☆★ リュシェロドラ冒険記(3ー1) ★☆
* 青空に乾杯♪・もう一つの#53 ミルフィー兄のお話ですf^_^;*
 -- いざ、未知なる土地へ! --


 

 「フィー・・・本当に行ってしまうの?」
「ああ、大丈夫。絶対ソルジェムを手に入れて帰ってくるから。」
「でも・・・・・」
「相変わらず心配性だな、フィアは。大丈夫だって!」
「フィー・・・・・」
ゴーガナスへ無事送り届け、抱き合って別れを惜しんでいるミルフィーとミルフィアを、レオンとレイミアスは呆れ顔で見つめていた。

「ホントに兄妹っていうより、恋人ですね。」
「ああ・・・そうだな。」
こそこそと二人は噂話をしていた。
「ミルフィアに恋人ができた時が・・・みものだな。」
「というより、その前に、どんな男も近寄らせないんじゃないですか?」
「そうだな。とするとだな〜・・・ミルフィアは一生一人?」
「う〜ん・・それでは彼女がかわいそうですよ。」
「だけど今のあの状況じゃ、ミルフィアも相当ブラコンだよな?」
「そうですね・・・。」
「とすると、ミルフィアに惚れた奴は・・・彼女からはミルフィーの影を消し、尚かつミルフィーを納得さなきゃならないってわけだ。・・・ミルフィーを納得させる方法は・・やっぱり剣か?」
「でしょうねー。誠実さと剣の腕ってところでしょうか?・・あとは、ミルフィア自身の気持ち。」
「そうだよな・・・・。だけどそれって、誰も手が出せないんじゃないか?」
「・・・かもしれませんね・・・・」
ミルフィアを擁護する鉄壁の要塞、なんとなくそんなイメージが二人の脳裏に浮かんだ。

ハコさんからいただいたミルフィアです。
いつもありがとうございます。 m(_ _)m


「じゃ、ティナ、フィアの事はよろしく。何かあったらお師匠様に相談するように。」
「はい。・・でも・・・・」
「大丈夫。必ず手にして帰ってくるよ。」
キートの為にそんな危険な事はせず、みんなで国で幸せに暮らせばというティナの言葉には嬉しく思ったミルフィーだが、それでは、自分の気持ちが収まらなかった。それに、一度冒険に病みつきになったミルフィーには、平穏な日々は退屈すぎる。たとえ傍にミルフィアがいたとしても。それにミルフィーは死んだことにしてある。こうして王宮内にいることも誰も知らない。
勿論、リュシェロドラ行きのことはレオンもレイミアスも同じ考えだった。3人はお互いの覚悟を確認するとゴーガナスを後にし、大陸再南下にある港町から船で出発した。何よりも冒険が好きで、それにとりつかれている彼らが行かないわけはなかった。・・・もしかすると、キートの件はそのおまけか口実なのかもしれない。

とにかく、彼らは船の立ち寄る港町で情報を聞き込みつつ、ひたすら海上を南下していった。大陸間用のその貿易船は、これ以上大きな帆船は世界中探してもないだろうと言われている大きさである。ミルフィーは初めての船旅を満喫していた。

「どうだ、ミルフィー、身体の調子は?」
「ああ、ようやく思い通りについてきてくれるようになった。」
「そうか。まーそうだろうな、いくらどう動けばいいってわかっていても、今までの身体と違うんだからな。」
「そうなんだ。神経の伝達が遅いっていうか・・・身体が重いっていうか、そんな感じだったんだけど、ようやくそれもなくなってきた。」
船の甲板でミルフィーは、自分の身体を鍛えていた。キートもいつか返すことを予想し、羊飼いであるのに、剣や武術を習ってくれてはいたが、ミルフィーが積んできた修行とはかなりの差があった。それでも、ある程度鍛えられていた自分のその身体は、よく動いてくれた。そのおかげでミルフィアの身体の中に入っていた頃とさほど違わない状態にするのにあまり期間は必要としなかった。
「前の攻撃に重量が加わったって感じだな。やはり男の身体ってことか?」
「みたいだな。いかにもこう、動いてる、力が沸き立ってくるって感じで・・・。」
「嬉しそうだな。」
レオンはそんなミルフィーを自分の事のように嬉しく感じていた。
「みんなのおかげさ。」
「何水くさい事言ってんだよ?!お前らしくない。」
はははははっ!と明るく笑いあう。
「ところで、レイムは?」
「あ?・・・・そういえばまた姿が見えないな。またげろしてんのかな?」
「大丈夫かな、レイム?」
レオンの言葉に、心配になったミルフィーは、船尾の方へレイミアスを探しに行く。


「やっぱりここだったのか、レイム。」
その船尾でレイムは顔を手すりからのり出すようにして吐いていた。
「大丈夫か?そんなの回復魔法で治るんじゃないのか?」
「だから、常に言ってるでしょう?こういった事は魔法に頼らない方がいいんですよ。ごく普通に身体が慣れるのが、一ば・・・う・・・・・・・」
青い顔のまま何とか話していたレイミアスは、再び海へと顔を向ける。
「自然が一番ってのは分かるけどさ・・・見てる方が心配になるって。」
嘔吐しているレイミアスの背中を軽くさすってミルフィーは苦笑いする。
「大丈夫です、そのうち慣れますよ。」
「うーーん・・・・船酔いの薬は切れたって船長言ってたしなー・・・・」
ミルフィーもレオンも大丈夫だった。が、レイミアスは乗った数十分後から船酔いに苦しんでいた。その船旅もかれこれ1ヶ月近く続いているというのに、まだ慣れない。
「だいたいミルフィーたちがおかしいんですよ?」
「そっか?」
船の揺れよりもっと大きくミルフィーは甲板で動いていた。目の前に敵を想定し、剣を振るいながら飛び跳ねている。着地するときが揺れで不安定になるのだが、ミルフィーはこの方がかなり訓練になるとかいってかえって喜んでいた。
そしてレオンは・・・ゆったりと船の揺れに身を任しているといった感じだった。
「船の揺れに慣れる魔法ってないのか?」
「あったら苦労しませんよ・・。」
真っ青になったまま、レイミアスが小さく叫んでいた。
「そんな近くばかり見てるからいけないんだぞ?もっとずっと遠くの地平線でも見るようにして・・」
「分かってますって・・・・でも、遠くを見て吐くわけには・・・うっ・・・・」
それももっともだと言えた。すぐ下の泡立つ波を見ていては酔いも酷くなると思ったが、遠くを見て吐くこともできない。
「ぼくは大丈夫ですから・・・ミルフィーは向こうで修行の続きでもしていてください。」
「あ、ああ・・・だけど、あまり酷いようなら回復魔法でもかけた方がいいんじゃないか?・・・それじゃ食事もとれないだろ?」
「・・・・・」
黙っているレイミアスに、ミルフィーは肩をすくめると、甲板の広いところへと向かった。
「・・・・回復魔法ならもう何度もかけてるんですよ・・・。」
ミルフィーが立ち去った後、レイミアスは小声で呟いていた。
(でも、酔って弱ってる状態でかけるものだから、ますます精神力を消耗して・・・
酔いがなくなるのもしばらくの間だけで・・・またすぐ・・・うっ・・・・)
レイミアスは、つくづく酔わないミルフィーとレオンが恨めしいと思った。

レイミアスがその船の揺れにようやく慣れた頃、ミルフィーたちは、大型帆船を下り、その大陸で最も南にある漁師町へと陸伝いに移動し、小舟で島々を渡り、そして、これ以上南には国どころか島もない、と言われる最南端まできていた。


「で、ここからどうするんでしょう?」
激しく波立つ海を見つめて3人は頭を抱えていた。
「本当にそんな国があるんでしょうか?」
「あるかないか、食料をしっかり積んで、行ってみるしかないだろ?」
「・・・・また船ですか?」
「それしか方法はないだろ?」
小舟の揺れはまた商船の時とは違っていた。慣れたと思ったレイミアスだが、小さな船の揺れはまたしても、レイミアスを苦しめていた。
「・・・しかも、ますます海は荒くなっているようですし・・・」
今更帰る事もできない。レイミアスは同行してきたことを後悔していた。


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