☆★ その105 ミリアとジル ★☆


 「ぷっ・・・・う、嘘だろ〜?」
「本当よ、レオン・パパ!」
カルロスの故郷での出来事をミリアはレオンに話していた。
「ホントにか?・・・・い、いや・・・お姫様と王子様が逆なんじゃ・・・・?」
「でしょぉ〜?ホントにカルロスったら、だらしないんだからっ!」
「ま、まーな・・・これでますますミルフィーに頭が上がらなくなるな・・・。うはははは・・・」
レオンは笑い転げていた。
「い、痛ぇ・・・・は、腹痛ぇ〜〜・・・・・」
「もうー!笑い過ぎよ、レオン。」
「そりゃそうだが・・・笑えて・・・・わはは・・・リーシャンだってそう思うだろ?」
「そりゃ、そう思うけど・・・。」
「でも、ミルフィー偉いわ。」
「そうだよな。王子様奪回だもんな・・・黄金の剣士だもんな。わはは。」
レオンはまだ笑っていた。
「私だったら・・・隣の女と一緒に殺しちゃうかも。」
「へ?」
レオンの笑いは止まった。
「リ、リーシャン?」
「だってそうでしょ?いくらベールをしてるからって・・・背格好が似てたって・・すぐ隣にいるのよ?雰囲気とか何か・・そう、以心伝心?・・・そんなもので分かってくれてもいいと思うわ。」
「あ・・・・そ、そうだよな。うん!そうだ!」
「レオンなら・・・・分かってくれるわよね、私なのかそうじゃないのか?」
レオンの顔の真正面で、空中停止し、期待した輝きで見つめるリーシャンに、レオンはどきっとしながら答える。
「あ、当たり前だろ?例えリーシャンに化けていたとしても、本物なのかどうかなんて、すぐわかるさ。」
「ふ〜〜ん・・・・」
「え?」
目の前にもう一人リーシャンが現れ、目が点になったレオンの顔から血の気が失せていく。
「じゃー、どっち?」
「え、え〜と・・・そりゃ、最初から話していたこっち・・・あ、いや・・・裏をかくという手もあるし・・・あ、・・えっと・・・・」
レオンは焦っていた。
「ねー、どっち?」
しばらく考えていたレオンは、2人を手のひらに乗せ、じっと見比べた。
「ん!わかった!」
「どっち?」
「オレが分かると信じていてくれる方。」
「え?」
「何それ〜?そんなんあり?」
「ありだ。」
レオンは、「え?」と短く言った妖精に微笑む。
「だろ?」
「え、ええ。」
頬を染めるリーシャンに、レオンはほっとして胸をなで下ろしていた。
「どうして?」
ぼん!といつもの姿に戻ると、ミリアは聞く。
「『そんなんあり?』なんて口をきくのはミリアに決まってるじゃないか?」
「あーっ!・・卑怯よ!レオン・パパ!」
「え?それで判断したの?」
「あ・・・い、いや、そうじゃなくても分かったさ。いや、ホント!」
焦ったように言い訳するレオンに、リーシャは軽く笑う。
「ふふっ・・・」
「はははっ」
ごまかし笑いを返し、なんとか収まったとレオンはほっとする。

「で、わざわざそんなこと話に来たんじゃないだろ?」
「あ・・・・・」
突然ミリアはもじもじする。
「なんだ?」
「あ、あのね・・・・・実は・・・」
「なんだ?ミリアらしくない?どうしたんだ?」
「あのね・・・え、え〜っと・・・ジルっ!?いいわよ。」
「失礼します。」
パタンと静かにドアを開けて入ってきた長身の男に、レオンとリーシャンは呆気にとられる。
雰囲気がレオンに似てる、とリーシャンは一目見てそう思った。
「ジルっていうの。昔カルロスに助けられたんですって。」
「は?」
「だからね・・・あの、私たち付き合ってるの。」
「付き合ってるって・・・おい・・ミ、ミリア?」
目を丸くしながら、レオンは自分の耳を疑っていた。
「あ、あの・・・初めまして。ジルと申します。ミリアにはいろいろ世話になって・・・それから・・・」
つん!と脇をつつかれ、ジルは大きく深呼吸すると言った。
「カルロス様とミルフィー様のように、私たちもいずれ共に暮らせたら、と思っております。・・よ、よろしくお願いします!」
深々とお辞儀をしたジルに、レオンは面食らっていた。

「あ、ああ・・・そりゃいいが・・・・だけどなんでカルロスとミルフィーなんだ?」
しばらくしてからレオンが笑いながら言う。
「オレとリーシャンじゃいけないのか?」
「あ・・・も、申し訳ございません。カルロス様のことは子供の頃からよく存じておりますし・・そ、それと今回のことで、ミルフィー様には心底感服しまして・・。」
「ふ〜〜ん・・・・でも、ちょっと・・」
「ちょっと、な〜に、レオン・パパ?」
「いや・・・べつに・・・・」
勢いのいい、いや、よすぎるミリアの相手としては、優しすぎるというか気弱すぎるような気がしたレオンは、いまいち不安を覚えていた。
「ま、いいか・・本人がいいのが一番だ!」
が、それとは反対に、リーシャンは、自分たちにそっくりだと思っていた。
おどおどしたところは・・・昔のレオンのようで、ジルを選んでくれたことが、なんとなく嬉しかった。今はそうでも、時が経てばきっとレオンのような素敵で頼りがいのある人になる、と彼女は感じていた。

「だけど、おもしろいな・・・よし!今度ミルフィーんとこ行ったらカルロスをからかってやろう。」
面白そうに言うレオンをリーシャンは嬉しそうに見つめていた。シュロの木ももうじき人の大きさまで成長する。そうしたら・・・とリーシャンの心は弾んでいた。


上のバナーと共に箱さんからいただいたリーシャンです。
か、かわいい・・・・(^-^)
いつもありがとうございます!



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