☆★ <<第71話>> いざ、冒険へ! ★☆


 「で、結局オレたちはどっちで呼べばいいんだ?」
老婆の家へ戻ったレオンたちはテーブルを囲んで話していた。
レオンが代表してあれこれ聞いていた。
「ん。お母さんはね、本来なら1人で産まれてくるその子供にミルフィーと名づけるつもりだったらしいの。だから、ミルフィーでいいわ。」
「あ・・・そ、そうなのか。だけどそうすると、最初産まれてくる予定だった子供ってのは・・男の子だったのか?」
「ううん。女の子よ。」
信じられないような話だった。が、確かに記憶は2人分持っている。性格は、幾分というか、かなり、ミルフィーの傾向が強いように感じた。
「ということで、落ち着いたら聖魔の塔へ行かない?」
「は?」
「だって、普通の生活なんて今更あほらしくて。」
「あ、あほらしい・・・・」
「やっぱり、聖魔の塔制覇!これしかないでしょ?」
「ミ、ミルフィー・・・・・」
全員あきれ返ってミルフィア、もとい!ミルフィーを見つめていた。
「レオンとあなたは付き合ってくれるでしょ?リーシャンはまだ来ないし。」
「あ、ああ、それはもちろんいいが・・・・」
「あたしも勿論いいわよ。まだ名前つけてもらってないし。それに今度の姉様ってまた一段と素敵!」
「そお?ありがとう。」
にこっと2人は微笑みあう。
完全にネオ・ミルフィーのペースだった。
「レイムはどうするの?村へ帰る?」
「最初はそのつもりだったんですが・・・」
「帰らないの?」
「え、ええ、ミルフィーさえよかったら一緒に行かせてください。」
「勿論私は大歓迎よ。」
「よかった。」

「なんだ、帰らないのか?」
意外そうな顔をして自分を見るレオンにレイミアスはつい小声で口を滑らす。
「だって、ぼく、ミルフィアがこんなだったらどんなにいいかって・・・あ・・・」
思わず本心を言ってしまい、慌てて口を手で押さえる。
「なによ〜〜・・やっぱりレイムってミルフィー狙いだったんじゃないのぉ?!」
「え?!」
その声で全員戸口を見る。
「ハ〜〜イ♪元気してた?」
「チキ!・・・シャイ!」
戸口にはにこやかに立つグラスランナーのチキとエルフのシャイがいた。
「ごめんなさい、開いてたから勝手に入ってきちゃった。でも、こんなところでくつろいでいるとは思わなかったわ。」
「こんなところで悪かったの。」
老婆がちろっとチキを睨む。
「あ・・ごめんなさい。そういうつもりじゃないのよ。」
「分かっておる。ふぉっふぉっふぉっ!」
素直に謝るチキに、老婆は目を細めて楽しそうに笑った。


しばらくレイラを慰めるため、彼女のところへ行くことに決めた老婆以外、ミルフィー、レオン、レイミアス、チキ、シャイ、そして火龍の少女は、揃って聖魔の塔へ行く事にする。
そして、十中八九上手くいくと期待していた野望(笑)を完璧なまでに打ち砕かれたカルロスは・・・一時は確かに落ち込んだが・・・・・今はそれ以上に燃え、やはり同行することを決心していた。

「今更後には引けん。何が何でもオレに振り向かせてやるっ!」
それもそのはず。実は心から惹かれてはいたが、ミルフィアに対して今ひとつ何か物足りないと感じていたもの、それが今のミルフィーにあった。
それはつまり、惹かれたきっかけが、ミルフィー(兄)との出会いだったことが裏付けていると言えた。
明るくさっぱりとした性格と剣士としての確かな腕、時に少女らしい微笑としぐさを見せるミルフィーにカルロスはまた一段と心を奪われる。

が、ネオ・ミルフィーは聖魔の塔を突き進む。魔物を見据えるその瞳からは、まだまだ恋などしそうもなさそうである。

「さー、次もチャッチャと行ってみよーーー!」
澄んだ青空のような瞳を輝かせ、ミルフィーは今日も元気よく魔物をなぎ倒して塔を行く。

チキと火龍の少女とそしてミルフィーの3人娘タッグマッチ(?)を先頭に彼らは進む。冒険を求め、夢を求め、そこに何が自分たちを待っているか、何がそこで起きるのか、期待に胸躍らせて。


*** 
【青空に乾杯♪】 ==完== ***

*Epilogue*


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