**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その33 入口からトラップの歓迎


  荒廃しきった大地の女神の神殿。が、その大扉を開け内部へ入ってみると、古びてはいるが、不思議と外観のような荒廃さはなかった。
天井、床壁、ドア、どれをとっても精巧且つ美しい彫刻が施された重厚な神殿であった。
だが、人々の信仰を集めたそこには、荘厳な空気はなく、神殿の奥からは確かに妖しげな魔物の気がにじみ出てきていた。

「うーん・・入口付近は魔物の影もないから大丈夫ってわけかしら?でも、ホール奥にあるドアを開けるとどどっと襲ってきたりしてね?」
そんなことを感じつつ、ドーラは入口の横にあった飾りプレートの文字に視線を流した。
【開かぬ扉は時が刻まれるのを待つ】
「開かぬ扉?・・ってことはやっぱり向こうに見えるあのドアは開かないってわけね?」
ちらっと玄関から続いている円形ホールの対面にあるドアを見、ドーラはつかつかとそのドアに歩み寄ると、ノブを回してみる。
−ガチャガチャガチャ!−
忠告?通りドアはびくともしない。持っていたカギも当然合うわけはなく、ドーラはくるっとホールの内側に向けて振り向くと、目に映った光景と飾りプレートの文字を照らし合わせた。
(まさか入口からトラップとは思わなかったわ。でも、あのメイソンだってそれをクリアして奥へ入っていったわけよね。あのメイソンに解けて、あたしに解けない訳ないわ。)

よく見ると、その円形のホールは、床板の色で、ちょうど時計のような模様を形成していた。
つまり、床板の色の濃い部分のみとらえて考えるとまさに時計だったのである。
中央の床板が時計の中心。そして、それをぐるっと囲んで0〜11までの時刻を表すかのような位置に色の違った床板があった。

(つまりこれは・・・開かぬ扉は、奥にある扉よね。そして・・・・)
中央の床板を踏みしめ、ぐるっと周りを見回しながらドーラは飾りプレートの言葉をもう一度頭の中で反芻する。
(時が刻まれるのを待つ・・だから・・・・・この床一面の模様を時計を見て、順番に進めばいいのかしら?)
そう思ったドーラは、迷うことなく「0」と書いてあった壁側にある床板を踏んだ。
−カチリ−
”当たり”と心地よく耳に響く音がした。
(よしっ!)
自分の判断が正しかったのを確信すると、ドーラは次の床へと歩を進めた。
−ガコン−
その途端、決して大きな音ではないが、明らかに”不正解〜”と言うような耳障りな音がし、思わず先程踏んだ「0」の位置の床を振り向いたドーラの目に映ったのは、踏んで下がったはずのその床板が元通りになっていた光景だった。
(そう、リセットされてしまう床もあるわけね)
ただ時計の数字にあたる床板を踏みしめていけばいいだけではなかった。次のスイッチまでの床板によりリセットされてしまうこともあるのだった。
かといえ、次の床板までジャンプで届く距離ではない。どうしても間にある床板を踏まずに行くことはムリだった。
が、ドーラは、その数字の位置の床板の間にある床板を踏んだり戻ったりしているうちに、一つの法則に気づいた。それは、1度踏みしめると床板は下がる。そして、次の床板を踏むとその下がった床板はリセットされ元に戻る。が、元に戻ってもそれを無視し、次の踏んでない床を踏むと今下がっていた床板がまた戻るのである。それはすぐ隣り合った床板同士での連動作用だった。
ということで、ドーラは、数字の位置の床板を下がったままにする為に、1つ飛ばしのジャンプを組み入れて進むことにした。
そして・・・
−カチャン!−
最後の11の数字を踏んでも何も起こらなかったことに首を傾げつつ、が、ふとひらめいた中央の床板を踏むことを実行に移してみたドーラの耳に、明らかに奥のドアの施錠が解けた音が響いた。
(やった!)
意気揚々とドーラは、奥のドアへと向かった。
−ガコ!−
(し、しまった!数字じゃない床板を思わず踏んでしまったわ)
自分のドジにぶつぶつ文句を言いつつ、ドーラは再び運動をして、そのホールの時を刻ませた。


そして、ホール奥のドアを無事に開け、その先に続いていた長い通路を、ドーラは足早に進み始めた。
そう、どこまで続いているのかと思うくらい長い長い通路を。
その両側の壁を通して、明らかに魔物の気配が漂ってきている。
そして、その通路の途中にあったドアは、やはり何かの仕掛けで開くようになっているらしく、固く閉ざされていた。

「まったく!なんて長い通路なの?どこまで続いているのよ?」
どのくらい歩いただろう、ふと立ち止まってどのくらい歩いてきたのか、たぶん、もうホールへの出口であるドアはうんと遠くに見えるほどの距離なんだろうと思って振り向いた、ドーラは、意外と近くにそのドアがあることに気づいて驚く。
「やってくれたじゃない?!これって、ある程度進んだらこっちが気づかないように巧妙なワープとラップで戻されてたってこと?」
確か、今までアレスを追って彷徨った地下迷宮でも同じようなトラップがあったことをドーラは思い出して憤慨する。
「やってくれんじゃない!まったく、あたしとしたことが油断してたわ。!みてなさい!絶対途中に崩れかかった壁があったはずよ!」
通路の両側の壁を観察しつつ歩くドーラ。
「おかしいわね・・いつもなら崩れかかった場所なんて一目瞭然なのに。」
同じ地点にくるとふっと戻されてしまう。
(そういえば、金槌もどこにも見あたらなかったわよね。)
迷宮内、いつも不思議なことに、崩れかかった壁と金槌は、まるであって当然とでもいうようにセットで存在していたことを思い出す。(笑
「きゃっ!」
戻されるポイントの1歩手前で、壁の上の方を睨んで腕を組んで考えこんでいたドーラは、不意に脚に走った痛みに小声を出す。
「え?・・・このっ!やってくれたわね!」
足下にサソリが笑って(え?)いた。
思わずドーラはサソリを思いっきり力を込めて踏んで、前に進んだ。
その途端に、早くも毒が回り始めたのか目眩を覚える。
(さすが、サソリね・・・しかも、やっぱり普通のサソリじゃなくって、魔物の一種よねーえ?)
ぺしゃんこにしてやったつもりのそのサソリを振り返る。・・と、同時にドーラは気づく!
(あ・・た、確か・・・・)
そして、毒が回ってふらつく足取りで、そのまま進行方向へ進んでみる。
(サソリを踏んづけたから?)
そう、ぺっしゃんこになったサソリの位置は、戻されるワープポイントであり、ドーラはその1歩手前で止まっていたはずである。
「やった!ワープトラップ、回避できたわ!」
T字形に、左右に分かれていた通路とぶつかっその壁にもたれ、ドーラは散々悩まされていたワープとラップの回避に成功したことに喜んでいた。

が、それも束の間、毒がますます全身に広がり、立っていられなくなってきたドーラの耳に、左右から近づいてくる魔物の足音が響いてきた。


  
  
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