青空に乾杯♪


☆★ <<第2話>> 即席パーティー ★☆

 

 「ぬあ〜〜んだっとお〜〜〜?!」
気づいたとき、銀製の鎖でぐるぐる巻きにされ、額には魔除けの護符を貼られていた己の状態に驚き、 そして、その理由を2人から聞いてまたまた精神破壊を引き起こすかと思われるくらいパニック状態で驚愕する魔導師。
「じ、冗談を言うにもほどほどにしておいてくれよ。」
驚愕しながらもまだ半信半疑でミルフィーを睨む。
「だから〜・・さっきから冗談じゃないって言ってるだろ?冗談で済めばそんないいいことないって!」
にらみ返してミルフィーが吐く。
「う・・・そ・・・そういえば・・・」
魔導師には、漠然とはしていたが、そういわれてみれば全く身に覚えがないというわけではなかった。
「そうだ・・・オレのパーティーは・・全滅したんだ・・オレだけ生き残って。その間の記憶はないが・・ひ、ひょっとして・・・・」
それ以上口にするのが恐ろしくなっていた。
(そういえば、はっきりとではないが、戦っていた記憶が、・・)
魔導師は必死の思いで記憶をたぐっていた。
(そうだ!覚えている・・オレは覚えているぞ!確かに戦っていた。しかも・・その相手は・・オレが向かっていった敵の顔は・・仲間たちだ!魔物ではなく・・!)
その記憶にたどり着いた魔導師は一層驚愕した。
(仲間を殺したのはオレか?・・いや、今までだってオレだけ生き残ったことが何度かあった・・それは・・・ひょっとして全部?)
肯定したくない事実。が、それは事実としか言いようがなかった。
「オ、オレは・・・・」
罪悪感と絶望感に打ちのめされた魔導師は、その場で頭を抱えてうずくまる。
蒼白となったその顔は、まるで蝋人形のようだった。

「食え!」
しばらくじっと魔導師を見つめていたミルフィーが、魔導師に焼きたての肉を差し出す。
魔導師はそんなミルフィーを無表情に見つめる。
「いいから、食えって!」
ミルフィーの勢いに押され、おずおずと手を差し出し、まるでスローモーションのようにゆっくりと肉を口にする。
「どうしようもないことだらけさ、この世なんて。」
ごろりと横になりながら、ミルフィーが呟く。
「オレは・・どうするべきなんだ?」
そんなミルフィーをじっと見つめる魔導師。
「どうって・・・そんなことオレが知るわけないだろ?ただ・・」
「ただ?」
ミルフィーは身体を起こし、悲しげな顔をしてじっと自分を見つめている魔導師と視線を合わす。
「その責任を取って死ぬなんてことだけは、考えるなよ。そんなの偽善だ。いや、単なる逃避だ。」
そう言いながら、偉そうなこと言える立場じゃないがな、とミルフィーは思わず苦笑する。
「そうです!大切なのは事実を知ってから、これからの行動です!」
それまで静かに2人の様子を見ていたレイミアスがいきなり割ってはいるように断言する。
「ほら、坊さんもああいってるんだから・・な!」
ミルフィーは苦笑いして魔導師を見る。
「・・・・・」

「そうだな・・逃げちゃいけないんだよな。」
しばらくの沈黙の後、魔導師が自分に言い聞かすように呟いた。
「そうですよ!いつか解決策も見つかりますよ!」
レイミアスが笑顔で元気づける。
「ああ・・そうだな・・。」
弱々しく笑顔を作ってそれに答える魔導師。
「ぼくたちがついてますから!大丈夫!なんとかなりますよ!」
「おい・・『ぼくたち』って・・いつそんなことになったんだ?・・確かに迷宮にはお前と一緒に行ってやると言ったが、だからと言って仲間になったわけじゃないんだぞ?」
「でも、ミルフィーさんがついていれば大丈夫だと思うんですよ。ぼくや他の人ではだめだろうけど。」
「そ・・そうか?」
おだてに乗せられたミルフィーは、頭を掻いて照れ笑いをする。
「そうですよ!ミルフィーさんがついていれば、グールになっても止めれますよ、きっと。・・あ・・・・ご、ごめんなさい。」
魔導師を傷つけてしまったかと思い慌ててレイミアスは謝る。
「いいんだ。ホントのことだからな。気にするなって。」
そんなレイミアスに少し悲しそうに微笑むと、魔導師はミルフィーに真剣な顔を向ける。
「オレからも頼む、ミルフィー。お前とレイミアスがついていてくれれば、なんとかなりそうな気がするんだ。」
「・・・やっぱりこうなるんだな。」
大きくため息をつき、ミルフィーは自分の予想が当たったことに苦笑する。
「やっぱりって?」
きょとんとして自分を見るレイミアスにミルフィーは笑う。
「しょうがないな・・・別にこれと言って目的もないし・・つきあうか。」
「よかった。ミルフィーさんならそうおっしゃって下さると思いました。」
「ったく・・調子がいいんだからな。結局お前が得しただけだろ?戦士だけでなく、これでちゃっかり魔導師も仲間にできたんだ。そうだろ、レイム・・あ、いや・・レイミアス。」
多少皮肉っぽい笑みをみせ、ミルフィーはレイミアスの額を小突く。
「レイムでいいですよ。そう呼ばれてましたから。」
「そっか。」
「そういえば、昨日もぼくをそう呼んでましたよね。ミルフィーさんのお知り合いかなんかですか、そのレイムさんって。」
「『さん』はいらないよ。・・そうだな・・レイムは、昔の知り合いだ。それだけ。」
「ふ〜〜ん。」
そう答えた一瞬、遠い目をしたミルフィーに、何かあるような気もしたが、今はこれ以上立ち入るべきではないと判断し、レイミアスは、話題を変えた。
「で、魔導師さんはなんとおっしゃるのですか?」
「ああ・・オレはレオンっていうんだ。よろしくな。」
「こちらこそよろしく。でもホントによかったです。心強い仲間ができて。」
「しかも雇ったんじゃないから、ただだしな!」
「もう!ミルフィーさんったら!」
『あはははは!』
3人は笑った。不安を吹き飛ばすかのように。

ミルフィー
箱さんからいただきました。ありがとうございました!

☆★ つ づ く ★☆



【前ページへ】 【青空に乾杯♪】Indexへ 【次ページへ】