夢つむぎ

その4・地下墓地



 再びあたしたちは、辛気くさい地下室に下りた。薄暗いその地下室は結構入り組んでいる。あたしたちは入り口から左の壁伝いにぐるっと進んでいった。
どのくらい進んだだろう・・ゾンビやなめくじの親分のようなモンスターがひっきりなしに襲ってきて時間が長く感じるわりにあまり進めれない。
真っ暗な小部屋はどこも似たような造りだし、白骨で埋まっている。それでも何かめぼしき物でもあるといけない。あたしたちは辛抱強く隅々まで調べて回っていた。と、その部屋に入った途端、暗がりの中、笑い声が響き渡った。
「誰だ?」
「タルシス様を倒したと思っているのか?無駄だ、黄泉の国との契約はまだ残っている。あの方は何度であろうとも甦る。」
声の主を見つけようと目をこらえて部屋中を見渡す。
「ははははは!」
声は面白がっているようだ。
「タルシス様がいる限り、お前たちは堂々巡りを続けるより他ないのだよ。諦めろ。ここより立ち去れ。」
あざ笑うかのような声はやがて遠くに去り、闇の中に消えた。辺りは再び静まり返る。
ふんっだ!はいそうですかと簡単に引き下がるヒルダ様じゃないよってんだ!だいたいだよ、勝手に言うだけ言って、はいさよなら、なんて卑怯じゃないかい?こっちの返事を聞いてからさよならするのが礼儀ってもんじゃないのかね?それにだよ、あれでタコ入道が死んだなんて思う方がおかしいってもんじゃないか?!あの消え方、あれは絶対何か企んでる風だよ。独断で決めないでほしいもんさね、全く!こんなんで脅してるつもりかね?ろくな下僕じゃないね、ほんとにさ!
まぁ、消えちまった相手に文句も言えないし、そんな事を思いながらあたしはみんなの後をついていった。

結局ぐるっと回って城の1階へ出てしまった。上への階段に続く扉も一方通行だったってわけ。おかげで、またしても最初の階段から出直さなくちゃならなくなっちまった。でも上への階段もあるってことも確認できたわけだし、結果としちゃいいんじゃないかい?

で、後残るは、南側の1部屋と扉が開かなかった小部屋、そして、真ん中に位置する結構広い部屋ってんで、まず、南側の部屋に入った。
−−ギギギ・・−−
扉を開けると薄暗いその部屋の真ん中辺りに1人の男が座っているのが見えた。若いのか年寄りなのかも分からない程その顔には生気がなく、手には土笛が固く握られていた。彼はあたしたち全員をゆっくりと見渡すと悲しそうに言った。
「お前たちではこの笛を吹くことはできまいな。」
下をうつむいたままそれきり何も言おうともしない。
「失礼な野郎だぜ。まぁ、とりたてて害もなさそうだしな。ほっておこうぜ。」
その部屋には他には何もなく、あたしたちは真ん中にある部屋に向かった。

「面白くなりそうだぜ。」
ランディが扉に何か書いてあるのを見てにやっと口元をほころばせた。
「何?何て書いてあるんだい?」
そこにはこう書いてあった。
『ザムハンの偉大なる四の守護の墓 王家の血の元にいつしか再び甦らん』
「ふ〜ん・・・面白そうだね。」

重いその扉を開けると、そこは巨大な石室のように見受けられた。4つの棺が東西南北に納められている。まず入った所、つまり南には孔雀の紋章が描かれている棺が。東には鷲の紋章の描かれたもの。北には獅子の紋章が描かれたもの。そして、西には子羊の紋章が描かれたものがあった。が、どれも中は空だ。
「チェッ・・折角四の守護者と戦えると思ってはりきってたのに!」
ランディはいかにも不満そうだ。
「でも、棺がみんな空って事は、みんな目覚めたって事かい?」
「多分そうでしょう。城の1階の壁画と同じですしね。あの壁画が消えた時、彼らが目覚めたと思っていいでしょう。」
ルオンが目を細めて言う。なぜか嬉しそうに見えるのはあたしだけなんだろうか?「後は龍って事か?天井にあった奴。」
「そう言えばそうだね。ここには龍のはないね。」
ランディに言われてあたしたちはそこいらに目を配る。が、この部屋にはなさそうだった。
「んじゃ、後はあの開かなかった小部屋ってとこか・・ヒルダ、なんとか開けれないのか?」
「駄目だね、ありゃーどうみても何かの呪縛で開かないんだ。」
「ひょっとして、タルシスの・・とか?」
「まぁそう見るのが妥当なんじゃないかい?言ってたろ?どこかの部屋で不気味な声が。タコ入道がいる限りあたしたちは堂々巡りするしかない、とかなんとかさ。」「タコ入道って、もしかしたらタルシスの事か?」
「ああ、そうだよ。」
「ぶっ・・・あははははっ!なかなかナイスだぜ、ヒルダ!タコ入道・・・ぴったしだ!」
「・・・・」
これほど受けるとは思ってもいなかったあたしは、半ば笑いころげるランディに呆れていた。
「で、どうするんです?そのタコ入道を倒さなければならないわけですが、どこにいるんです?」
ルオンの冷め切った声が、それでもあたしたちに合わせてくれてるのがなんとも言えないけど、ランディの笑いを遮る。
「そ、そうだ、その通りだ。確か今までそれらしき通路はなかったよな?」
「そうだね。・・もう一度調べ直すより手がないだろうね。」

見落としがあったかもしれない。あたしたちは、もう一度墓地を調べ直すことにした。



**続く**


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