったまま、ミルフィーはレオンに言う。
「だって、そうだろ?はははははっ」
「もう!笑ってないで・・なんだっていうの?」
「だから・・・・ミルフィー・・・・・」
なんとか笑いを堪えると、レオンは続けた。
「それじゃ正直すぎるって!そういうことを男に頼む時は・・だな・・・そんなに正直じゃダメなんだぞ?」
「え?」
ミルフィーはレオンが何を言いたいのか全く分からない。
「正直じゃダメって・・・・じゃーどうやって頼めばいいというの?」
「だから・・・余分なことは口にしない方がいいのさ。」
「え?」
全く純というか、なんというか・・・とレオンはミルフィーの正直さと鈍感さに半ば呆れながら説明する。
「せっかくお姫さんしてるんだ。そういう時は、だな・・こう、しなっと身を寄せてじっと熱く見つめて一言だけ言えばいいのさ。」
「え?」
「『お願い、カルロス・・・私のために勝って!』・・それだけでいいのさ。」
「レ、レオン・・・・」
レオンのジェスチャーとセリフを自分に当てはめて想像し、ミルフィーは恥ずかしくて思わず頬を染める。
「そうだな。・・それならオレも闘志が普段以上に沸き立って燃えるだろうな・・・例えピエロ役だと分かっていても。」
苦笑いしながら、カルロスはレオンの言葉を受けて言う。
「え?・・・カ、カルロス・・・・?」
「これだけの美姫に頼られて、悪い気はしないというものなんだが・・・。」
いつの間にかカルロスの手を握っていたはずのミルフィーの手は、反対にぐっと強く握しめられていた。
「あ・・・・・」
ようやくミルフィーは、頼んだ後の言葉がよくなかったのだと気づく。
「でも、本当の事だから・・・騙すみたいで・・私・・・私、そんなこと・・・」
「まー、そこがミルフィーらしいと言えばらしいんだがな。ばっはっは!」
頬を染めたままうつむいたミルフィーを見ながら、レオンは再び大笑いする。
「じゃー・・・夜遅くごめんなさい・・・」
自分勝手な頼みでもある。それに、感情が高ぶった勢いで言ってしまったとはいえ、『相打ちになっても』は言い過ぎだった、とようやく落ち着いてきたミルフィーは反省していた。赤みも消え少し青ざめた顔色で自室へ戻ろうと、カルロスの手から自分の手をひこうとしたミルフィーの手を、カルロスは逃さないようぐっと力を込めて握る。
「お姫様の勝手な願いを聞くには・・・そうだな・・条件がある。」
「え?・・・条件って?」
諦めかけたミルフィーの目が、カルロスの言葉にほんの少しだが、期待で輝く。
「どっちと試合することになるのかは分からないが、オレのこの命かけて、奴には勝たせない。だから・・」
「だから?」
「前払いしてくれないか?」
「え?・・・あ、賞金?」
意外な事を言われ、ミルフィーは不思議に思って聞き返す。
「うーーん、そうだな、賞金と言えばそうだが・・・・」
「何なの?」
「オレは死ぬつもりはないが・・・万が一と言うことがある。そして、彼ら2人は、双方とも十分その腕はある。」
「・・・カルロス・・。」
それはミルフィーも感じていたことだった。剣士として自分の腕に誇りと自信は持っていても、過信はそして誇示はしない。それ相応の腕の相手は冷静に判断し分析する。
「そうして約束を守っても、死んでしまったら元も子もないだろ?・・・お前もあまりいい気持ちは受けないんじゃないのか、ミルフィー?」
「・・・・・・」
カルロスの言葉に、ミルフィーは項垂れる。彼の言い分はもっともだった。あれこれ考えていて感情が高ぶってしまい、その勢いで言ってしまった事だが、もし、そうなった場合、たとえ試合の優勝者を自分が倒しても、カルロスの死は、重くのしかかってくる。
「だから・・・その解決策というか・・・前払いをだな・・。」
「解決策?」
にやりと口元をほころばせたカルロスに、レオンは何を言うつもりなのか悟る。もちろんミルフィーとレイミアスには分からない。
「そうだ。・・オレが何よりもほしいものなんだが。」
「何よりもほしいもの?」
まだわからないか、と笑いながら、が、真剣にカルロスはミルフィーを見つめて続けた。
「命を賭けて臨む試合の前夜・・・オレは勝利の女神の愛がほしい。」
「え?」
「死ぬつもりは毛頭ないが・・・例えそうなっても悔いはない。だから、今宵一夜、・・・ミルフィー、お前と過ごしたい。」
(ええ〜〜〜っ?!)
やはりここまで口にしないと分からないか?と思いながら言ったカルロスのその言葉と熱い視線で、鈍感なミルフィーは、ようやく彼が何を要求しているのか分かった。
一気に心臓は踊り始め、頭は蒼白状態。さ〜っと血の気が引いたその顔は、一瞬後には恥ずかしさで火がついたかと思えるほど真っ赤になる。
そして、同じくその事がようやくわかったレイミアスも焦る。が、今の状態ではどうしようもなく、おどおどしながら見守るばかり。
「ミルフィー・・」
握りしめていたミルフィーの両手をぐいっと引き、カルロスは彼女を自分の腕の中に抱きしめようとした。
−バッシーーーーン!!−
「っ!」
勢い良くミルフィーの手がカルロスの手から離れたと思ったその瞬間、強烈な平手がカルロスの頬に飛んでいた。
「わ、分かったわよ!男なんてみんな一緒よ!頼まないから・・・もう頼まないっ!」
キッ!とカルロスを睨み、ミルフィーは叫ぶ。
「いいわよっ!自分の身は自分で守るわよっ!・・・気に入らない男だったら・・・・油断させて殺してやるっ!・・・だから、カルロス!あ、明日は、やばそうだと思ったらさっさと白旗あげちゃいなさいっ!」
さっと身を翻すと、勢い良くドアを閉めてミルフィーは部屋から出ていった。
−バッターーーン!−

しばらく部屋は沈黙していた・・・・・。

「いいのか、カルロス?」
「何がだ?」
「わざと怒らせたんだろ?」
「はは・・・まーな。」
「あんたなら、上手く話を持っていけば、首尾良く事は運んだんじゃないのか?」
カルロスがその気になれば、その巧みな言葉とムードで、あの状態のミルフィーなら落とせたはず。それをわざとミルフィーが嫌いなパターンに持っていった、とレオンは感じていた。
「ん?・・・・そうだな。そうかもしれんが・・。」
「が?」
「ミルフィーだからな。」
意味深な笑みをカルロスはレオンに投げた。
「・・・・・そうか、ミルフィーだから・・か。」
弱気になったところにつけ込む気はない、というカルロスの目に、レオンは嬉しさを覚えていた。
(まー、合格点といったところかな?・・・・しかし・・オレはいつまでミルフィーの守り役してりゃいいんだ?)
ミルフィアの時からすっかり自分自身の中に定着してしまったミルフィー・兄というか保護者のような感情。それは、ミルフィアとミルフィーの魂が一つになって今のミルフィーになった今でも、いや、一人になったからこそ、その思いは強くなっていた。

「さてと・・・・」
コトン、と残っていたワインを一気に飲み干して空になったグラスをテーブルに置くと、カルロスはゆっくりと立ち上がった。
「寝るのか?」
「ああ。明日は強敵らしいからな。ゆっくり身体を休めておくさ。」
「負ける気はしないんだろ?」
「ははは。」
軽く笑いながらドアに向かったカルロスは、戸口で振り向きもせずに片手を上げてから出ていった。
「やるだけはやる・・・か・・・・・。たぶん奴なら大丈夫だろうが・・・・だが・・・・・」
今回の相手は、そのどちらが勝者となってカルロスと対峙することになろうと、苦戦を強いられることは確かだった。それほど2人の腕はずば抜けて秀でていた。勿論カルロスとミルフィーの腕もそうなのだが・・・不安はないわけではない。

「さて、オレたちも寝るとしようぜ。」
心配そうに自分を見つめていたレイミアスの肩を軽く叩くと、レオンは大丈夫だ、と目で合図を送った。

*続編(2)へと続きます/^-^;*
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