☆★ リュシェロドラ冒険記(11)・完 ★☆
* 青空に乾杯♪・もう一つの#61 f^_^;*
-- そしてハッピーエンド --


 

 「ソルジェム・・それは生きとし生ける者の魂。その輝きのことなのです。」
「え?そ、それでは・・・泥人形に命を宿らせる奇跡の宝玉ということは?」
そこは、天空の城の奥神殿。人間の大陸への侵攻を計る龍人と平和を望む龍人たちとの諍いがおさまった後、ミルフィーたちは、ようやく目的の天空城にやってきていた。そこは、龍人の発祥の場。悠久の昔、許されることのない恋に落ちた神龍と女神が、逃げ落ちた場所。
龍人の祖となった彼らは、神の座を追われたせいで短くなった命を遠い昔すでに終えていた。が、彼らの子孫がそこに細々と暮らしていた。
遠い昔、他の龍族と出会ったその2人の子孫が現在の龍人の大陸へと下りたのだということだった。


あまり広くないその天空の大陸。が、ほとんどのものが広さと自由を求めてそこから下りた後、残ったわずかばかりの住人は結界を張り孤立していたため、今では1人の人間と1人の龍人だけとなっていた。そう、ここでは、生まれ出る子供は、人間か龍、どちらかの身体を持っていた。

「血縁内での婚姻を繰り返していたせいでしょうか、ここでの子孫はいつしか性を持たなくなってしまいました。」
「え?それって?」
静寂さに包まれた奥神殿、そこでミルフィーたちは、聖堂で1つのテーブルを囲んでラフィータと名乗った巫女らしい女性と話していた。
「それでもここは存続していかなくてはなりません。眼下の地上にいる同胞たちの為に。」
「下の龍人たちのため?」
「そうです、龍人たちの大陸を守っているのはここから張り巡らしている結界なのです。」
「ここから?」
「神龍と女神の血を濃く引く私たちでなければできないのです。」
「でも、結界をなくして人間と仲良くしようとは思わなかったのですか?」
ミルフィアの言葉に、ラフィータは、悲しそうに首を振った。
「これは罰なのです。道ならぬ恋に落ちたばかりでなく、龍人の祖を作ってしまった2人にかせられた・・・消えることのない罪に対しての罰・・・。」
「でも、あなたたちはその2人じゃないのに?」
そう言ったミルフィアに悲しげな笑顔をみせ、ラフィータは立ち上がり、窓の外へと視線を流す。

しばらく沈黙に支配されていた。そして、ようやくラフィータが口を開く。ゆっくりと、一言一言かみしめるように。
「いいのです。覚悟はできてました。彼と天界を出るときに。」
「え?」
「先祖返り?いえ・・生まれ変わり・・転生なのでしょう。記憶は初めからあったわけではありませんでした。」
ミルフィーたちは、じっと身じろぎもせず、ラフィータを見つめ、その話に耳を傾けていた。
「どのくらい昔のことでしょう・・・性を持たずにこの地に生を受けた最初の赤ん坊は・・・彼でした。」
「え?」
「そして、次は、私・・・・。その後、この地にいた者に新しい生命は芽吹かなかった・・・。」
「ど、どういうこと?」

「・・・事情は分かりました。今少しで我欲の為、お互いを傷つけ合って滅びてしまうところだった龍人たちを救ってくださったお礼として1度だけ、その人間のみという約束で入魂の儀式を行いましょう。」
ミルフィアの質問には答えず、ラフィータは話題を変えた。
「入魂の・・儀式?」
窓の外からミルフィーたちへと視線を移したラフィータは、やさしい笑顔を見せた。
「性を持たない私たち2人が、片方を亡くしたときに執り行う儀式です。」
「亡くしたときに?」
「その方の姿、つまり顔や体格などは分かりますか?」
「ここでしかできないのですか?」
ミルフィアの言葉にラフィータはこくんと首を縦に振って応えた。
「あ・・それじゃ・・ティナを連れてこないと。」
「聖なる土で生前の姿を象った土人形に、その方の魂を入れることで、再びこの世の住人となり得るのです。」
「聖なる土。」
「この地で亡くなった龍人たちの墓場の土です。」
墓場と聞き、ミルフィーたちは一瞬びくっと身を震わせた。
「大丈夫です。アンデッドというわけではありません。」
にこっと笑ったラフィータの笑顔には、彼女もそうなのだと語っていた。

そして、その魂を内に宿し、無事人間として蘇ったキートと共に、一行は帰路についた。天空の城の、そして、そこでの事は彼らだけの秘密にするということと、今後何があっても二度と天空の地には来ないという約束をして。
勿論、来られないようにラフィータは、それまで以上に幾重にも結界を張って立ち入ることができないようにした。それは訪問者と共についてくる外気を懸念してのことでもあった。長い間の結界の中にあるそこは、ほぼ無菌状態。ラフィータら2人にとっては、命にかかわる事態にならないとも限らないからである。
今回のミルフィーたちの訪問時には、彼らの行動を知っていた為、特別に配慮したのである。彼らの通った道は全て結界を貼り、帰った後、完全に空気を浄化するまでラフィータのみその結界内で過ごしたのである。幸い、ラフィータにはその後も病気などはみられなかった。


「さー、行ってみよーかーー!!」
身分が違うと身をひこうとするレイムを糾弾(ミルフィアに関して)、説得し、ミルフィアと共にゴーガナスに帰らせ、ティナとキートも故郷へ帰った。
まだ若いから、と、時がきたら結婚式の連絡はくれと頼み、ミルフィーは、レオンとレイミアスと共に、再びトムート村へと来ていた。

「今日はこれといった依頼もないんだ。転移トラップにでもかかるとちょうどいいかもな?」
未知の世界には行きたくても行けないが、聖魔の塔からならそれは可能だった。
そして、帰りは、レオンがいれば、ミリアを呼んでいつでも帰ることができた。
時には、1人だけトラップにかかって飛ばされることもあったが、そこはレイミアスの法術で、ミルフィーの気と転移の瞬間に流れた空間の軌道を辿って、そのうちには見つけてくれた。


これからは純粋に冒険を楽しめる!
ミルフィーの瞳は、青空に輝く太陽のように、輝いていた。

 
*** The End *** 


え〜〜・・いつまでもダラダラと続けていても呆れられる一方なのでは、と思い、アドベンチャーに引き続き、これもいきなりですが、[完]とさせていただきました。

また・・・こぼれ話的に書く・・・かもしれません。あと、ミルフィーの冒険談とか。/^^;
長かった青空に、最後までおつきあい下さり本当にありがとうございました。

心からの感謝を申し上げます、と共に、これからもどうかよろしくお願いいたします。


尚、このときは?この件はどうなった?など、リクエスト、お請けいたします。
展開の希望とかきっかけ等もおっしゃってくだされば、本編とまるっきり違った展開ものでもOKです。
すぐ書けるかどうかわかりませんが、リクエストがあると嬉しいので、思いつき次第書かせていただきます。
<m(_ _)m>葛葉

 


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