**Brandishサイドストーリー・番外編?**

泥酔美人とむっつり・・・(4) 酔っぱらいアレス

***ある日ある時ある場所で・・・アレスとドーラのお話です***
  

なんであたしがこんなカッコをして給仕しなくちゃいけないのよ?!・・・・爆発寸前?のドーラ?

   
         

 「ああ〜〜・・もう限界よっ!」
そして、周囲の雰囲気にすっかり飲まれて働いてしまっていたドーラが、その超多忙さについに切れた。いや、我に返ったといった方がいいのかもしれない。
「あたしは店員じゃないのよっ!」
ダン!と客席から回収してきた空になったグラスを勢い良くカウンターに置きながら、ドーラが叫んだ。
「姉ちゃん、根性あると思ったんだけどな。意外と根性無しだったんかい?まだまだこれからだぜ?」
「そうそう。今じゃすいすいこなしてるあのエリーヌちゃんだって、最初はもたついてたんだ。気にしない気にしない!」
「あ、あのね〜・・・だから〜」
「じゃーさ、オレと・・・出てく?」
「え?」
「おい!抜け駆けはずるいぞ、おめー!」
「姉ちゃんがうんと言やー、抜け駆けもなんもないだろ?な?ここの仕事が嫌なら勇者様のお迎えってな?」
「誰が勇者様だってんだよ?おめーはさっき人間の男にずたぼろにやられてここへ逃げ込んで来たんじゃないか?」
「そういうおめーは、初期装備しか仕入れられないダメ闇屋だろ?」
「んだと?」
「んだよ、文句あっか?」
「ち、ちょっと、あんたたち・・・」

−ぐいっ!−
「え?」
人の話も聞きなさいよ、と言いかけていたドーラの腕をぐいっと引っ張る男がいた。
「悪いな、こいつはオレのモンなんでな。」
「ええ?」
腕を掴んだ主である男の顔を見て、ドーラを取り合っていた男達もそして、ドーラ本人も驚いた。
「ア、アレス?」
思えばドーラがアレスの声を聞いたのは、出会ったとき以来だった。
「ちょっと待ってよ!来たばかりだっていうのに、もう出ていくっていうの?せ、先輩の私を差し置いて?!・・っと・・・・・」
エリーヌの待ち人はまだ来ていなかった。そのことからもエリーヌの機嫌は最高に悪い。
が、ぎろっと睨んだ(と思える)アレスの気迫は勿論その上である。
エリーヌも、ドーラを囲んで騒いでいた男達も思わず後ずさりする。
「何かの間違いだろう。こいつはオレを追ってここまで来たんだ。」
「そ、そうだったの?」
そのアレスの気迫にびくつきながらエリーヌはドーラを見る。
「だから、さっきから店員じゃないって何度言おうとしたか・・・。」
「違うの?」
「違わよ!」
ようやくドーラの発言の場が設けられた。そんな感じである。
「残念だわ〜、ぴったりなのに。」
心の底から残念そうにエリーヌは呟いた。
「仕方ないわね・・・じゃー、奥で彼に脱がして貰いなさい。」
「え?脱がして?」
「たとえ店員じゃなかったとしても、そのユニフォームはどうしようもないのよ。」
「どうしようもないって?」
悪い予感がドーラの思考を過ぎる。
「だからね、うそを付いて辞める子が続いて出たことがあったのよ。せっかく一人前にしたのに、すぐ辞められても困るでしょ?だから、本物の恋人かどうか確認するためのユニフォームでもあるのよ。」
「ど、どういうこと?」
「つまり、一旦身につけたら自分では脱ぐことができないのよ。バリアと一緒で元締めの魔法がかかってるの。」
「え?」
「そのままのカッコでいいならいいんだけど?」
(つまり・・呪われた装備っていうやつ?)
そんなことを考えるドーラの全身からさ〜っと血の気が引いた。
「だからね、本当の恋人ならどうってことないでしょ?証明になるのよ、やめる条件を満たしたことの。」
「そ、そんな・・・・」
−ぐいっ!−
「え?」
エリーヌの言葉で固まったドーラの腕を持つアレスの手に力が入った。
「ア・・アレス?」
そして、さっさと店の奥へ向かって歩き始めたアレス。その手は、しっかりとドーラの腕を掴んだまま。
「ち、ちょっと・・・・・」
(こんなのアレスじゃないっ!)
アレスに引っ張られながらドーラは心の中で叫んでいた。気を失っていても手もださずに放っておくアレスなのである。この行動はドーラには信じられなかった。
「そのままの格好でいいのなら強要はしないけどな?」
−ドキっ!−
ドーラの心臓が飛び跳ねた。そして、すぐ横のアレスのある状態に気づく。
「ア、アレス・・・あ、あんた、酔ってんの?」
そう、アレスからぷんぷんとアルコールの臭いがしていた。
酔っているから話すはずのないアレスが言葉を口にしたのか、とドーラは納得する。が、次に、のんきに納得してる場合ではないことを思い出し、アレスが掴んでいる腕をドーラは勢い良く引く。
「何を今更?あんただってまんざらじゃ・・」
−バキッ!−
彼女の腕を掴む手に一段と力を入れて耳元で囁いたアレスが全部そのセリフを言う前に、ドーラの怒りは噴火した。手近にあったイスに束縛されていなかった方の手を延ばすが否や頭上に上げると思いっきりアレスの頭の上に振り下ろしたのである。
「あ・・あんたなんて・・・あんたなんて・・・・アレスじゃないわよっ!・・こんなの・・こんなのあたしのアレスじゃないっ!」
不意に叩かれたせいか、それとも酔っていたせいか、いくらドーラの渾身の力がこもっていたとしてもこの程度ではあり得ないのだが、めずらしく叩かれた衝撃で尻餅をついたアレスにドーラは思いっきり悪態を浴びせた。が、最後に言った自分の言葉に気づいて彼女は動揺する。
「あ・・・・じゃなくって・・・・」
そして、真っ赤になったドーラのその言葉に、にやりと口元を少しあげ、アレスはゆっくり起きあがる。
−パン!−
そして、笑みを浮かべつつ差し伸べたアレスの手を、ドーラは思いっきり勢い良く叩く。
「し、知らなかったわよ・・・あ、あんたがこんなだったなんて・・。これじゃその辺の男と一緒じゃないの?ア、アレスの・・・アレスの・・・むっつりすけべっ!!見損なったわよっ!」
−パーーーンッ!!−
ドーラの強烈なビンタがアレスの頬に炸裂した。


「ど、どうするの?」
ダダダッと出口へ走り寄っていくドーラにエリーヌが声をかけた。
「どうするのって・・・元締めの闇屋のとこよ!術を掛けた本人なら解除できるでしょ?」
「で、でも、元締めは店へは時々顔を出すだけで、いつも気まぐれにどこかの迷宮で闇屋を開いてるらしいけど、どこかわからないのよ?」
「どこにいようが見つけてやるわよ。・・・・そして、・・そして、このお礼はたっぷりさせてもらうから!」
−バッターーン!・・パラパラパラ・・・−
ドアを壊れそうなほどの勢いで閉めると、ドーラはそこから走り去っていった。

「あ・・でも、元締めが立ち寄る迷宮の場所を知ってるのかしら?」
ふとそのことに気づいて呟いたエリーヌの目の前に、アレスは壁にかけてあった世界地図を外して差し出す。
「あ、書けってことよね?」
しばらく無言のまま立っているアレスを見つめた後、エリーヌが言った。
無言に戻ったのは、ビンタのショックで酔いが醒めたのだろうか?(笑


そして、エリーヌの印のつけた地図を持ち、アレスもまたそこを後にした。
「な、なんだったのかしら・・あの2人?」
2人が出ていった戸口を、エリーヌをはじめ、店にいた男達は唖然としてしばらく見つめていた。


バニースタイル解除の為、総元締めである闇屋のいる迷宮探しに燃え、ドーラは世界中を飛び回る。ひとまず、アレスの首は後回し。

・・・・その前に今いるこの迷宮を脱出しなければならないのだが・・・。果たして、単独でドーラは大丈夫なのだろうか?


そして、宝(勿論魔物との戦闘付き)の眠る迷宮を記した地図を入手したアレスも進む。そのアレスに、わざわざドーラにその所在地を教えるつもりはない。
いつかどこかで偶然出会ったら教えてもいい。その時まだ闇屋に出会っていないのなら、とアレスは思っていた。

地図に記された迷宮は、アレスにとって調度いい目的ができたと言えた。
そう、アレスにとっては、ドーラのバニースタイルの解除など、どうでもいいことなのである。わざわざ教える必要もないし、自分が探すつもりもなかった。

ドーラより一足先にその迷宮を脱出したアレスは、じっと地図を見て、呼び声が聞こえた気がした迷宮へと足を向けた。つまりは、本能が感じたまま。


次に2人が顔を合わせるのはいつなのか、そして、その出会いはどこなのか?
それは誰も知らない。運命の女神だけが知っている。    

※「むっつり・・・」の「・・・」には、剣士という言葉が入る?・・・い、いや、今回は・・・?(笑 /^^;



こんなのも作ってしまいました。

  

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