青空に乾杯♪


☆★ <<第9話>> 涼しさ満点? ★☆


 −ピチョン・・・・−
「ひっ!ま・・・また・・・・」
魔物と遭遇と同時に臨戦態勢をとるミルフィーたちの耳に水音が聞こえる。
「・・・出てこなくてもいいって言ったのに。。」
ミルフィーの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。全身に寒気が走るとともに、背後にぼおっと白い影が暗闇からにじみ出る。
「遠慮しないでくださいな、戦士様。」
にこっと笑い呪文を唱え始める幽霊魔導師。
「ぶくっ・・・・」
肩越しに微笑みを投げかけられ、ミルフィーは、泡を吹いてその場にばたっと倒れる。
「あ〜あ・・またかよ〜・・魔法が効かないやつが出てきたらどうすんだ?」
自分も呪文を唱えつつ、レオンがため息をつき呟く。
幽霊魔導師は、それを聞き、少し寂しそうな表情を見せる。
「悪気はないってことはわかってるんだけどな。」
ミルフィーから幽霊に視線を移すレオン。
「あ・・あのぉ・・ぼくだけじゃ・・」
「あ!悪ぃ!」
慌てて加勢するレオンと・・・そして、幽霊魔導師。

「ミルフィー?・・もう大丈夫ですよ。」
戦闘が終わり、幽霊もその姿を消してから、レイミアスがミルフィーをのぞき込む。
「う・・ううん・・・あ、あれ?オレ、またやっちまったのか?」
ミルフィーは頭をぼりぼり掻きながら、照れくさそうな表情で起きあがる。
「またやっちまった、じゃないだろ?ったく・・いい戦士が!」
レオンが少し口をとがらせ、怒ったようにミルフィーを軽く睨む。
「悪い・・どうしても慣れないんだ。」
レオンは、肩をすくめてミルフィーから視線を逸らす。

そうしておかしな旅は続いた。
夜だけの世界。時は過ぎても太陽は昇ってこない。不思議な感覚だった。
「ここらで野宿か?」
「あ。もう少し行けば宿屋があるって、確か幽霊さんが言ってましたよ。」
レイミアスがそう言ったのを聞いただけで、ミルフィーはぞくっと寒気を感じ、思わずレイミアスを見る。
「あ!見えました!きっとあの家ですよ。」
ごまかすため、レイミアスは慌てて遠くに見え始めた1件家を指さす。
「い、家だって?もしかして、この世界で初めて人間に会えるのか?」
ミルフィーがほっとしたようにつぶやく。
「さあ、どうかな?夜だけの世界だから、吸血鬼だったりしてな?」
笑いながらレオンがミルフィーをからかう。」
「幽霊でなきゃいいんだよ。そんなのだったら大丈夫さ!それに」
「それに?」
「吸血鬼ならお城ってのが定番だろ?あんな小さな家にいるわけないよ。」
「ふ〜ん・・じゃー、オオカミ男ってのはありか?」
「あはは。そう来たか。ま、幽霊じゃなきゃいいさ。」
「少しは慣れてほしいんだがな〜・・物理攻撃しか効かない敵だっているんだぞ。」
「じゃー、あいつに出ないよう言い聞かせおいてくれよ。」
「わかりました。じゃー・・」
大まじめな顔をしてにこっと笑うレイミアスにミルフィーは慌てて手を振る。
「ま、待った!そんなこと言うと、出てきちまうって!」
全身に冷や水をかけられたような感じを覚え、ミルフィーはごくん!と唾を飲み込んだ。
「呼びました〜?」
ぼや〜っと女の青白い顔が浮かび上がってくる、と同時にミルフィーは一目散に走り始めた。
「さ・・先行ってるぞ〜〜・・・・」
姿を現した幽霊と共に、みんながあれよあれよと見ている間に、ミルフィーは丘の上の家へと走り込んでいった。

そして・・・
「ぎゃあああああ〜〜〜〜!」
恐怖に染まった叫び声が、あたりに響き渡った。




☆★ つ づ く ★☆



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