青空に乾杯♪


☆★ <<第27話>> 連れ去られたミルフィア ★☆



 「ミルフィア!」
魔導師レイムが包み込むようにして連れ去ろうとしているミルフィアに向かってレオンが叫ぶ。
「え?」
ローブの中で振り返ったミルフィアは、それまで見たことのないほどの嬉しそうな微笑みを見せていた。
「レオンさん、レイムがフィーの身体があるところへ連れていってくださるんですって。これでフィーももう消えなくてもよくなるのよ。だから、ここで少し待っていてくださいます?」
レイムに砂粒ほどの不信感も持っていないミルフィアに、レイムは自分たちの感覚をどう説明すれば信用してくれるのか分からなかった。
「いいから・・ちょっと待ってくれ。」
走りながら祈るように言うレオン。
「ごめんなさい。急がないと手遅れになるんですって。月タンポポを探すのにはフィーがいなくちゃいけないんでしょ?だからすぐ戻るわ。」
にこっと笑ったミルフィアの笑顔を余韻に、2人の姿はふっと消えた。
「ミルフィアっ!」
ようやく2人の立っていたところまで来たレオンは、側を離れたことを悔やんだ。
「・・・・レオン・・」
「ぶきっ!」
チキとシャイがそんなレオンに困惑顔を向ける。
「ああ〜〜・・ったく・・どうすりゃいいんだ?思い違いならどおってことないが・・・しかし・・・」
「多分、思い違いじゃないわ。」
チキが消えた後を見つめながら呟く。
「瘴気が漂ってる・・・会ったときは全然感じなかったからきっと押さえてたのね。」
「つまり奴はミルフィアの身体に憑依し、ミルフィーの身体を奪っていった悪霊の仲間ってことか?」
「え?」
「つまりだ・・・。」
今そんなことをしている時間はないと思いつつ、他にどうすればいいのか分からない。レオンは2人にミルフィーとミルフィアのことをざっと簡単に話した。



「幽霊の魔導師さんとコンタクトが取れればどこに行ったかわかると思いますよ。」
「ん?」
3人であーだこーだと話し合っていると、不意に背後から声がした。レイミアスだった。
「レイム!」
「レイム、あなた?」
「ぶきっ?」
「すみません、余分なお時間とらせちゃったみたいで。」
少し悲しげな表情で、頭に手を当てて謝るレイミアス。
「お前・・・夢から覚めたのか?」
「は、はい・・・」
「いつ?あたしが何と言ってもだめだったじゃない?」
チキが不思議そうにレイムを見る。
「ええ・・まーそうだったんですが・・みんなが走って行ったときにふと見えたミルフィーと怪しげな影に気を取られて・・・しばらく放心状態といったらいいのかもしれません。暗闇を歩いていた気分でした。そして、ふっと気が付いたらこちらに来ていたんです。ミルフィーたちのお話も聞いてました。」
「あら・・・ちゃっかりしてるのね?」
チキが苦笑いする。
「やっぱりミルフィーがきっかけになったのね。」
「なに?そうなのか?」
「よしてくださいよ、そんなんじゃないんですから。」
興味津々な目つきでレイミアスを見るレオンに、レイミアスは焦りながら答える。
「それにミルフィーは男だったんだし。」
「そ、そういえばそうだったな。だけど男だから悪いって法はないぜ。」
「レオンっ!」
一層焦りを見せるレイミアス。
「ぼくとしてはやっぱり女の子の方がいいですよ。」
「ふむ・・ま、オレもその方がいいがな。」
「じゃー2人ともミルフィア?」
チキが少しご機嫌斜めの表情で言う。
「い、いや・・ミルフィアはお嬢様すぎてどうも苦手なんだ。」
「ぼくはまだぜんぜん彼女のことは知りませんし。」
「ふ〜〜ん・・・でも、要はミルフィーみたいな女の子がいいんでしょ?2人とも?」
「え?あ、あの・・・そ、そっかな〜?・・ぼくそんなこと考えたこともないから。」
あははははと照れ笑いするレイミアスをチキは軽く睨んで誰にも聞こえない声で呟く。
「・・・まだ認識してないってことね・・。」
「ぶきっぶきっぶきっ!」
そんなチキの心情を察したのかシャイが必死になって叫んだ。
「さっきの姿なら言うことないんだけど・・・」
豚の姿に戻ったシャイを見ながらチキは思わず苦笑いした。
「でも、シャイはシャイよね?・・ありがと。」
「ふごっ!」



 「で、幽霊の魔導師って・・ミルフィーを気に入ったっていうあの女魔導師の?」
「ええ、そうです。ミルフィーの中に潜んでいるはずです。あれ以来チャンスがないので出てきませんけど。」
「ふむ・・・確か必要なときは出てきたな。その都度ミルフィーが倒れたが・・。」
「そうです。今ぼくたちがいるここは夢の世界、精神世界だからコンタクトさえ取れればそこへ行くことはたやすいと思うんです。」
「なるほどな。で、どうやってコンタクトを取るんだ?」
「ぼくが呼びかけてみます。いきなり移動してもいけないので、円座を組んで手を握ってましょうか。」
すっと2人が消えた場所の前に正座するとレイミアスは、レオンたちにもそうすることを促した。
そして、目を閉じ精神を集中し始める。
それに合わせ、他の3人もそっと目を閉じる。



☆★ つ づ く ★☆



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