**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その32 太陽の神殿へ


  「アレスを追ってたまたま帰ったこの地だけど・・・・これは、このこと全てお師匠様はすでにあのとき亡くなられる前に予見して・・・・・・・」
そんなことを考えながらバルカンの杖を手に、ドーラは追い立てられるようにフィベリアへ、まずはミレイユに会うため、アカシックギルドへと、再び地底湖の道を急いだ。

「まったく!地底湖は変わらず冷たくて・・・冷え性になってしまいそうよ!」
そんな冗談とも言える文句を言いながら、フィベリアについたドーラは、アカシックギルドへと直行した。
「ミレイユ?・・・いるんでしょ、ミレイユ?」
ギルドのドアを開けると同時にそう叫んだドーラの視野に入ったのは、明らかに何かそこでいざこざがあったような乱雑な室内と床に転がっている1人の男。
「あんた、ギルドの人?しっかりなさい!何があったのよ?ミレイユは?メイソンがまたここへ来たの?」
少し乱暴とも思えるような勢いで、その男の上半身を抱き起こすとドーラは矢継ぎ早に聞く。
「あ・・ああ・・・あんたか・・・そ、そうだ、メイソンの奴が・・・。」
「で?ミレイユは?他の人は?ここにはいなかったの?それとも?」
「あいつは・・アカーシャを知るものを皆・・・」
「皆って・・・皆、なんなの?」
まさか皆殺し?・・・ドーラは自分の全身から血の気が勢いよく引いていくのを感じる。
「や・・奴は神殿に向かった。ミレイユさんたちも・・・」
「良かった、ミレイユは無事なのね?」
「このままじゃ・・・危険・・だ・・・・・」
「分かったわ、助ければいいのよね。で、神殿って?」
矢継ぎ早に質問を投げかけるドーラに対して、抱き起こした男は瀕死の重体。一言一言絞り出すような答えではなかなか聞き出すことはできないのも当たり前のことだった。
「あ〜もう!じれったいわね!さっさと答えてちょうだい!・・・って・・あ、そっか、精神波のきついのを受けたのか、その衝撃で死にかけてるんだったわね、普通に話せっていう方が無理ね・・・・」
ようやくその事実に気づいたドーラは熱くなってそのことまで気が回らなかった自分に苦笑し、あわてて回復魔法を男にかける。
「悪かったわね。最初に気づけば良かったっていうか、気づくべきだったんだけど、あたしもミレイユが心配で気が動転してて。」
「あ、あはは・・・そ、そうでしょうね、わかりますよ。」
ドーラの回復魔法でやっと楽になった男は自力で上体を起こしつつ愛想笑いを返す。
「で、結局、ミレイユはどこにいるの?無事なんでしょ?」
「あ、ああ、無事だ。ちょうどここにはいなかったんだ。」
「で、どこに?」
「ミレイユさんやメンバーのみんなはカロナ高原の神殿にいるはずだ。実はそこにギルドのアジトがあるんだ。まー、あんたになら話してもいいだろう。この建物の裏手の道をまっすぐ東へ行くと朽ち果てた太陽の神殿に着く。その神殿の秘密路からカロナ高原に出られるんだ。太陽の神殿までの道は荒れ果ててはいるが、一本道だから迷うことはないだろう。あとは・・神殿内部だが・・・メイソンの奴が先に行ってるとなると、あんたを警戒して何か仕掛けたかもしれん。」
「それって、トラップとか?」
「ああ、まー、そんなところだ。」
「そう・・・・ま、いいわ、その手には慣れてるから。」
「そ、そうか?・・・さすがだな?」
「じゃーね、一応回復魔法をかけておいたけど、肉体への衝撃じゃないから、今しばらく大人しくしていた方がいいわよ。」
「あ、ああ。」
まだ何か話したそうな風の男を残し、ドーラは太陽の神殿へ、カロナ高原のギルドのアジトを目指してそこを後にした。

「えっと・・・・・・そうだわ!」
ギルドの建物の裏手に急ごうとしたドーラは、ふと気づいて足を止める。
「急がば回れ!あたしってどうも熱くなると直結の行動を取りがちなんだけど、でも、人間、学習するものなのよ。一本道でもすぐそこにあるわけじゃないんだから、徒歩で行くより馬でも借りられたら速いわよね。」
その結論に達したドーラは、くるっときびすを返し王城へと向かった。

王城へはフリーパスのドーラ。門番の兵士たちもドーラのことはしっかり目に焼き付いている。
「ガンデスはどこ?」
「は?近衛隊長のガンテス殿ですか?それなら謁見の間かあるいは王とご一緒のはずですが。」
「そう。」
お呼びしましょうかという次のセリフを待たず、ドーラはさっさと大門をくぐって自分の庭のごとく慣れた王城の中を駆け、ガンデスを探した。


「ドーラ殿?」
「ガンデス、ちょうどよかったわ。」
謁見の間に向かう途中、向かい側から歩いてきたガンデスと顔を合わせ、ドーラはにっこり微笑む。
「地底湖を抜け、タントールへ向かわれたのではなかったのですか?」
「行って戻ってきたのよ。」
「ほほう・・さすがドーラ殿ですな。で、何か異変でも?王にお目通りの必要でも?それとも私に?」
「異変は異変なんだけど、現段階では王様でなくあなたでいいわ、ガンデス。」
「私で?」
近くにある控えの間にエスコートするとでもいうように左手を伸ばしたガンデスに、ドーラはその必要はないと表情で答える。
「悪いけど、急いでいるの。太陽の神殿に行かなくっちゃいけないの。馬を1頭貸してくださらない?」
「馬・・ですか・・・・馬くらいおやすいご用です。王都で最速の駿馬をお貸ししましょう。」
「ありがとう、助かるわ。」
「他は?兵士などもし必要であれば・・」
ドーラの様子にただならぬ状況を察して提示したガンデスの言葉を丁寧に断り、ドーラは王都一の駿馬、つまりはガンデスの愛馬に乗り、太陽の神殿を、カロナ高原を目指し、ひたすら駆け続けた。


大地の女神の神殿・・・。
かつては人々が往来していたはずの参道は、見る影もなく倒壊している。
小高い丘に無惨な姿をさらす神殿は、失われた信仰を嘆くかのように静かに時の流れから取り残されていた。

「さて・・・また楽しめそうね?・・・・・・アレスも来てるのかしら?」
荒れ果てた神殿の入口に立って建物を見上げるドーラの第六感は、一歩入れば今まで以上のトラップとモンスターの歓迎があるだろうと囁いていた。


  
  
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