[パラレル番外編5]

☆★ 銀騎士参上(6) ★☆
-- 決着は? --


 

 「行くわよ、カルロス!」
「いいぞ!」
−ギーーン!−
それから数ヶ月後、ラードとセイタの目の前で、ミルフィーとカルロスの真剣勝負が繰り広げられていた。
「す、すげぇ・・・・・」
2人が放つその闘気により、ビリビリと周囲の空気が、そして大地が振動する。
「す、すごい・・・ミルお姉ちゃん・・・・」
剣のことはまるっきりわからないセイタでも、その気迫を感じ取っていた。

−キン!ガキン!−
銀龍から手渡された銀の剣と金の剣。銀騎士と金騎士の剣を手に、2人はあらん限りの力を振り絞って対峙していた。
そうすることによって、その闘気で眠りについている黄金龍を目覚めさせる為に。
そこは、世界の中心と言われる絶対不可侵の聖地。その大地で2人の手合いは続いていた。

ここへ来るまでの数ヶ月間で、ようやく落ち着きを取り戻したミルフィーがそこにいた。気が付けばそっと見守ってくれているカルロスの優しさにようやく気付いたミルフィー。が、カルロスへの態度は相変わらずである。
そして、カルロスは、シモンの死から立ち直ったミルフィーを素直に喜び、受け入れていた。自分の心はまだ受け入れてはくれていないが、それもそのうちだろう、と例の如く持ち前のアグレシップさで確信(?)を持っている。その自信はどこからくるのだろうと思えるのだが、それがカルロスのカルロスたる所以なのである。
ともかくこうして剣を交えていることにカルロスは満足していた。そこにいるのは確かにミルフィー。いつもの元気でそして恐ろしいほどの腕前の剣士。彼女の剣を受けるその手応えをカルロスは嬉しさと共に感じていた。

−ゴゴゴ・・・−
数十分ほどそれは続いただろうか。2人の闘気による振動に重なるように振動が起き、それは徐々に大きくなってくる。

「黄金龍・・・・」
大地を覆うように空に現れてきた巨大な龍の姿に、ミルフィーとカルロスは剣をひき、そこに立つ。
「銀龍の騎士よ、そして、我が剣を持ちし騎士よ。」
その尊厳に満ちた声に、4人はその場に膝をつく。
「世界はまだ間に合うのか?」
「はい!」

しばらく4人の真剣な瞳を見つめていた黄金龍は、嬉しそうに目を細める。
「ふむ・・・よかろう、我が鎧をそなたに授けよう。」
黄金龍の爪の1つの先に光が集まり始め、球体を形作っていく。
そして人間大になったその光の玉はゆっくりと黄金龍の元を離れるとミルフィーを覆う。
「わあ・・・」
セイタが思わず声をあげる。黄金に輝く鎧を身につけたミルフィーがそこにいた。
「お姉ちゃんカッコいーい!」
「そこなるドワーフの娘よ。」
「あ、はい!?」
ミルフィーに見とれていたセイタは不意に声をかけられ慌てて返事をして黄金龍を見る。
「そなたが持っているペンダントを見せよ。」
「あ、はい。」
セイタは慌てて首からペンダントを外し、高くかかげる。
黄金龍に引き寄せられ、そして再びセイタに返されてそれは、輝きが増したように感じた。
「少年よ。」
「はい。」
ラードが頭を下げ返事をする。
「カギはその娘が握っておる。よいか、しっかり守るのだぞ。」
「はい!」
「行くがよい。そして、我に示せ、世界の未来を。明日への希望を。」

ふっと周囲の景色が変わった。

「あ、あれ?海辺?」
そこは聖地への入る前に上陸した海岸。そこで待っていた龍騎士たちが4人を見つけて駆け寄ってくる。
「いよいよ敵の本拠地だな。」
「そうね。」

ミルフィーはいつも自分に注がれているカルロスの温かい視線を受け、にっこりと微笑む。
「行きましょうか、最終決戦の地へ!」

成龍となったカルロスが龍の泉で出会った仔龍の背に乗り、4人はその地を後にした。


「ミルフィー・・」
「なに、カルロス?」
敵の本拠地、龍騎士も合流し、敵との激しい戦闘の真っ最中、ぐるっと敵に囲まれた中で、ミルフィーとカルロスはぴったりと背カを寄せ敵の動きを警戒していた。
「あと少しでご本尊との対面だが・・」
「ええ。」
「敵もなかなかだ。簡単に対面させてくれそうもない。」
「そうね・・・・」
確かに苦戦していた。多勢に無勢。といってもこちらは龍騎士である。常人とは力が違う。が、相手もその点への配慮は十分してあった。敵兵は痛みを痛みとも感じないように改良された半獣人。その狂気的な攻撃に苦戦を強いられていた。
魔法力も回復剤も尽きかけている。
「これ以上の長期戦は分が悪い。ここらで一気に片づけてしまいたいんだが・・・・その為に協力してくれないか?」
「協力?」
「ああ。」
「それはもちろん構わないけど?」
「よし、それじゃ、約束だぞ。」
「約束?」
「これからオレが言うことに必ず『うん』と言ってくれ。」
「え?なにそれ?」
「でないとその力は出せそうもない。」
「普通じゃ出ないの?」
「残念ながら無理だな。」
「そ、そう・・・分かったわ、約束する。」
全員疲れが目立ってきていた。現状から早期脱却できる方法があるのならそうすべきだと判断したミルフィーは迷わず答える。
「二言はないな?」
「ないわ!」
ふと悪い予感がしたが、ともかくミルフィーは断言し、カルロスはにやっとして続けた。
「では、全て無事解決したら・・」
−キーン!ギン!−
襲いかかってきた集団によって2人は離ればなれになる。

−トン!−
そして、再び2人は背中を合わせる。
「解決したら?」
荒い呼吸で敵を警戒しつつミルフィーは背後のカルロスに聞く。
「・・・お前が欲しい。・・いいだろ?」
「え"?」
予想外すぎるその言葉に、思わずミルフィーは固まる。
−キン!ガツッ!−
「ミルフィー、何やってんだよっ!」
再び敵の攻撃でカルロスとは別れていた。
が、突っ立ったままだったミルフィーをすかさず敵は攻撃し、ちょうど傍に来ていたラードが危機一髪でその攻撃を跳ね返す。
「あ、ご、ごめん・・・」
慌てて頭を切り換え、ミルフィーは群れてくる敵に注意を集中する。
「ミルフィー、返事は?」
(へ、返事って・・・・)
敵によって大きく2人は遮断されたまま、その向こうでカルロスは叫んだ。
「ミルフィー?」
戦いながら叫ぶカルロスの声が辺りに響く。
−ごごご・・・・−
ミルフィーの怒りが静かにわき上がっていた。
(こ、こんなところで・・・こんな時に・・・それでも元(?)プレイボーイなの?ロマンもムードもないじゃないっ?!)
「ミルフィー?」
(あ、足下をみてなんてこと言うのよ?)
−キーーーン−
そこは、陽の光が届かない地中深き洞窟だった。が、ミルフィーの怒りで陽の光が地を裂いて引き寄せられてくる。
(・・・・まったく・・・カルロスの・・・カルロスの・・・ばか!のーたりん!・・すっとこどっこいっ!おたんこなす!卑怯もの〜〜〜〜っ!!)
「ミルフィーっ?!」
倒しても倒しても怒濤のごとく押し寄せる敵にさすがのカルロスも押され気味になっていた。その己を燃え立たせるにはミルフィーの返事が必要だった。


「分かったわよ!・・好きにすれば?!」
やけっぱちとも聞こえたが一応ミルフィーからOKを取ることができ、カルロスは燃える。
「うおおおおおーーー!!」
燃える男は強かった。(笑
そして、怒りでその鎧と剣に陽の光を吸収させたミルフィーもすごかった。
それまでの戦闘も確かに激しいものだったが、それまで以上の激しさとスピードで、瞬く間に敵を倒していく。
「す、すげぇ・・・・もう体力気力とも限界じゃなかったのか?出し惜しみすんなよなー?」
事情の知らないラードたちは2人の戦いぶりに目を見張り、そして、その勢いに彼らもまた疲れを忘れたように勢いを取り戻す。


「ミルフィー・・・」
その勢いに乗って最終目標まで倒したミルフィーらは、ようやくそれぞれの帰途についていた。そこは宿の一室。もちろんカルロスとミルフィー2人だけ。
「1つ思い出したんだけど?」
食事もすみ、部屋に戻ると同時にさっそく約束の履行を迫ろうとしたカルロスに、ミルフィーが思い出したように口を開く。
「何をだ?」
今更撤回はできない、とカルロスは余裕で聞き返す。
「約束は約束よね?」
「ああ、そうだ。」
「じゃ、誓いは?」
「は?」
「あの時、確かにOKは出したけど、本当はその気にはなってない場合って?」
つまりミルフィーの言いたいことは、『その気にならない限り決して手を出さない』というカルロスの誓いのことである。
「ミ、ミルフィー?」
当然カルロスはしまった!それがあった!と焦りを覚える。
「それに、『全て』が解決したら、って言ったわよね?」
「あ、ああ・・・」
「全てってどのあたりまでが全てなのかしら?」
「は?」
「一応闇龍は倒したけど・・・闇の分子は根絶やしってわけじゃないわよね?」
「あ、ああ・・・・」
「あちこち破壊されたままだし、後はジャミンたち龍騎士がするからって言ってくれたけど・・・それって全て解決してないことよね?」
「う・・・・・・・」
こじつけとも考えられたが、事実でもある。カルロスは口ごもっていた。
「ということで・・・」

心の中で勝利のVサインを出し、すっと部屋から出ていこうとしたミルフィーをカルロスはドアの直前で取り押さえ、ドアを背に自分の方を向かせる。
「な、なによ、カルロス?だから約束は・・・」
「愛してる、ミルフィー。」
−ぎくっ・・・−
そのカルロスの態度にミルフィーは焦りを覚える。すっかりスイッチオン?自分の言った言葉などなにも入っていない状態?と緊張感が一気に高まる。
「ミルフィー、なぜそう頑なな態度をとる?オレの気持ちは分かってるだろう?オレは・・お前のためならこの身を底なし沼にも燃えさかる火の中へも沈めよう。」
「・・カルロス・・・」
「確かに卑怯な方法を取った。それが気に入らないのであれば、なかったことにしてもいい。」
「・・・・」
自分の手を押さえているその手をふりほどいて逃げようとしたミルフィーは、その言葉で無意識のうちに力が抜ける。
「だが、あの場合、それが必要だった。お前のためならなんにでもなれた。どんな苦しいことでも苦ではなかった。ミルフィー・・・本当にオレが嫌いなら諦める。が、もしそうでないのなら・・・・」

ふっと部屋の灯りが消えた。タイミングが良かったのか悪かったのか、宿の人がランプの芯の交換を忘れたせいである。早くても夜中まで持つはずのランプがまだ星空になったばかりの時間に消えてしまっていた。


 
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*この話は、『金の涙銀の雫』本編とも関係なく、パラレル金銀ワールドでのお話です・・たぶん(笑*


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*そ〜れから?/^^;

青空#148