● 表裏合体リプレイ?はちゃめちゃパロディーストーリー ●

ぼくら座夢繁探検隊】
==夢のまた夢物語==

〜なぜか幼稚園児と小1・・そして、犬!?〜
  
  

 

● その9・セラクの嘆き 

 「あ・・・ねーねー、ひいるのレベルいくつになったの?」
「えっとねー・・あたしはねー・・・」
町に戻った彼らは、久しぶりにゆっくりとおしゃべりを楽しみながら過ごしていた。
カードを見せ合い、そこに書かれている自分のステータスを見比べ合ったりしながら。もちろん宿でシャワーを浴びさっぱりしてからである。
「あたしも魔法使いたかったなー。」
「でも、ひいるの弓と罠の技もすごいんじゃない?弓を引き絞ってる時って、カッコいいわよー。」
「そ、そう?」
「あたしなんて、精神力使いきっちゃうと、もう何にもできないんだもん。攻撃力ないし。」
「でも、その分、輪津が頑張ってくれるじゃない?」
「まー・・・ね。」
横に座っている大型犬、輪津の頭を撫でながら絵里は笑った。
「でも、いつ帰れるんだろ?お城の謎を解くと帰れるってきいたけど・・・まだまだよね?」
「うん・・・お父さんもお母さんも心配してるかな?」
「大丈夫さ。きっと時間なんて止まってるんだぜ?」
「え?」
2人は歩み寄ってくる蘭に注目した。
「こういう話ってさー、よくあるだろ?帰ってみたら、時間がぜんぜんたってなかったとか、異世界では数週間だったのに帰ったら数十分しかたってなかったって。」
「それだといいんだけど。」
「そうよね。それなら誰も心配しないし。」
−シャラ−
「これ、ひいるにあげる。」
「え?・・・これ?」
ひいるは蘭がテーブルに置いた銀のネックレスを手にとって見た。
「どうしたの、これ?こんなの宝箱では見つけなかったわよね?」
「うん。もらったんだ。」
「もらった?」
「うん。お城に入ってしまったらしい恋人を探して欲しいってさっき門のところで頼まれてさ。」
「頼まれた?誰に?」
「きれいなおねーさんに。」
「きれいなおねーさん?」
「うん。ティナって言ってたけど、なんか信じてる神様のせいだとかなんだとかで、お城へは入れないんだって。はじかれてちゃって。」
「ふ〜〜ん・・・で、これ、もらったの?」
「うん。」
「いいの?これ、純銀製じゃない?」
「いいんだろ?くれるっておねーさんから言ったんだからさ。」
「他にはなかったの?」
「他にはって・・・」
口を尖らせて少しきつい口調で言った絵里に蘭はちょっとびくつく。
「こっちからそんな事言えないだろ?」
「だって、ひいるにだけだなんて卑怯よ!」
「だ・・だってさ・・・・・」
「おーーい!」
どうしようかとあたふたしている蘭。そこへ吏琥が走ってきた。
「何かあった、吏琥?」
蘭はこれで話題が変わると、ほっとしながら少し慌てて吏琥に話しかけた。
「闇屋のおじさんが来てるんだ。」
「闇屋?」
「うん。町の店じゃ売ってないものがあるからさ、必要なものがあったら買っておこうってことになったんだ。これから城の中だろ?きっと敵も強くなってくるだろうから。」
「阿修雄たちは?」
「闇屋で武器とかいろいろみてる。」
「じゃ、あたしたちも行きましょ。」
「うん。」



「え〜〜〜???こんなのもう少し森でリンクスと遊べば手に入るんじゃない?」
「じ、嬢ちゃん・・・」
「なによー、闇屋っていうから、もっと強力な武器や装備があると思ったら・・・資料見てみたら、どれもそうたいしたことないじゃない?」
もらったカードには、ステータスなどを表示するカードの他に、武器や装備、アイテムなどの資料もあった。絵里はちゃっかりそれを調べて文句をつけていた。
「でも、アーメットは買ってもいいんじゃない?」
「うーーん・・・ないよりはましってとこだけど。」
「敵はみんな大人だから、攻撃受けるとすると、やっぱり頭が多いのよね。だから、少しでも防御になれば買っておくべきじゃない?」
「そうねー・・・・・」
「あ・・あはははは・・・・・・」
闇屋の薦めるまま、あれこれ買おうとしていた阿修雄たちを制し、絵里は本当に必要なものだけに押しとどめていた。
「じ、嬢ちゃんにはかなわんなー・・・あはははは・・・・」
そして、闇屋なら闇屋らしく、もっといいものを仕入れてきてよ!という絵里の言葉に弾かれるように、彼は町を出ていった。

その日は宿に泊まることにした彼らは、それぞれ自由に夜まで町で過ごしていた。
蘭は魔法屋のおねーさんのところへ入り浸り、留夫は、何やら施術師のところで薬剤の調合などの講釈を受け、吏琥は、防具屋で、龍の鱗で作る炎の鎧の話など、まぼろしの防具の話に聞き入り、絵里は交換所で、品物の摩耗に対しての交換率などがどういう点からはじき出されるのかを聞き込み、椎は、長老から昔語りをしてもらい、そして、阿修雄はひいるにせがまれて、剣の扱いを教えていた。もちろん輪津は絵里の傍に大人しく座っている。


それぞれが思い思いの事をして楽しんでいる頃、アーケディア城、大広間では、スケルトン兵士らがガチャガチャと音を立てて大掃除をしてた。

「まったく・・・なんだ、今回の祭りは?・・・あ〜〜んなガキどもじゃ、オレ様の美意識に反するじゃないか?」
「ふふっ♪いいんじゃないの?幽体なんだから身体の大きさは関係ないでしょ?服みたいに小さかったら着られないわけじゃないんでしょ?」
スケルトンらが大騒ぎしているその片隅・・が、立派な玉座に座ったセラクとその傍に妖しげな微笑みの美女が一人。
四の守護者の一人であるセラクは、人間の身体を、まるで毎日着替える衣服のように着替えることが趣味だった。タルシス同様、といっても方法は違うが、人間としての年齢以上に現世に留まってるセラク。時と共に衰え老いさらばえていく己の肉体では我慢できず、いつしか他人の肉体を奪って生き続けるようになっていたのである。
「しかし、ガキだぞ?」
「あら〜、いいんじゃない?日持ちがいいってものじゃない?」
「人ごとだと思って面白がってるようだがな、トリニトラ。お前にも言えるんだぞ?」
「どう言えるっていうの?」
「そうだろ?お前は2階で奴らを待ち伏せするんだろ?」
「そうよ。」
「その時、お前が楽しみにしてる事があるよな?」
「あ・・・・・」
「ガキじゃ、お楽しみも半減なんじゃないか?」
無表情で意地の悪いことを言うセラクをトリニトラはきっと睨む。
2階で、モンスターにさらわれてきた可憐な乙女の姿で探検者一行を待ち伏せに、その中で彼女が気に入った戦士を色仕掛けで落とす、それがトリニトラの楽しみだったのだが・・・相手が全員子供の今回は・・・。
「ということは、今回も倒される予定なの、セラク?」
が、トリニトラはすっと思考回路を切り替え、反撃に移る。
「な、なんだと?オ、オレがいつ?」
「だって、そうでしょ?2階に来るって事は、とりもなおさずそういうことじゃないの?たまには本気を出してここでくい止めたらどう?それともどうあがいてもそんな力もないろくでなし?」
「な、なにをっ?!」
ガタっと怒りでセラクは立ち上がる。
「ほほほっ♪掃除隊長にはその程度かもしれないわね。」
「ト、トリニトラ!言葉にもほどが・・」
わなわなと怒りで震えるセラクの拳をちらっと見て、トリニトラはゆっくりとその場を離れ始める。
「私は、今回こそ、ヤール様のご意志に添ってみせるわ。子供だからって容赦はしない。あなたもせいぜい油断しないようにするのね。もっとも・・・私のところで止めるんだから・・・あなたは、早々に尻尾巻いて逃げても構わないけど。」
「トリニトラっ!」
−ほーっほっほっほ♪−
−カイーーンッ!−
嫌味たぷりの高笑いを残し、トリニトラが閉めていった扉にセラクの放った銀の大皿が勢い良くぶつかった。
「セラク様・・・・せっかく片づけたのにやめてくれませんか?」
1枚では気がおさまらず、2枚目を、と手を伸ばしたセラクのその手が掴んだのは・・・命令され、一生懸命掃除をしていたスケルトン兵士の一人の頭。
「ええ〜〜いっ!貴様らまでもっ!」
−グシャッ!−
八つ当たりでしかないのだが、セラクはその場で床にそのスケルトン兵士をたたき付けるようにすると、トリニトラとは別の扉を開けて出ていった。
−バタン!−
「おい、相棒、大丈夫か?」
「ああ・・・・だけど、ちょっとアレ・・かな?」
ばらばらになってしまった骨の真ん中、丈夫な為そうはならなかった骸骨が少し悲しげな表情をして声をかけた仲間に笑みをみせる。
「たたき付けられた衝撃でバラバラになっちまっただけならいいんだが・・・」
「そうだな〜〜・・・」
気の毒そうな視線で仲間のスケルトンは彼を見つめる。
「勢いがよすぎて、数本くだけちまったから・・・元通りになるかどうか?」
「まー、いいや、これでディナーも終わったんだから、もしなかったら銀食器でも変わりにくっつけときゃなんとかなるだろ?」
「そうだなー・・・・だけど・・」
「だけど?」
「カッコ悪くて戦意消失するぞ?」
「そうだな。特に相手があのガキどもじゃ?」
「一目見られた途端に・・・大笑いされる・・わな?」
「ああ、きっとな。」

ところどころ骨の変わりに銀のフォークやスプーンをくっつけたスケルトン兵士。
あきらかに爆笑を誘うだろう。
ばらばらのままのそのスケルトン兵士を囲み、仲間であるスケルトン兵士らは、大きなため息をついていた。


**前ページ** **次ページ**


ぼくら座夢繁探検隊・INDEX