☆★ <<第22話 木漏れ日の中>>  ★☆



 −ガササッ!−
「ガオッ!」
突然茂みからオオカミがレオンとミルフィアに襲いかかる。
「きゃあっ!」
頭を抱えてそこにうずくまる戦士、ミルフィア、と、彼女に襲いかかるオオカミ。
「ち、ちよっと待ってくれよ・・・・」
火炎の呪文を唱えながら、レオンはそのいつもと全く勝手違う状態にとまどう。
「ファイヤーーー!」
慌てて目の前のオオカミを黒こげにして襲われているミルフィアに駆け寄ろうとする。
が・・オオカミの集団は、なかなかそうはさせてくれない。
真っ青になり必死に目の前のオオカミを倒している向こうで・・・意外な事が展開していた。



「きゃあ!きゃあ!」
心底から怖がっているのだろうと思われるミルフィアは、叫び声をあげつつ・・・
なんとオオカミを次々に切り殺していた。
「いやーーーーー!」
その恐怖に染まった声とは真反対に、長剣が光を放ち空を斬って飛ぶ。



そして・・・・その結果、当然のごとくオオカミはいなくなった・・・・(と言おうか・・死体の山)



「え?・・・こ、これ・・・・私が?」
パニック状態から平静を取り戻したミルフィアは、呆然と自分が手にしている血の滴る剣とレオンの顔を見つめる。
「わ・・・私・・・・・・」
そして、剣と血が忌まわしい記憶を呼び起こした。
「私・・お、お父様を・・・・?」
どうやらそれまで記憶の奥底にしまい込まれていたらしい、悪夢の瞬間を。
「私・・・」
剣を落としふっと気を失ったミルフィアはその場に倒れる。
「ミ、ミルフィア?」
慌てて駆け寄るレオン。
が、ミルフィアが気絶したのだから、今度はミルフィーが表面化するのか?と倒れた彼女を抱き起こすこともできず、手を差し伸べた格好で止まるレオン。
「ど・・どうすりゃいいんだ、オレは?」


が、しばらくそのままの格好で見ていたが、ミルフィーとして目を開ける様子もない。
「ミルフィア・・大丈夫か?・・い、いやミルフィー?」
その身体には触らず、そっと(怖々)声をかけてみる。
「う・・ん・・・」
「ミルフィア・・・?」
そっと目を開けた彼女は、どうやらミルフィアのままだと判断できた。
「レオンさん・・・わ、私・・・・・・・私・・・」
ゆっくりと上体をあげ、側にいるレオンに気づくとミルフィアはいきなりわっと泣き始めた。
しかもレオンの胸で・・・。
「お・・おい・・・ち、ちょっとこれは・・いや、かなり、やばいんでないか?」
ミルフィアの身体に回すこともためらわれ、両腕を広げたままレオンは焦りを感じていた。
「今ミルフィーに変わったら・・殺されるな、間違いなく・・。」
しかし、ミルフィアを無理に自分の身体から引き離すことも酷のように思われた。確かに何か・・そう尋常ではない何かが、過去彼女の身に起こったのだとレオンは感じていた。

(ええーーい!どうせ殺されるなら!)
しばらくその状態でいたが、ミルフィーに変わる様子もない。レオンは一大決心をして肩を奮わせて泣き続けているミルフィアをそっと両腕で包み込んだ。
(多分・・彼女にとってはミルフィーの代わりくらいなんだろ・・気楽に思っちまえば、どおってことないさ。)


温かい木漏れ日とそよ風に乗った緑の吐息がしばし2人を包んでいた。

それと・・オオカミの死体と血臭・・・・。(おい!)

「ん?そんなものがあったか・・・忘れてたな・・。」
レオンは、ミルフィアを気遣いながら、そっと、呪文でムードぶちこわしの死体と血のりを、周りから消し去った。



☆★ つ づ く ★☆



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