**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その31 人魚の像と砂岩板


 「見つけたわよ、メイソン!」
地底湖を進んだドーラは、その奥で陣取っていた巨大なシーサーペントを空腹と寒さへの怒りで串焼きにして(え?)、ボロアの洞窟に繋がっていた出口を抜け、その第六感がささやくまま、砂漠を抜けた廃墟へと来ていた。

「ドーラ!」
誰か他の人物と対峙していたかに見えたメイソンは、その人物に注意を払いつつ、ドーラへと視線を投げかけると同時に叫んだ。
「ちっ!きさままでやって来るとはな!」
「きさままでって?」
足を進めたドーラは、瓦礫の影になって見えなかった部分に見知った人物を見つけ思わず叫ぶ。
「アレス!あんたも来てたの?」
もちろんアレスが返事をするわけもないことは、ドーラは百も承知である。
「ふん!まったくしぶといったらないぜ。よくもまー、あの大河を越えられたものだ!砂岩板といい、いつもきさまらには驚かされるぜ。」
「ふん!あのくらいちょろいもんよ!」
大河を渡ってきたわけじゃないけど、ま、説明する必要もないからいいでしょ、とドーラは得意げな態度をとってみる。
「さー、観念しなさい、メイソン!」
険しい表情でにらみつけドーラはメイソンに迫る。
「おとなしく砂岩板を渡しなさい!」
手を伸ばしメイソンの手前まで近づいた時だった、一瞬意識が遠のく感じを受けたドーラは、全身が硬直していることに気づく。
(しまった!石化の術?でも、呪文は聞こえなかったけど?)
「もう砂岩板には用はない。全て分かったからな!」
相手が魔法など到底使えそうもないと油断して魔法防御結界も貼らずに近づいたことを後悔している間に、メイソンは捨てぜりふと砂岩板を投げ捨て、さっさとその場から姿を消した。
「なんなのよ、あいつ・・・・呪文を唱えないなんて、訳の分からない術を使って・・・」
投げ捨てられた砂岩板を手を伸ばしながらドーラは呟く。
「あら?アレス?」
砂岩板を拾い上げ、同じく石化の呪文をかけられていたアレスの方を見るドーラ。
が、そこにも周囲にもアレスの姿はない。
「いつの間に?・・・まー、いいわ。砂岩板は戻ったから、これを奥の人魚の像に合わせれば、何が書いてあるのかわからないこのボルテリック文字も読めるらしいから。そうすれば、メイソンが何がわかったのか、それと、あいつ(とアレス)の次の行き先も分かるわよね。」

ドーラは、まるでその上に置けとでもいうような人魚の彫像の手の平に砂岩板を1つずつ置いてみた。と、2つの砂岩板が彫像の両手に隙間無く収まると、つなぎ目の部分に文字が現れた。

『太陽と月の交わる場所。聖なる白き丘に立ち、瞳をかかげ祈りを捧げよ。』
「祈りを捧げよ?・・・・」

太陽と月の交わる場所とは、聖なる白き丘とは、かかげる瞳は、マーメイドアイだろうか?、ともかくミレイユにもう一度会って、よーく説明をしてもらおう、そう思ったドーラは、廃墟を後にした。

−ズズズズズ・・−
廃墟を後にし、砂漠と幽霊屋敷の地下から墓地に出、止まることなく町へ向かおうとしたドーラの背後で不意に地鳴りがした。
音は、師匠バルカンの墓の方から聞こえてきたことに不安を感じ、ドーラはあわてて戻る。

「え?なんなのこれ?どういうこと?」
バルカンの墓石が横にずれていた。
周囲には誰もいない。ずらした人物がいる気配もない。第一、バルカンの墓石は普通のものより大きく、簡単に動かせるものではない。
「おかしいわね?」
不思議に思いつつさらに近づくと、ちょうどそれまで墓石があったところがぽっかり穴が空いている。
「え?・・・階段?」
そこには地下に続く階段があった。
「秘密の地下室?・・・ひょっとしたら今回のこの一連の事件をお師匠様は予見して、あたしに何か伝える為にこの仕掛けを?」
・・・お師匠様の亡骸を葬るだけの為に作られたんじゃないわけね?、何かがあたしを呼んでいる・・・ドーラは迷うことなくその狭く急な階段を下りていった。

階段は地下の小さな部屋に続いていた。そこには細長い木箱がたった一つ。
引きつけられるように急いで開けたそこには、年代物の杖があった。
「これは・・・・お師匠様の・・杖?」
見覚えのあるその杖からは、底知れないほどの思念を感じた。残留する力はかなり強力なものだとドーラは感じた。
「お師匠様・・・・・・・」
バルカンに再開できた思いで、ドーラはその杖を体に引き寄せ、思いの丈を込めて握りしめた。
  


  

  
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