「久しぶりだな。」
「そうね、カルロス。やっぱり私はこういった方のがいいわ。」
「そうだな。神殿で巫女してるより、その方が似合ってる。」
「相変わらず跳ねっ返りのじゃじゃ馬って言いたいの?」
「いや、ほれぼれするような剣士さ。女性としてもだが・・。」
「カルロスだって。」
「そうか?」
「そうよ。」
『は〜〜〜・・・・・・』
そこは聖魔の塔。魔物と戦闘中だというのに2人の世界に入っているカルロスとミルフィーに、さすがの魔物も毒気を抜かれ、というか、あきれ果ててため息をついていた。
『それに・・・向かっていきゃ、間違いなくおだぶつだぜ?』
『え〜〜い!やめた!やめた!オレも彼女つ〜〜くろっと!』
「え?」
周りを取り囲んでいた魔物が一瞬にしていなくなり、ミルフィーとカルロスは驚いて周りを見回す。
「どうしちゃったのかしら?」
「ミルフィーの剣に恐れをなして逃げて行ったんだろ?」
「そう?」
「ああ。」
「カルロスの剣にでしょ?」
「ん?そうだな・・・・じゃー、2人の剣にということで・・・」
「・・・ふふっ・・そうね。」
「あ・・でも、よかったの、カルロス?」
「何がだ?」
「私はフィアに巫女を譲ったからいいけど、あなたは神殿の守護騎士の長だったでしょ?」
「ああ、それか・・・長と言っても平和なんだ。特にこれといってすることもないし・・・守護騎士はオレ以外にもいるんだからな。」
「そう言われればそうだけど・・・でも、フィアがよく許可したわね?お父さんっ子なのに。」
「今じゃすっかりオレじゃなく、レイムだしな・・・それに熱望している妹の為だから・・。」
「え?」
小声で言ったカルロスの言葉が聞き取れず、ミルフィーは聞き返す。
「いや・・そんなの決まってるだろ?フィアだってわかってくれている。」
「何を?」
剣を鞘に納め、その言葉の意味が分からず不思議そうな顔をしているミルフィーの頬にカルロスはそっと手を添える。
「オレが・・・誰の為でもない・・・ミルフィー、お前の・・・・お前だけの為の守護騎士だってことをさ。」
「・・・カルロス・・・・・・」
「どこへでもどこまででも着いていく。オレは・・・お前を守る為にいるんだ。・・お前の横がオレのいる場所だ。」
「・・あなた・・・」
「ミルフィー・・・・」
『ま〜だやってるよ、あのお二人さん。すきをついて襲っちゃおーか?』
『やめとけ、やめとけ!人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ!って言うだろ?・・・馬はいないが、あいつらの腕は確かなんだからな・・・。無防備にみえて、その実そうじゃないんだぞ?』
『そうだよなー。・・・だいたい守護騎士なんて必要ないだろ、あの女!?あの腕でどう守り手が必要だってんだ?!』
『だよなー・・・。』
『オレたちって・・最強の魔物じゃなかったのか?』
『・・・・・向こうが・・・人間じゃねーんだよ・・・きっと・・・・・。』
話していた魔物らの全身を恐怖が駆けめぐる。
−ぞぞ〜〜〜〜〜・・・−
「でも、最近塔の魔物って減った気がしない?」
「そう言われてみればそうだな。どうだ、この際最上階まで一気に行ってみては?」
「そうね!そうしましょうか?」
「ああ、一つ競争といくか?」
「どれだけ倒せるか?」
「それもいいな。」
「いいわよ、負けないから。」
「負けた方は当分勝った方の言うことをきくってのはどうだ?」
「え?」
「自信ないのか?」
「ま、まさか!カルロスこそ?」
意味深な笑みを浮かべて言ったカルロスに、ミルフィーは思わずぎくっとしながら、彼女もまた自分自身に対する自信から笑みを返す。
「忘れるなよ。」
その笑みの中にあるカルロスの思惑などミルフィーには、手に取るように分かっていた。
(・・・たまには喜ばせてあげるべきかしら?)
そんな考えも浮かんだが、そんなことをしたらどこまでカルロスのわがままが増長するかわからなかった。女としては嬉しいような気もしたが・・。
ともかく、戦い始めればそんな考えもどこへやら。ミルフィーは進む、群がる魔物をなぎ倒して。そして、またカルロスもそんなミルフィーを見るのが本当に嬉しそうに、そして、自分自身もまた戦闘を楽しんでいるかのように、彼女の横で剣を振るっていた。
『ちょっと待てい!ここは・・・ここは、お前たちの娯楽場じゃないんだぞ?オレたちのメンツはどうしてくれんだよっ!!ここはなーっ・・・泣く子も黙る聖魔の塔・・・屈強な戦士も後込みすると言われる最強で、最恐の魔物の住む塔なんだぞ〜〜〜〜?!・・・そ、それを・・・それを・・・・・・・・・』
塔の奥から魔物の咆吼(嘆き?)が聞こえた。
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