青空に乾杯♪


☆★ <<第21話>> 3人4脚、やばそうな気配 ★☆



 「しかし・・お前の夢ってさっぱりしてるって言うか・・なんて言うか・・・なんだ、この荒涼とした景色は?」
ミルフィーが周囲を見渡しながら呟く。
「オレだって別にこんな荒野を夢見ようと思ったわけじゃないさ。・・オレの猜疑心がそうしたのかもな?」
「リーパオに対してか?」
「多分・・・。」
「で、レイムたちと会うためには、オレのときみたいに夢へ入っていかなきゃいけないってことか?」
「多分・・・」
「多分、多分って・・気のない返事してるなよ!」
つかつかっと未だ座り込んでいる岩陰のレオンに近寄ると、ミルフィーは目の前にしゃがみ込む。
その目の前のミルフィーの顔に、ミルフィアの顔が重なり、レオンは慌てて無意識に視線をそらした。
「なんだよ?」
「い、いや・・べ、別に。」
最初見たミルフィアの幸せそうな表情と、消えていくときの悲しげな表情が脳裏に映り、レオンはなんとなく気まずさを感じていた。
「しかたないんだよな・・・・・」
「え?なんだって?」
ほとんど聞こえないほどのレオンの呟きに、怪訝そうな顔でミルフィーが問う。
「なんでもないって!」
そのミルフィーの問いに、わざとぶっきらぼうに応えると、レオンはすっくと立ち上がる。
今は、ミルフィーと目を合わせたくなかった。

「なんだよ、ったく・・・」
急に立ち上がったレオンにぶつぶつと文句を言いながら、ミルフィーも立ち上がる。
「で、これからどうすりゃいいんだ?寝てオレの夢に入ってきたんだから、また寝ればいいのか?」
「多分そうだろうな。」
「2人同時にでないとまずいのかな?」
「さあ?そこまではオレも分からんが・・・試してみるか。」
「試すってどうやって?」
「つまり、同時に寝ればいいんだよ。スリープの魔法を掛け合うってのはどうだ?」
「あ!な〜る・・それいいかも!」
ぽん!と手を叩いてミルフィーはレオンの意見に賛同する。
「じゃ、さっそくやってみるか。」
再び岩陰に座り込むと、ようやくレオンはミルフィーを見る。
「ああ、善は急げだ!やろうぜ。」
笑みを見せ、ミルフィーはレオンの前に座る。
と、その瞬間ミルフィーの顔に再びミルフィアの笑顔が重なる。悲しみを帯び心細げな、そして、それでもめいっぱいそれを隠そうとしているかのような笑顔が。
(い・・いかん!)
思わず目をつむり、レオンはぶんぶん!と首を振る。
(ま・・まさか・・彼女に惚れちまった?・・なんてこと・・・ないよな・・・?)
「どうしたんだ、レオン?」
「あ・・いや別に。」
(んなことになったら、でもって、それがばれたら・・あ、いや、たとえそうでないとしても・・だ・・・・そう誤解されちまったら・・これ以上やっかいでやばいことないぞ。こいつに殺されかねん・・・。)
深く息を吸うと、再び目を開け、下腹に力を入れて目の前のミルフィーを見る。
「おかしな奴だな。なんだってんだよ?」
呆れ顔のミルフィーに、今度は彼女の顔は重ならなかった。
「い、いや・・ちょっと思い出したことがあってな。・・・ま、まー、それはいいとして、さっそくやってみようぜ。」
「ああ。やろう、やろう。」
どうせ大したことではないだろうと判断し、ミルフィーは軽く答える。
そんなミルフィーの態度に、レオンはほっとして笑顔で言う。
「じゃー、いっせーのーで、かけようぜ。・・・・いっせーのー・・・」



 「・・・さん・・レオンさん・・・・・起きて下さい・・レオンさん・・」
「ん?」
ミルフィアの声にレオンはがばっと上体を起こす。
「きゃっ!」
レオンの顔をのぞき込むようにして起こしていた為、顔をぶつけそうになって慌ててのけぞり、赤くなるミルフィア。
「あ・・す、すまん。・・・って?ミルフィア?・・・だよな?」
「え、ええ・・・」
「ミ、ミルフィーは?」
同じように顔を少し赤く染めながら、ミルフィーの姿を探してレオンは周囲を見渡す。
そして、悲しそうに首を振るミルフィアにレオンの視線は止まる。
「その格好は・・・」
ミルフィーの夢の中とは違っていた。そこにいるミルフィアは、鎧に身を包んだミルフィーと同じ格好をしていた。
「まさか・・・精神が入れ替わった・・とか?」
顔つきはミルフィアの精神を反映してか、幾分いつもより少女らしかった。が、確かにその格好はつい先ほどまでのミルフィーのもの。
「多分・・そうじゃないかと思います。心の中にフィーを感じますもの。」
「ま・す・も・の・・・・」
思わずミルフィアを見つめ、彼女の言葉尻を反復してしまったレオン。
その颯爽とした戦士姿にはまるっきり合わないその言葉。そのあまりにものギャップに。
「な、なにかおかしかったですか?」
「い、いや、別に。」
つい慌てて答えたレオン。
声色も多少高いように感じられ、確かに今表面に出ている精神はミルフィアだと思われた。
(しかしなんで・・・ひょっとして、これってオレだけの夢か?・・)
レオンは自問自答していた。
(ま、まさかオレの願望?!)
まずすぎるぞ!この展開は!とレオンは1人焦る。

「おい!レオン!何1人でぶつくさ言ってるんだ?さっさと探しに行こうぜ!」
「は?」
ミルフィアの視線を避けるように横を見て1人考えていたレオンは、いきなり耳に飛び込んできた聞き慣れた声に驚き、今し方まで確かにミルフィアだった声の主を見る。
「なんだよ?」
そこにあったぶすっとしたその顔は、確かにミルフィー。
「ど、どうなってんだ?」
惚けたような顔でつぶやくレオンの胸ぐらをぐいっと掴み、ミルフィーはいつもよりきつい口調で吐く。
「そんなことオレが知るかよ!いいか!どういうわけか時たまフィアと入れ替わるみたいなんだ。フィアに手をだしたら、どうなるか分かってんだろうな?!」
「て、手なんかだすわけないだろ?だ〜れがお前の妹なんか・・」
「んにぉ〜?そんなに魅力がないってのか?フィアが?」
「べ、別にそうとは言ってないだろ?」
(どう言やいいってんだー?)
レオンは焦っていた。
(だいたい、お前が中にいるってのに・・・)

「ご、ごめんなさい。フィーったらなんて乱暴な・・。」
ぱっと胸ぐらを鷲掴みにしたその手を離し、真っ赤な顔をして謝る目の前の戦士は、今度はミルフィア。
「あ・・・・ああ・・・・べ、別に、」
な、なんだこれは〜?ついてけんぞ!、と思いつつレオンは焦りと混乱に占拠されていた。
「・・いいんだよ。・・い、いつものことだから。」
「フィーったらいつもこんなに失礼なことを?」
「あ、いや、気にしなくていいって。気さくでいい奴だよ。うん。」
申し訳なさそうにするミルフィアに、思わずレオンは手を振って否定する。
「ならいいのですけど。」
「と、とにかくそこらを探してみよう。あ・・事情は・・分かってる?」
「ええ、お仲間を捜すんでしょ?」
「そ、そうだ。じゃー、行くとしようか。」
にこっとその無垢とも言えそうな笑顔を投げかけるミルフィアの肩に、無意識に手を掛けそうになったレオンは、不意に浮かび上がった不機嫌そうなミルフィーの顔に慌てて手を引き、先に立って歩き始めた。



そこは、温かい木漏れ日と緑の絨毯の森の中。
気持ちよさそうに周りを見ながら歩く戦士姿のミルフィアと、景色など目に入らないほど混乱気味のレオン。
この夢は、だれの夢に繋がっているのか・・・レオンは少しでも早く同行者が欲しかった。
(オレがおかしくなっちまわないうちに・・・いや、ミルフィーに殺されちまわないうちに・・か?)
1つの身体に2つの心。しかもどっちがいつ表面化するのか分からない。
(くっそー!リーパオの野郎、面白がって見てるんだろーな!)
そんなレオンの焦りなどに気づくはずもなく、ミルフィアは数年ぶりであり、しかも初めての屋敷外での散歩を心から楽しんでいた。


☆★ つ づ く ★☆



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