青空に乾杯♪


☆★ <<第26話 >> 鳴り響く警鐘 ★☆



教会の前に行くとチキはさっそく村人につかまり、シャイと共に祝福と冷やかしの中に入っていった。
レオンはそんな2人を笑顔で見つめつつ、適当なイスに座った。
「チキさんのお知り合いですか?」
「ああ・・・ん?」
その言葉にレオンは声の主を見る。声の主はレイミアス。
「お知り合いですか?って・・・おい、レイム・・・まさか、お前?」
完全に幸福な夢にはまってしまって、現実を忘れ去っている?と思い思わずレイミアスの肩に手をかける。
「だめなのよ・・・」
不意にチキに小声で話しかけられ、レオンはぎくっとして振り返る。
「レイムは完全に夢に掴まってしまってるの。いくら話しても全然信用しないのよ。」
「チキちゃん!花婿ほかって他の男と話してていいのかい?」
「ん!もう!そういうんじゃないの!」
チキはそう言った村人を笑いながら軽く睨む。
「シャイ〜!気を付けなくちゃだめだぞ〜!」
「・・・ったく・・・気楽な人たちなんだから・・。」
「で?」
からかった村人を適当にあしらうと、チキはレオンと再び話し始める。
「つまり、レイムは幸福だったらこうなってるっていう夢を見てるらしいの。で、その夢を壊す原因になりそうなものはすべて拒否してるのよ。無意識のうちなんだろうけど。」
「思い出させる方法はあるのか?」
「さあ?どうなのかしら?とにかく、私とシャイがこんな格好をしているのも、こうすればここにいる理由ができるからなのよ。」
「理由ね・・。だけどオレ達だってここへ入って来たぞ。」
「まだ最初だからよ。少しでも現実を思い起こさせるような事を言ったりしたら、即追い出されるわ。」
「・・・・・難儀だな。」
「そう。」
「だけど、チキもリーパオから聞いたのか、夢のこと。」
「そうよ。普通の夢とは感じが違ってたの。なんか、こう・・誰かに見られているような気がしたって言うか・・・そんなんで、リーパオから理由を聞くことができたのよ。」
「なるほど・・グラスランナーは感が鋭いってか?」
「そうそう!」
「で、シャイは?」
「それがね、ここへ来る途中で、夢が一緒になったみたいなの。」
「ふ〜ん・・オレとミルフィーのような感じか。」
「多分そうでしょうね。」
「で、どうしたらいい?」
「とにかく意固地なのよ。気持ちは分かるんだけど。」
「そうだな。」
2人は司祭とにこやかに笑いながら話しているレイミアスを見つめていた。
「向こうのレイムも何か気になるしな。」
レオンがふと思い出したように呟く。
「何?妬いてるの?」
ふふっと軽く笑いながらチキがからかう。
「最初はオレもそうかな?と思って自己分析してみたんだが、そうじゃない。オレが気にかかってるのはミルフィアでもなく2人の仲でもなく、あの魔導師レイムなんだ。」
「頭の中で警鐘がなってる?」
「ああ・・・・・」
そう言われて、遠く小さく見える2人に視線を移すと、レイムが着ているローブでミルフィアを包み込みそこから立ち去ろうとしている姿だった。
「おい!何かいやな予感がするぜ!」
なんとなくだった警鐘がはっきりとレオンの頭の中でなっていた。
−ガタ、ガタン!−
イスを蹴るようにして立ち上がったレオンとチキは、慌てて2人の方へ向かう。
「チキ?」
そんなチキにシャイが何があったのだろうかと不思議そうに声をかける。
「もう!ホントに鈍いんだから!あんたもいらっしゃい、シャイ!」

3人はレイムとミルフィアに向かって走り始める。
その途端、チキとシャイの服装そして姿は、徐々に元に戻っていった。

真っ白な教会と賑やかな村人たち、幸せそうなレイムと老司祭・・・・幸せな結婚式の情景は・・・彼らの後方でゆっくりと薄らいでいき・・・そして、霧に包まれたように見えなくなった。
どうやらレイミアスの夢から隔離されたらしい。が、今はそれよりもミルフィアと魔導師レイムのことが気がかりだった。


「ったく・・こんなときに何やってんだ、ミルフィー?」
走りながらレオンは焦りを覚え、呟いていた。




☆★ つ づ く ★☆



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