**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その25 電磁波スライムでマッサージ♪

 

「きゃっ!」 
「いや〜〜・・・・」
「いったーーい・・・」
「きゃ〜〜〜〜・・・・・・・」

身を切るような空気が支配するイヴェールの氷穴。
普段はその冷気が示す静寂さに包まれているそこは、ドーラの黄色い悲鳴とその木霊で賑やかになっていた。/^^;

「もう!なんなのよ!ホントに!暖を取るため(身体を保護する為)火精のヴェールを纏ってるのよ?(目には見えないけどね。能力のある人なら透明な淡い赤い膜があたしの全身を包んでることが分かるはずよ)・・・なのに・・・・普通の氷ならそれで多少は溶けかかるのに、ぜんぜんよ?加えて、なに?このツルツル?まるで誰かがやすり(笑)でもかけて表面を加工したみたいにツルツルよ?そりゃこの冷気の上、太古からの氷穴だってきいてるから、しっかりしまった万年氷だからだろうけど・・・」

通路はほとんどスケートリンク状態。慎重に足を運ぶのだが、それでも滑ってしまう。
が、もとより運動神経は抜群のドーラ(ほんとか?)、その黄色い悲鳴が氷穴内に木霊していたのもしばらくの間だった。
あとは、もうすっかり慣れ、華麗な滑りを見せるドーラだった。(おい!

かといえ、その滑りは、不自由なものでもあった。というのは、自分が思った方向には滑れないのである。ところどころそれぞれ傾斜を持って表面を形成している為、途中で右へ曲がりたくても、あるいは、その上を通過して再び来た道を戻ろうとしても、どうしてもそうはできないのである。見た目では傾斜角度などほとんどないように見えるのだが、どうしても一方通行にしか滑れないのである。
そして、その先が穴・・・というトラップ?は、もちろんあちこちにあった。
(ふん!落とし穴がなによ!そんなの慣れてるわ!)
下の層に落ち、戻ってくる道が分からず苦労もしたが、そこは今までの経験でもそうである。ひび割れて崩れかかった壁はないか、隠し通路的なところはないか・・・ドーラは慎重に調べ、一つ一つクリアして氷穴を奥へ奥へと進んでいく。


「きゃ〜〜〜・・・か、壁・・・・壁が〜・・・・」
アイススケートもかなり慣れ、氷の意思通りに滑っていたドーラは、前面に壁が立ち房が手散る事に気付いて、思わず叫んでそれが柔らかいことを祈る。

−ドコ!・・・ガラガラガラ・・・−
「いった〜〜・・・・・」
スピードに乗り、その壁へ激突したものの、やはり多少は柔かったのだろうか、行き止まりで道が見つからず困っていたドーラは、崩れたその壁の向こうに新たな道を見つけて、にんまりすす。

(ふん!最初から怪しいと思ってたのよ!)
誰に粋がっているのか、そんなことをつぶやいてからドーラは痛みの走る箇所をさすりながら立ち上がる。

と、
−シュルシュルシュルル・・・・−
「え?何?これ?」
それは、壁の向こうから飛んできた。あっという間にドーラは柔らかく細く、そして、ネバネバした糸にぐるぐる巻きにされていた。
「こ・・これは・・・・・蜘蛛ね?」
顔だけ自由、あとは雪だるまかこけし状態になったいや、蓑虫状態か?ともかく、それまでの経験で次には巨大蜘蛛が襲いかかってくる状況がドーラの脳裏に鮮明に写る。
「そう簡単に餌になってなるもんですかっ!」
予想通り、おいしそうな餌に喜々として走り寄ってきた蜘蛛を見て、ドーラは思った。
(あら、想像したより小さいのね?今まで迷宮で出会った蜘蛛と比べたらかわいいもんじゃないの。)
などと余裕のドーラ。一応瞬間的な思考である。
よだれをたらし、鋭い牙を大きく開いてドーラに飛びかかってきたその蜘蛛は・・・・ドーラに接触するコンマ数秒前に、彼女が召還した火精の炎に包まれ焼けこげ消滅した。

「悪いわね、魔物類には手加減しない主義なのよ。もうちょっと餌は選びなさいな。」
襲いかかってきた蜘蛛と一緒に炎を受けたドーラ。だが、ドーラは暖をとるため炎のヴェールを纏っている。そのヴェールの炎が新たな炎をはじき、ドーラの身体はダメージを受ける事はない。

では改めて奥へ・・と思い通路の先を見たドーラの視野に、筋肉隆々のマッスルマンの姿が見えた。そしてその背後には、ぴょんぴょん跳ねるスライムの姿も。
「え?・・・・・・なんだかあれこれいそうね?面倒だから、火精に片づけてもらいましょ♪」
火精の杖を構えると、ドーラは続けざま3体のサラマンダーを召還する。

「じゃ、お願いね♪火傷はしなかったけど、壁に打ち付けたときの衝撃であちこち痛くて・・・ちょっと休憩してからいくわ。」


−シビビビビビビ!−
「ああ、いいわ♪気持ちいい〜〜♪打ち付けて固くなった筋肉がほぐれるわ♪」
そして、うまく火精の攻撃を避け、ドーラに襲いかかってきたスライムを1匹捕まえると、それを電磁治療?に使うドーラ。
秘境にあっては、利用できるものはなんでも利用するというのが、探索者の常である。(ほんと?
通常スライムはひんやりしている。傷めた筋肉を冷やすつもりで捕まえたドーラは、それが電撃網が出せる事を発見してにんまりした。
冷却作用と、電磁波マッサージ。
ドーラはしばしそこで、休憩し、あちこち痛む身体の治療をすることにした。
(この氷穴は入り組んでいる上に、まだまだ奥深いのよ。回復ポーションは限られてるから、なるべく使わないようにしなくちゃ♪)

うらめしげに自分を見上げて電磁波を出し続けるスライムに、ドーラはにっこり笑いかけていた。
「ちょっと、ちょっと!それでもモンスターなの?そんな電磁波じゃ、効かないわよ!もっと気合いを入れて放出したら?!」
それは、火精がそのエリアのモンスターを完璧一掃するまで続いたという。




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