青空に乾杯♪


☆★ <<第19話>> 心の迷宮 ★☆



 「ここは・・・・どこだ?」
自室に運ばれたレオンは、ベッドの中で夢を見ていた。
レオンは、一面にもやがかかった広い野原を一人で歩いていた。
「・・・待てよ・・さっきまでオレは・・確か・・・」
う〜〜ん・・と考え込む。
今し方経験したことを必死になって思い出そうとする。


「そ、そうだ!リーパオめ!あのダークユニコーンの夢魔野郎!」
記憶の奥へ追い込まれていたつい先ほどまでのことを、レオンはようやく思い出した。
「オレは、あんな奴の思い通りにゃ、ぜってーならねーぞ!」
レオンは一人憤る。
「やい!どっちから見てるか知らねーが、オレはお前の思い通りの夢なんか見ないぜ!わかったらさっさと目覚めさせろ!おい!聞いてるんだろ?」
もやを睨んでレオンは叫ぶ。
「おい!リーパオ!マクロード!こんなことしてただじゃー済まないからな!」
どかっとその場に座り込むと、レオンは腕を組み、前方をぐぐっと睨み続けた。



「や〜れ、やれ・・・・」
小1時間ほどたったであろうか・・そんなレオンの強情さに負けたというように、周囲にリーパオのつぶやき声が聞こえた。
「お前さんのような強情な人間は初めてじゃよ。」
ほっほっほっという笑い声のあと、リーパオの声が響いた。
「ふん!オレの売りなんだ、強情のとこは。」
「それで損もしてるんでしょう?」
マクロードの声も聞こえてきた。
「たまには・・な。」
そう答えてから、はっとしてレオンは大声で言う。
「じゃーねーって!話を逸らすな!話を!いいからすぐ目を覚まさせろ!他のみんなもだ!」
「いいんですか?目を覚まさせても?」
マクロードの静かな声が響く。
「当たり前だろ?おもちゃにされて面白い奴なんていやしねーよ!」
相変わらずもやで前方はほとんど見えない。が、レオンは、四方に注意を払いながら怒鳴る。
「ふー・・仕方ないようですね、ラーサ?」
「そうじゃな・・・。」
ふっと周りのもやが消え、気づくとレオンは自分がベッドに横になったいることを知った。
がばっと上体を起こしたレオンの視野に、リーパオとマクロードの姿が入る。
「こ・・このペテン師野郎!」
飛びかかろうとしたレオンをマクロードが両手で制止する。
「だましたつもりはないのですが。」
「つ、つもりはないって・・・だましてオレたちをこんなところに連れて来たんだろ?」
苦笑いしてお互いを見つめた後、マクロードは意外なことをレオンに話した。



「あなた方の今の目的である月タンポポは、夢の中からしか行けないのですよ。それでも、だましたとおっしゃるのですか?」
「ゆ、夢の中〜あ?」
疑心暗鬼の目で2人を睨みながら、レオンは思ってもなかったことに目を見張る。
「そうじゃ。」
いつの間にかユニコーンの姿に戻ったリーパオが目を細めて答えた。
「月たんぽぽは、精神世界の中心にある。そこへは夢の中から行くしかないんじゃ。」
「だ、だけど・・夢は夢で・・それに・・・」
(それにさっきの話だと、一生寝かしておくとか言う話は?)と続けようと思ったとき、リーパオの鼻先に真っ黒な炎が現れ、レオンはその言葉を失って、その炎に気をとられた。
「この炎の中心をみなさい。黄色い炎を。」
レオンはその言葉に誘導されるように炎を見つめる。
その黄色い炎は、少しずつ大きくなってきた。
と、リーパオの顔の大きさほどになってとき、そこに山が1つ見えた。
そして、その山の頂上には、月タンポポと思われる花が1輪。

月たんぽぽ


「こ、これが月タンポポか?月タンポポというよりヒマワリと言った方がいいような。つまり・・月ひまわり・・いや、月まわり・・か?」
リーパオたちの話を完全に信用したわけではない。が、思わずレオンはそう言っていた。
「はっはっはっ!そういえばそうですね。どっちかと言えば、ひまわりに似てますね。」
マクロードがうなずきながら笑う。
「そうじゃ。で、精神世界の奥の山頂にあるのじゃ。」
「それならそうとあのとききちんと話してくれりゃいいじゃないか!?」
本当かもしれない、とレオンは感じていた。
「そこは・・ほれ・・あれじゃ・・・」
「まさか・・・楽しくない・・とか?」
「ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉっ!」
リーパオの笑い声が高らかに部屋に響いた。
「ちっ!」
反対に苦虫をつぶしたような顔をしたレオン。
「そうじゃろ?そう教えたらすぐにでもお前さんは夢の中へ入っていく。そしてじゃ、仲間にそのことを伝える。そして、すぐに月タンポポを探し始めるじゃろ?それじゃー、あんまり面白くないんじゃよ。」
「何?夢の中でみんなに会って自分の意志通りに話せるのか?」
はっとしてリーパオを見つめる。
「おおっと・・つい余計なことまで言ってしまったわい。」
リーパオは苦笑いをして口を押さえた。
「お前さんの真剣さにつられてしまったらしいのぉ。ふぉっふぉっふぉっ!」
「そ、それじゃ・・他の人たちは?」
一瞬喜んでしまったが、自分の仲間以外にも眠ってる人がいたと、レオンは思い出す。
「他人は他人。夢を現実ではないと確信し、目覚めたいと思えばいつでも目覚められるんじゃ。じゃが・・中にはそうしたくない者もおる・・。目覚めるか、目覚めないかは・・それぞれが決めること。他人が口出しすることではない。」
「だ、だけど・・・」
落ち着いた口調できっぱりと断言するリーパオに言い返そうと口を開いたとき、暗闇がレオンを吸い込んだ。



「ふぉっふぉっふぉっ!まずは仲間を捜し、そして、現実を思い起こさせなされ。月タンポポ探しはそれからじゃ。仲間の心が1つのものを、つまり月タンポポを見つめたとき、そこまでの道は見えるじゃろう。」
「あ・・お、おい、みんなはどこにいるんだ?」
再び夢の中に入ったレオンの叫びに、リーパオの、そして、マクロードの応えも、なかった。



ただ、さっきまでの濃いもやは消えてない。目の前に広がるのは、風が吹き荒れる荒野。
ともかく、レオンは1歩足を進めた。




☆★ つ づ く ★☆



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