青空に乾杯♪


☆★ <<第31話>> 追憶の彼方の恋人 ★☆



 「いってーーーー・・・」
急に引っ張られ勢い余って前のめりに転んだレオンは、暗闇の中擦り傷を回復魔法で治しながら立ち上がった。
「で・・・結局みんなとはぐれちまったってわけ・・・だよな?だけど悪霊もいねーぞ?」
当然そこにはミルフィー(フィア)を装った悪霊がいると思い、警戒しながら周りの様子をうかがっていたレオンだが、あまりにものその静けさに不安を感じながらも、何も気配がないことに一応の安堵感を覚えていた。
空気は相変わらず重苦しくのしかかってはくる。が、仲間だけでなく悪霊の気配もない。
「オレが欲しいって言いやがったくせに・・・さては、オレ様の魔力に怖じ気づいたか?」
勝手な事を言いながらレオンはともかくさっきまで自分がいたと思われる方向に1歩進めた。
そしてまた1歩。
が、何も変化は起きない。
「どうなってんだよー・・・おーーい!レイムー!チキー!」
−し〜〜ん・・・−
予期したとおり返事はない。しかも、今進んでいる方向が仲間のいる方向だったのかも全く自信はない。
「最悪の展開になっちまったってことか?」
足を止め、頭を掻きならがぐるりと見渡す。自分を包む暗闇を見通そうとするかのように目を見開いて。
が・・・・暗闇以外何も見えない。
「あーあ・・な〜んでこうなっちまうんだよ〜・・・」
大きくため息を付くとレオンは丁度足先に当たった小石を前方に蹴飛ばした。
「きゃっ!」
「え?」
その小石が当たったのか前方の暗闇で少女のような声がした。
「だ、誰かいたのか?・・ミルフィアじゃねーよな、その声は?」
悪霊が化けている?と警戒しつつレオンはじっとその闇を見つめる。
「あん!もう痛いじゃないのぉ・・・・・」
頭にできた小さなこぶを撫でつつ近づいてきたのは妖精だった。
「は?」
あまりにも意外なことでレオンは拍子抜けすると同時に惚けた顔で見つめ続ける。
「『は?』じゃないわよー、レオン!」
「え?オ、オレを知ってる?」
「知ってるも何も・・・な〜に、ひょっとして忘れちゃってる?あたしを?」
全身を金色の光で覆われた身長10センチほどの妖精。金色の髪の間から顔をだしている小さなコブを撫でつつ、ちょっとべそをかいたまん丸い顔。
レオンは目の前に飛んできたその妖精にそっと両手を差し出した。
「自分に回復魔法かけても効き目ないのよ、知ってるでしょ?」
ふわりとレオンの手のひらに下り立ち、その長い指にもたれ、ふくれっつらをして言う妖精。
「あ・・ああ・・・」
訳はまだ分からなかったが、とにかくレオンは回復魔法を彼女にかける。
「あ、ありがとう。」
すうっとひいたこぶと痛みに妖精は満足したように、レオンに微笑む。
「でも、もうあんなことしないでね。」
「あ、ああ。」
「レオン・・・・・」
そのレオンのはっきりしない態度に妖精は、手のひらから飛び出してレオンの鼻の先で空中停止する。
「あなたってまだ思い出してないのね!」
腕を組み、再び膨れ顔をして睨む。
「そ、そう言われてもだなー・・・なんだったか、ぜんぜん・・・・」
「もうっ!将来を誓った相手を忘れちゃうなんてー!最低っ!」
「し、将来を誓った・・・相手?」
「そうよ〜・・」
「覚えてない?あなたのその魔力、通常の人間以上のその力は最初からじゃなかったでしょ?」
「あ!」
突然忘れ去っていた幼い頃の記憶が蘇り、レオンは小さく叫ぶと驚きの表情と共に彼女を見つめ直した。
「りろの森の妖精?!」
「ぴんぽ〜ん!」
ようやく思い出したレオンににこっと微笑みかけると、彼女は再びレオンの手のひらに落ち着いた。
「ったくもう!鈍感さは相変わらずねー。それとももうぼけが始まったの?」
「んなわけねーだろ?」
彼女の言葉に少し気分を害したが、思い出せなかったのは確かなのできつくも言えない。それに・・・・
「えっと〜・・・やっぱぼけてるんかな?」
「え?」
まさか冗談で言ったのに、と少し焦りながら彼女は答える。
「あのさ・・」
「何?」
「その・・名前なんていったっけ?確か・・え〜と、シャンプーじゃない・・・リンスじゃない・・・シャンプーリンス・・じゃない・・・だけど確かその手の名前だったよなー?」
「う〜〜〜・・・」
彼女の顔は怒りで赤く染まってきた。
「シャンリン・・・じゃなかったような気がするし・・・」
「もーっ!」
怒りでレオンの頬をつねってやろうと飛び立とうとしたときだった。
「そうだ!リンシャンだ!」
「ち・が・う・わ・よっ!」
「そか?」
「違うの!」
あきれ果てつねることも忘れて叫ぶ。
「そうだっ!」
「何?」
またしても間違う?と全く信用しない目で彼女はレオンを睨んだ。
(また間違えたらおしおきよ!)そう思いながら。
「リーシャン!そうだろ?リーシャン!」
「ふう・・・」
大きくため息を付きながら、ようやく思い出して嬉しげな表情のレオンの手のひらに再び下りる彼女。
「まったくう・・・あなたの魔力はあたしがあげたんでしょ?」
「そ、そうだったよな。あはははは・・」

彼女を見つめつつ、風船のように勢いよく膨らんでくる5歳の頃の記憶に想いを巡らせてた。
生まれ故郷にある妖精の森と言われるりろの森・・間違って立入禁止区域となっているその奥へ入ってしまい、そこで蛇に食べられそうになっていた妖精リーシャンと出会った時の想い出。
それは、追憶の彼方へ消えてしまっていた幼い日の記憶・・・それが鮮明に蘇ってきていた。
つい昨日のことのようにこんなにも鮮明に思い出せるのに、なぜ今まで完全に忘れ去っていたのか不思議なほどに。



 「ここ・・・・どこ?おうちはどっち?」
森の奥深くで幼いレオンは迷っていた。べそをかきながらとぼとぼと歩く。
−ガササっ!−
−ビクっ!−
「こ、恐いよ〜・・・おかーちゃん・・おかーちゃーーーん・・・・」
茂みで何かがごそごそする都度、レオンはびくついていた。
そうこうしているうちに日はだんだん傾いてくる。
とぼとぼと歩くレオンの衣服は、あちこちでひっかけ破れてきていた。
「おかー・・ちゃん・・・・」
歩き疲れ丁度視野に入った手頃な岩に腰をかけ、レオンは大きくため息をついた。
「ぼく・・もう帰れないの?」
視点の定まらない目で遠くを見つめ呟く。
「心配してるだろうな、おかーちゃん・・・・。」
母親が必死になって探している様子が目に浮かぶ。
「・・・・帰ったら・・・お尻百発の刑・・・かな?・・ううん、そんなんじゃ済まないかも。」
そう呟いてはっとする。無事帰れるかどうかも分からないことに気づいて。
「・・・・・・・・帰れたら、だよね・・・・ぼく、このままここで死んじゃう?」
途端に両目から大粒の涙がこぼれ落ち始める。
「ぼ・・ぼく・・・・・う・・うわーーーーん・・・・」
そして、両手で交互に涙を拭きながら走り始めた。
「おかーちゃんっ!おかーちゃーーーんっ!」
−ざざざざざ−
辺り構わずレオンは突っ走っていた。藪だろうとなんだろうと我を失って駆けていた。
「神様!もう悪いことしないから!やっちゃだめって言われたことはもうしないから!だから・・だからぼくをお家に帰して〜・・・」
−バッターン!−
足下も見ずに走っていたレオンは、何かにひっかかって前のめりに倒れる。
「痛っ!」
膝小僧が擦り剥け砂と血でぐちゃぐちゃになっている。
「うっく・・・・お、おかー・・・・」
再び大きく泣こうとしたときだった、ふと自分が躓いたものらしい、太い縄が目に入る。
「こんなとこにあるからいけないんだ。こんなものこうしてやるっ!」
涙を目にためながら、不安にかられた行き場のない怒りを、レオンはその縄にぶつけた。
「お前なんか飛んでっちゃえーっ!」
太さはレオンの腿ほどあろうかと思えたが、両手でぐいっと握るとレオンはそのままぐるぐると自分を回転させその円心を利用して思いっきり遠くへ飛ばした。
「ぶっわっかやろーーーーーっ!」
遙か遠くに小さくなっていく縄を見ながらレオンは思い切り叫んだ。
「あ・・ありがとう・・・」
「え?」
その消え入るような小さな声にレオンはきょろきょろと辺りを見回した。が、何も見あたらない。
「ここよ、ここ。」
ツンツン!とぼろぼろになったズボンの裾をひっぱられ、レオンは足下を見る。
「こんにちは。」
足下で顔を上げているのは10cmくらいの小さな女の子。その背中からは透明な羽根がはえている。
「こ、こんにちは。」
そっとしゃがみ込んで女の子と目を合わせる。
「も、もしかして・・・妖精さん?」
コクンと頷くその少女にレオンの目が輝く。
「うわーい!やったー!妖精に出会えたんだ!妖精の森って言うのは嘘じゃなかったんだ!」
さっきまでの後悔はどこへやら、レオンはうれしさに飛び跳ねていた。
「痛っ!」
と、膝の傷がうずいてうずくまる。
「怪我したのね。ちょっと見せて。」
妖精は慌ててレオンに近寄ると、膝を見る。
「これくらいなら今の私でも大丈夫。」
にこっと笑いかけると妖精はレオンの膝に背中を向け、ぱたぱたと羽ばたく。
と、金色の光とも思える細かい粉のようなものが膝に振りかけられる。
「あ・・あれ?」
すうっと痛みは消え、傷も見るみる間になくなっていった。
「他のところもみせて。」
「う、うん。」
レオンはあちこちにできた切り傷を妖精の背中に向け、傷はあっという間に治っていった。
「ありがとう、妖精さん!」
「どういたしまして。こちらこそもう少しで大蛇に食べられてしまうところを助けてくれてありがとう!」
「だ、大蛇?」
目を丸くして聞き直すレオン。
「ええ・・そうよ。」
「え?・・・・も、もしかして・・さっきの・・綱?」
「ええ、そうよ。」
目を大きく見開き真っ青な顔になった顔で妖精を見つめながら、さっき飛んでいった綱の方向を指さすレオン。
「へ、蛇だったの?・・・どうりでなんかぬるぬるして掴みにくいと思った・・。」
今更ながらぞっとしていた。あのときは怒りで全く気にならなかった。
「分からなかったの?」
「う・・ん・・・。」
「ぷっ・・・・あはははは!」
頭をかきながらレオンは妖精と一緒に大笑いしていた。
「でも、君、妖精なのに飛べないの?」
「蛇に睨まれたショックでちょっと飛ぶ気力が抜けちゃったの。」
妖精は、えへへへと笑ってぺろっと舌をだす。
「だって、もう少しで食べられちゃうところだったんだから・・・」
「だろうね。恐かったんだよね。」
返事の変わりにコクンと頷くと、妖精はにこっとレオンに微笑む。
「私、リーシャンって言うの。あなたは?」
「あ、ぼく、レオン。」
「どうしてこんなところにいるの?ここは滅多に人間は来ないところ、というより入れないはずよ。」
「う、うん・・本当に妖精がいるのか探検しようと思ってそっと奥へ入ってきたら・・・」
「帰り道が分からなくなっちゃったのね?」
「うん・・・そうなんだけど・・・君、あ!リーシャンだったっけ?分かる?」
「そりゃー分かるわよ。でも・・」
「でも・・何?」
顔を少し曇らせたリーシャンにレオンはぎくっとして聞く。
「ここはね、普通の人には出入りできないようにある種の結界が張ってあるの。普通はここまで入ってこれないし、もし仮に入ることができたのなら、二度と出られないように。」
「え・・・?そうなの・・・?」
「あ!で、でも方法はあるわよ。」
再びレオンの目にじわ〜っと涙が溜まってき始め、リーシャンは慌てて付け加える。
「何と言ってもあたしの命の恩人だし。」
ぱちん!とウインクをするとリーシャンはすっとレオンの顔面まで羽ばたく。
「ホント?・・あ!もう飛べるんだ?」
「まだあまり遠くまでは無理みたいだけど。もう大丈夫。」
差し出されたレオンの手のひらの中に下りながらリーシャンはにこっとする。
「ここから出るにはその結界も物ともしない魔力が必要だけど。」
「魔力なんて・・ぼく、持ってないよ。魔導師ってわけでもその修行を積んでるわけでもないんだもん。」
不安そうに言うレオンにリーシャンは力強く答えた。
「ということは・・ここへ入ることができたんだから、そうでなくても、ある程度の魔力を秘めているっていうわけよね。そうなら話が早いわ。」
「話って?」
「つまりこういうわけ。レオンにはまだ目覚めていないけど奥底に魔力があるの。だからここまで入れたのよ。で、ということは、魔力を蓄える箱があるってわけよ。」
「箱?」
「そう。その人が持って生まれた才能の箱と言ったらいいかしら?だから、あたしがもう少し回復したらあたしの魔力をあげるわ。そうすればここから出るのなんて簡単よ。」
「魔力をくれるって・・でも、そうしたら君は?」
「あげるといってもそっくりあげるんじゃないから大丈夫よ。一部だけだし、あたしたち妖精はまた魔力が回復するから大丈夫。」
「ふ〜〜ん。」
「ただし、条件があるの。」
「え?条件?・・条件って、たとえば悪いことに使っちゃいけない、とか?」
「うーーん、それもあるけど、もっと大切なこと。こればっかりは譲れないのよ。掟なんだし。」
「え?な、なにかすっごく難しいこと?」
「妖精が仲間以外の人に魔力をあげる・・・このことは普通ではあり得ない、ううん、あってはならないことなの。ただ一つの例外を覗いて。」
手のひらから再び飛び立ち、顔の周りをぐるぐる回り始めたリーシャンをレオンは視線で追う。
確かにそれは大変なことなんだとは理解できた。
「例外?」
「そう。あのね・・」
すっと再びレオンの手のひらにのるとリーシャンは両腕を後ろで組むと、少し頬をそめて恥ずかしそうに小声で言った。
「レオン・・あたしをお嫁さんにしてくれる?」
「ええ〜〜〜?!」
驚いた拍子に、レオンは合わせていた両手を離してしまう。
「きゃっ!」
「あ!ご、ごめん!」
突然足場を失ってバランスを崩し、慌てて羽ばたいたリーシャンに、レオンもまた慌てて手を差し出す。
「気を付けてよ、レオン。」
「う、うん。」
微笑みながら言うリーシャンにレオンは照れ笑いする。
「でも、お嫁さんって・・ぼく、まだ子供だよ?」
「だから今すぐにとは言ってないわ。大きくなってからでいいの。約束してくれれば。」
「約束でいいの?」
「ただし、本気でないとその約束は成立しないわ。」
「本気と嘘とどうわかるの?」
「この森のもっと奥に私達の聖なる木、シュロの大木があるわ。その小枝を一本切って植樹するの。そしてその小枝に誓うのよ。2人が本当に心が通じていれば根を張るわ。だけど・・・」
「そうじゃなかったら枯れちゃう?」
「そうよ。でも、あたしの気持ちに嘘はないわ。」
「ぼくだって!リーシャンみたいにかわいい妖精さんなら、ぼ、ぼく・・・。」
幼い2人はしばらくお互いに真っ赤な顔をして見つめ合っていた。



「げ・・すっかり忘れていたぜ・・・・。」
「え?な〜に?何か言った?」
「あ・・い、いや・・な、なんにも・・・・懐かしいなーってさ。」
そう答えながらレオンはどぎまぎしていた。
(だいたいあんなガキん頃の約束なんて覚えてるわけねーだろ?それに・・・・)
そう、無事森から脱出はできたが、あまりにも急激に魔力を解放したため、レオンは気を失って倒れていたところを母親と村人に発見されたのだった。
気が付いた後、いくらレオンが説明しても夢だと言って誰も信じてくれなかった。
(そうだよな・・あれでオレもいつの間にか夢だったのかも・・・と思いこんじまって・・・で、いつの間にか記憶の彼方へいっちまってたんだよな〜・・。)
「ね〜、レオン!どうしたの?」
一人で想いにふけっているレオンの顔をリーシャンはのぞき込む。
「あ、ああ・・・ごめん。」
そのリーシャンを見ながらレオンは思わず呟いた。
「夢じゃなかったんだよな。全部ホントのことだったんだ・・・よな?」
「え?何が?」
「あ、だから、さ。・・・」
慌てて次の言葉を探すレオン。
「だから・・(え〜っと・・・・あ!そうだ!)なぜこんなところにいるんだ?」
「え?え、ええ・・・まーね・・・いろいろとあって・・・」
「いろいろって?」
その質問に少し顔色を変えてぎくっとしたようなリーシャンに、レオンはふと疑問を感じる。
「ちょっと待てよ・・・ここは夢の世界であって、でもって今ここには魔の空間が召還されてるんだ。」
じっとリーシャンを見つめて言葉を続ける。
「なぜ、りろの森の妖精であるリーシャンがここに?それともまさか・・・・?」
(まさか、悪霊がリーシャンに化けている?・・それにしては、2人しか知らないことを知りすぎている。)
「『まさか』って・・・まさか、レオン・・あ、あたしを疑ってるんじゃないでしょうね?あ、あたしが偽物か何かとでも?」
−ぽたん・・−
大粒の涙がリーシャンの両目から次々とこぼれ落ち始め、レオンの手をぬらし始める。
「・・・レオン・・・」
その涙に濡れた瞳でじっとレオンを見つめる。
「あ・・・・」
(疑ってはならなかった・・・いや、少なくとも声にすべきじゃ・・・)
リーシャンと見つめあうレオンは自分が口にしてしまったことを悔やんだ。
「ごめん。君はリーシャンだよ。まぎれもなく。・・・ただ・・」
そおっと片方の手のひらにリーシャンを寄せると、自由になった手の小指でそっとその涙を拭う。
「ただ?」
そのレオンの指を愛おしそうに抱きしめながらリーシャンはレオンの次の言葉を待つ。
「ただ・・こんな危険なところに君一人で、どうして、それと、どうやって来たのか?って思ったんだ。」
「どうしてって・・・レオンが心配だったからに決まってるでしょ?なんとなくレオンに危機が迫っているって感じたの。」
「そっか。」
そんなしぐさをレオンは微笑んで見つめていた。
「どうやってかというと・・・・」
そこまで話したその瞬間、リーシャンの愛らしい目が赤く染まり、異様な光を放った。
「悪霊になってに・・・・」
そこまで言いったかと思った瞬間、手のひらに悠に入る大きさのリーシャンの身体が一気に巨大化してきた。
「決まってるでしょお?!」
あとのリーシャンの声に魔物の咆吼が共鳴する。
−ぐおおおおおおお!!!!−
思わず手を引き後ずさりするレオンに、悪霊の固まりと変わり果てたリーシャンが襲いかかる。
「お前も仲間に入れ〜〜〜!!」
おぞましき悪霊の声。ついさっきまでのリーシャンの愛らしい声や姿はどこにも見られなかった。
が、確かにその中心にリーシャンの気配は感じられる。
「リ、リーシャンっ!」
暗闇の中、悲痛な叫び声をあげたレオンを飲み込もうと、悪霊は一瞬たりとも躊躇せずに呆然としているレオンに襲いかかってきた。

akurei

リーシャンと悪霊
ナリさんからいただきました!
ありがとうございました。


☆★ つ づ く ★☆



【前ページへ】 【青空に乾杯♪】Indexへ 【次ページへ】