● 表裏合体リプレイ?はちゃめちゃパロディーストーリー ●

ぼくら座夢繁探検隊】
==夢のまた夢物語==

〜なぜか幼稚園児と小1・・そして、犬!?〜
  

 

● その8・武器はご馳走と銀食器! 

 「お前の音はユリウスのそれに似ている。私は王に逆らった彼を助けようとして失敗し、死体は無残にもこの地下に投げ捨てられた。己の悲運を嘆きはしないが、この笛はラスムス様よりお預かりしたもの。正しき音を奏でる者に預けたかった。その笛を持って行くがいい。タルシスを倒すには地のものの力が必要になろう。ニーラの祝福を受けたものが、その笛に従うだろう。」

幽霊と聞き、初めは怖がって老人のいるその部屋に入ろうともしなかった椎も、ちょうどその時現れたスケルトン兵士に背を押される形で、部屋の中へ入っていた。そして、そこにいた男の幽霊の雰囲気にのまれ、男が差し出した土笛を受け取って吹いていた。

「え?おじいちゃん・・・難しすぎて何言ってるのかわかんないよ?」
「ほ?」
土笛を吹くのをやめ、きょとんとした顔で聞いた椎に、男は笑い始めた。
「はっはっはっは・・そ、そうか・・・難しすぎてわからんか・・・そうかそうか・・なるほど、そういえば、まだ幼かったか。」
寂しげで悲しげな顔はどこへやら、男は大笑いして言葉を変えて説明した。
「つまりじゃな・・・ぼくの吹く音は、わしの弟子であるユリウスの音と似てるんじゃ。ユリウスは、その昔王に逆らってな。そんな彼を助けようとしたんじゃが、反対にわしはここへ入れられてしまったんじゃ。」
「おじいちゃん、かわいそう。」
「はは・・同情してくれるのか・・・そうかそうか。」
椎の純真な瞳に、男は嬉しそうに微笑んで、彼の頭を撫でた。
「なぜこの笛を託すことができるのが、子供なのかわからんが・・これも、神の思し召しじゃろう。」
「え?」
独り言のように呟き、男は言葉を続けた。
「奥にはこわ〜〜いおじさんがいたじゃろ?」
「うん。」
こくんと正直に首を振った椎の頭を男は今一度やさしく撫で、一緒にいる阿修雄たちを見回す。
「ぼくたちは、それでも行くんだね?」
「うん!」
「もちろんさ!」
「だって、先に進まなきゃ、お家に帰れないんだもん。」
「そうか、そうか。」
元気一杯の答えに男は嬉しそうに首を振って頷いてから、再び椎を見つめた。
「ニーラの祝福を受けた者が力を貸してくれるじゃろう。その笛を吹き聴かせるんぢゃ。それは、わしラスムス様から預かった笛。正しき音を奏でる者に預けたかったんじゃ。」
「それが・・ぼく?」
「そうじゃ。その笛を持って行くがいい。タルシスを倒すには、地の者の助けが必要となるじゃろう。・・しかし・・・・ここまで若い冒険者とは思わなかったわい。・・これは、いつもより楽しいかもしれん。」
「え?楽しいって?」
椎の問いには答えず、男の姿はすうっと闇に融けていった。
「成仏したのかな、おじいちゃん?」
「あ、そ、そうね・・そういうことなんでしょうね。」
「気がかりだったその笛を後継者に渡すことができたからということなのでしょう。」
「ぼくで・・ホントに、いいの・・かな?」
留夫の言葉に、椎は土笛を見て考えていた。
「いいから渡してくれたんだろ?行こうぜ!考え込んでるより行動だろ?」
「うん!」
ぽん!と勢い良く椎の肩を叩く蘭の笑顔に椎も笑顔を取り戻していた。
「さ〜、ニーラ神殿へレッツゴ〜〜!!」
絵里の掛け声で、彼らは地下墓地をあとにし、ニーラ神殿へ向かった。


そして・・・
「・・かっわゆ〜〜い!♪」
その先を守るかのように通路を塞いでいた巨大なゴーレム。椎が土笛を吹くと同時に、しゅるしゅると縮まり、小さな土人形になっていた。
その土人形を袋に入れ、通路の先で銀色の球を手に入れた彼らは、再び地下墓地へと戻り、タルシスの再生の輪にその土人形を置いた。


「な、な、な、・・・・・なんでオレ様の聖なる再生の輪が、こぉ〜〜んなちびガキに破られなきゃならないんだぁ〜?」
あまりにも意外な展開に、だ〜〜い混乱のタルシスを倒すことは容易かった。
それまでにしっかりとLVアップしていた成果でもあるが。
「くっそぉ〜〜!!今回は、オレ様のところで絶対止められると思ってたんだが・・・・」
悔しげな言葉を残し、タルシスは土中にその姿を消していった。

「やった〜〜!!タコ入道を倒したぞ〜〜!」
「これって中ボスを1匹倒したってことかな?」
「うん、多分ね!1ステージクリアだよ、きっと!」
「おーーし!四の守護者ってあったから、あと3人いるんだよな?がんばるぞーー!」
「えいえいおーーーー!」
そうして意気込んだ座夢半探検隊は、意気揚々と城の1Fへと戻った。

「あ、あれ?・・・あっ!しまったっ!」
「あっ!そ、そうだったわっ!」
そして、大扉の前、まだ固く閉ざされたままのそれに、タルシスを倒しただけでは開かなかったことに気づいた。
「地下墓地の開かなかった扉の奥にあるのよ、この大扉を開ける仕掛け装置が。あそこへ行かなくちゃ!」
思い出したようにひいるが叫ぶ。
「あ〜〜ん・・またあの暗い墓地へ降りるの?・・・・外へ出ると消滅しちゃうから、またウィル・オ・ウィスプ、捕まえなくちゃなんないじゃないのぉ?」
「しょうがないだろ?仕掛けのこと忘れて上がってきちゃったんだから?」
絵里を諭す阿修雄。
「中ボス倒したからって、浮かれすぎですよ、みんな。」
「そんなこと言うんなら、途中で言ってくれりゃよかっただろ、留夫?」
「・・・ぼくも忘れていたんだから、仕方ないでしょう?」
「ぐっ」
蘭の言葉に、あくまでしれっとした表情で答える留夫に、阿修雄達は怒りを堪える。ここで怒っていてもしかたない。


そして、念願の大扉が、軋みながらゆっくりと開く。
「ようこそアーケディア城へ。」
彼らの目の前にあったのは、大広間いっぱいのテーブルに、山盛りのごちそう。
それも見たことも食べたこともないような食材、色とりどりでおいしそうな臭い。
−ぐきゅるるる〜〜〜−
一斉に全員のお腹が大合唱。
「食事に剣などの武器は邪魔でしょう。お預かりしておきますので、どうぞ召し上がれ。」
美しい女官が奥から現れ、一人一人の手を取る・・・までもなく、子供達は目を輝かせてテーブルに駆け寄っていた。
「うまそーー!」
「おいしそう♪ね、本当にこれ食べていいの?」
「そうですよ。」
「ね、これってただ?」
−ガクガクッ−
女官頭と思われる女性がずっこけた。
「は、はい、勿論そうですよ。」
「じゃ、いっただき・・」
「ちょい待ったっ!」
「へ?」
全員それぞれ武器を女官に預け、食べようとしていた時だった。一人入口に立ったままの留夫がいつも通り落ち着いた口調と無表情のまま言った。
「長年封印されていた城内に、食材があるなんておかしいと思いませんか?」
「!」
その言葉で全員思い出す。
「あ!だけど大型冷蔵庫があったとか?」
「眠り姫、ザムハンバージョン?時が今動き出したとか?」
「それって子供用に作りなされたおめでたい方の話だろ?」
「え?違うの?お姫様が目覚めると一緒に、止まっていた人たちもまた動き始めたんじゃないの?」
「バカだなー。本当の話は、お姫様は目覚めても、他のみんなはみ〜〜んな骸骨さ。お城だって風雨にさらされてぼろぼろになってんだぜ?」
「そ、そうだったの?」
「現実は厳しいんだって。そんな甘い夢のようなこと言ってちゃ世の中渡っていけないよ?」
「蘭、留夫みたい?」
「げっ・・・留夫と比べんなよ、留夫と!」
「じゃーさ、この食材は時の彼方のもので幻とか・・じゃないわね、あったかいし、つかめるわよ?」
ひいるがナイフでつんつん!と目の前にあった七面鳥をつつく。
「口にいれた途端、幻となって消えるんじゃない?」
「え〜?そんなの詐欺よ〜〜!卑怯だわ!」
「じゃーさ、もしかしたら、モンスターの肉を魔法か何かできれいにみせてるとか?」
−さ〜〜〜・・・・ー
つい思いついたことを言った阿修雄も、そして、仲間全員、その言葉に血の気が引いていった。
そして、全員のきつい視線が女官頭に向けられた。

「は、ははは・・・・そ、そういう話題が発生するとは、思ってもみなかったっていうか・・・こ、今回は、なんと言ったらいいのか・・・」
彼らの会話に、開いた口がふさがらなかった女官頭は大きく深呼吸をして、ようやく気を取り直す。
「愚か者達め・・・我が名はセラク・・・私はタルシスのようにはいかぬぞ。幸せに思うがよい、ここで・・・」
−わ〜〜〜!!!!−
セラクと名乗った女官頭の声は、阿修雄たちの声でかき消されていた。
美しい女官から徐々に戦士のそれと変化していく途中、そのセリフが全部終わらないうちに、阿修雄たちは、一斉に飛びかかっていた。
勿論武器は預けてしまっていたので、テーブルにあったナイフやスプーン、そして、チキンが、パイが、スープが飛び交い、空になった銀食器が、軽快な音を立てて、やはり女官の姿からスケルトン兵士の姿に戻った彼らの頭蓋骨を砕く。


「ひ、卑怯な!・・・普通、口上を全部聴いてから・・」
−くわわわ〜〜ん!−
呆れ返ったセラクの言葉は、その頭部に受けた激しい振動と同時に中断された。
「卑怯って言うんなら、子供を虐める大人の方が卑怯だろ?」
「そうだ!そうだ!」
「そうよ!そうよ!」
「先手必勝〜〜!!」
−カーーーン!−
銀の燭台がクリティカルヒット!
「お、お、覚えてるがいい!」


セラクが姿を消すと同時に、一瞬にして静まり返った大広間。
「あ〜あ・・・誰が片づけるの、これ?」
「ごちそう食べてから戦えばよかったなー。」
後悔先に立たず。みたこともない大ご馳走は、お腹に入ることなく、可燃ゴミと化していた。
「もったいなー。」
「あ〜あ・・・・どうするぅ?」
「どうするったって・・・・」
「あたし、お風呂入りた〜〜い!」
「あたしも〜〜・・もう髪にパイやスープが飛び散ってコテコテになっちゃったわ。」
スープやパイ投げのとばっちりは、味方の方にもかかっていた。
その自分の様子に気づいた絵里とひいるが、うらめしそうに言う。

「じゃ、一度村へ帰ろうか?」
「うん、そうしよう。」
「これ、どうすんの?」
「多分さっきの女官頭に化けてたおじさんがそのうち片づけるでしょ?」
「え?絵里ちゃん、なんで分かるの?」
「だって、ちょっとネクラそうな顔だったけど、潔癖性なような気もしたもん。きっと、この惨状にがまんできずに掃除するわよ。」
「そ、そんなものなの?」
絵里の答えに、聞いた椎だけでなく阿修雄も蘭も吏琥も唖然とする。
「あたしもそう思うわ。でも、自分の服が汚れるのがいやで、きっと部下のスケルトンくらいにやらせんじゃない?」
「たぶんね。」
くすっと笑って見合っている絵里とひいるに、阿修雄たちは、依然として呆れ返ったまま口をあけて見ていた。


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