**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その28 してやったり・・・してやられたり?

 

 (やったわ!グッドタイミング!) 
あちこち彷徨い、トラップに翻弄されながらもようやくスノーエレメンタルがいるそこへ来たドーラは、予想通りそこに、エレメンタルと戦闘中のアレスの姿を見つけ、ほくそ笑む。
(ふふん♪狙いは当たったわね♪2人がお互いに気を取られている間に、あたしは・・・)
ちらっと奥を見る。入ってきたところと反対側にまた細い横穴があった。
(あたしの冴えてる第六感でいくと、砂岩板はあそこの奥にあるわね?)
しかし、そこは広い空洞。戦闘中の2人に気付かれず、横切ることは不可能に思えた。
(どうしよう?・・・・・なかなかチャンスがこないわ)
広い空洞狭しと、あちこちテレポートしつつ、氷結呪文を次々にアレスに浴びせているスノーエレメンタル。そしてその氷結呪文弾を避けつつ、異動先をそれまでのパターンから予期して、呪文を放つことが不可能なテレポーション後の一瞬をめがけて攻撃をしかけていくアレス。
(相変わらず敵のスキを狙うのが上手いわね。・・なんて感心してる場合じゃないわ。エレメンタルの方が形勢不利じゃないの?そうしたらアレスに砂岩板を持っていかれてしまう・・・)
岩陰ではらはらしながら、その戦闘を見守るドーラ。
と、度重なる氷結呪文で床一面がそれまでにも増して凍ってきていたため、アレスがそれに足を取られ、その勢いで体勢を整える間もなく、したたかに床にたたき付けられた。
そこへ待ってましたとばかりに、スノーエレメンタルは氷雪呪文を唱え、猛吹雪の息をアレスにかける。
(アレス!)
咄嗟にドーラは火炎の術を放っていた。
(し、しまった・・・スノーエレメンタルの注意がこっちに!)
氷結状態にまではなってないまでも、倒れたアレスはその寒さで動きが鈍くなっていたこともある。スノーエレメンタルは炎を放った主に当然視線を向けた。
(もう!アレスのあほぽんたん!ドジ!)
アレスに文句を言いつつ、ドーラは覚悟を決め、火精の杖を構え、それと対峙したときだった、その背後からアレスの剣が一刀両断に決まった!
(え?・・・出番・・・なし?)
多少?肩すかしをくらった感じもし、気落ちもしたが、そんなことはしてられない。
ドーラは、まだ寒さで動きが鈍くなっているアレスを尻目に、奥へと走った。

「じゃね、アレス♪これはさっき助けたお礼としてあたしがもらっていくわ♪」
そして、アレスに止められる前、疾風のごとくその場から立ち去った。


「あんたがあいつを倒したのか?」
足早に道を戻るドーラに声をかけたのは、他ならぬ、半身氷漬け状態だったあの男である。
スノーエレメンタルを倒したおかげで、自由になったらしい。
「そうよ♪」
本当はアレスなのだが、ドーラは悪びれもせずそう答える。
「助かったぜ。凍りついたままお終いだなんてちょっと寂しすぎるモンな、やっぱり・・。」
にへへ、と男はしまりのない笑いを見せる。
「なー、奥にまーるい円盤のようなもの、なかったか?」
「まーるい円盤のようなもの?ああ、あったわよ。これでしょ?」
次元箱に入れようとしても、砂岩板のもつパワーと反発するのか、どうしても中に入らない為手に持ってきていたそれをドーラは男に見せる。
「おっ!そうだ!そいつが砂岩板だ!なぁ、それをオレにくれないか?実はオレもそいつを探していたんだ。」
「あら?そうなの?あなたもミレイユに頼まれた口?それとも他のギルドメンバーに?」
「別に頼まれたわけじゃねぇが、ミレイユって結構かわいいだろ?ちょっといいところを見せてやろうと思ってな。」
「当たり前でしょ♪あたしの妹なんだから。」
「へ?妹?・・・にしちゃー、雰囲気が違いすぎるっていうか・・?」
改めてドーラの全身を見つめる。ミレイユは可憐清楚な巫女の代表のような少女であるに対し、目の前のドーラは、どっちかというと、言うと焼き殺されると思われるが、露出狂の跳ねっ返り女?・・確かにプロポーション抜群なところは認めるが。
「何よ?何が言いたいのよ?」
その言葉を男の表情から読み取り、当然ドーラの口調は荒くなる。
「あ、いや・・と、とにかく、それをオレに譲っちゃくれねーか?」
「ダメよ!あたしがミレイユに頼まれたんだから!だいいちミレイユ狙いと分かって、あたしが渡すと思ってるの?」
「おっ!アレスの旦那だ!」
「え?ホント?」
その男の声に後ろを振り返ったその瞬間だった。
「あ!なにすんのよ!」
「悪く思わねーでくれよ。この砂岩板はオレがミレイユに渡してやるよ!じゃあな!あばよ!」
「ちょっと待ちなさい!アレスが来たなんて嘘ついて・・・って・・・あ、あら・・アレス・・・ホントにそこまで来てた・・のね?」
追いかけようとしたドーラの視野の片隅に、アレスの姿が入り、彼女はびくっとして立ち止まった。
(まー、ミレイユ目当ては気に入らないけど、いいカッコ見せようと、間違いなく持って行くわよね?アレスが追いかけてくることを考えたら、返ってこれでよかったのかもしれない。もっとも、返せと迫られ戦闘になったって、このあたしがアレスなんかに負けるわけないけど・・・。<ちょっと冷や汗)
そんなことを考えながら、ドーラはアレスに愛想笑いする。
「あは♪悪かったわね、さっき走り去って行った男に、えっと確か名前はフレッドだったわよね、そいつに、まんまと持っていかれちゃったわ。あんたも顔と名前くらいは覚えてるでしょ?タントールの酒場でも会ったし、ブンデビアの地下迷宮でも会ったわよねーえ?ほ、ほら、あいつ、ミレイユに惚れてるそうだから、ま、間違いなくギルドに持って行くと思うわ。あ、そうだ、報酬目当てだったんなら、あんたの取り分、あたしがミレイユにかけあってあげてもいいわよ。あたしはそんなものいらないから・・・」
一生懸命言い訳するドーラのその横を、アレスは、顔色一つ変えず、いや、まったくドーラの事など眼中にないとでもいうように、すうっと通り過ぎて行く。
「ちょっと、待ちなさいよ!苦労してスノーエレメンタルを倒したのに、ちゃっかり目的物をあたしに取られて、頭にもこないの?一言くらい文句を言ったらどう?それでも男?」
シカトに頭に来たドーラは吼える。


「待ちなさいっ!アレス!!あたしを無視してただで済むと思ってんの?!」
いくら罵声を浴びせても、うんともすんとも返事がない。まるっきり無視して足早に来た道を氷穴の出口に向かって戻っていくアレスを、ドーラは追いかけ始めた。
「待ちなさい!アレス!だから、砂岩板はあいつに任せればいいって言ってるでしょ?」
慌てて追いかけたドーラは、注意散漫になり、来た時には気付き回避した落とし穴のこともすっかり忘れてしまった。
「アレス!聞こえないの?!」
あと少しでアレスに追いつく。アレスに届く!
その肩に手をかけようと、腕を伸ばしてダッシュしたその瞬間、ぽっかり空いていた地面にドーラは吸い込まれていった。
「きゃぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・」



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