**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その22 相打ち?爆発と共に

 

 「黒こげになりたくなかったら、道を開けなさいっ!そこをどくのよっ!」
直通階段からのドアを封じられたことに腹をたてたドーラは、ものすごい形相で城内の通路をひた走っていた。
その剣幕には、彼女を見かけた魔物や兵士たちも尻込みするほどだった。

そして、以前はしっかり扉が閉じられていた玉座の間への正面扉、その大扉を勢いよく開き放ってドーラは飛び込む。


「おやおや・・これはこれは・・・・」
予想通りゾールはそこにいた。

敵陣の中を超特急で走ってきたドーラ。だが豪奢な金髪を乱し、荒い息をして戸口に仁王立ちして睨んでいるその姿は、見惚れてしまうほどでもある。
視線こそきついが、汗を含んだその豪奢な金髪が風合い良く乱れ、からみあって肩にかかっている。その肩から続いて露わになっている彼女の艶やかで均整のとれた見事な肉体は、息切らすほどの運動のせいで、ほんのり赤く染まり、男なら思わずごくりと唾を飲み込んでしまうだあろうと思われた。
「ゾール!よくもやってくれたわねっ!」
すっと杖をゾールに向け、ドーラは吠える。(これがなければ、ナイスバディーの究極の美女で通るのだが・・・しかし、こうでなければ、ドーラではない)
「さすが同じ師を仰いだ妹弟子。あの地下迷宮を見事脱出してくるとは。」
「ふん!あんたなんかに妹弟子なんて言われたくないわ。お師匠様と道を違えただけじゃなく、悪に手を染めたあんたなんかにね!」
「おやおや、あまり怒ると美容に良くないですよ?せっかくの美女が台無しというものだ。」
「見くびらないでほしいわね。美女は怒っても美女なのよ!(お〜〜い!
「ははは・・相変わらず勢いだけはいいとみえる。」
「なによ、どういう意味なのよ?」
「その調子でアレスに向かっていっては、しくじり続けてたんだろう。」
「な・・・・・・」
「どうやらここの迷宮の穴は相性がさほど良くなかったようだな。やはりごろごろ岩とセットで用意すべきだったようだ。」
「言ってくれるわね、ゾール、ということは、あたしがお師匠様の敵だとアレスを追ってたその様子も手下に追跡させてたってことよね?・・・ホントは本当の意味での敵はあんたなのにっ!」
「ほう、少しは利口になったか?」
口端で笑うゾール。その少し小馬鹿にしたようなその笑みにドーラの怒りはますます燃え上がる。
「許せないっ!大魔導師バルカンの名をかけて、この場であんたを倒す!」
「はーっはっはっは!やれるものならやってみろ!お前ごとき小娘に、暗黒のパワーをこの身のうちに引き込んだ私に勝てるものか!」
「な、なんですって?暗黒の・・・・?」
ゾールが言葉にしたその力を開放した。その全身を逆なでし圧するような真っ黒な威圧感に、さすがの勝ち気のドーラも圧倒され無意識に後ずさりする。
(か、身体が動かない・・・・金縛りにあってるみたいに・・・・)
ダメか?絶対なまでの力の差をみせつけられ、それでも必死でその呪縛から逃れようとはするものの、覚悟が必要なのか、と感じ始めたその時、ふっとその圧力がドーラの身体から消滅した。
『ドーラよ、お前の力ではまだ無理だ。今のお前では・・』
「お、お師匠さま?」
ドーラを力強いバルカンの声と気が取り巻く。
『ゾールの力はわしが抑えていよう。ドーラ、この国を、この世界を守るのじゃ。暗黒神の支配から!』
「はいっ!お師匠様っ!」
「ふふふ・・・はははははっ!おいぼれめ!血迷ったか?!お主ごとき亡霊の力など、この私の暗黒のパワーを抑えられるもの・・か・・・・・う"・・・・・・・・」
死して尚大魔導師、確かにバルカンの力はゾールのその暗黒パワーを抑えていた。
『長くは持たぬ。ドーラ!急ぐのじゃっ!』
「はいっ!」
「く・・・くそっ!」
動きを抑えられたゾールは、それでも暗黒のパワーを振り絞り、そこに己自身の分身を2体召喚する。
−ジャッ!−
空を裂く暗黒精神波がドーラを襲う!
それを避け、ドーラは玉座の間を、所狭しと飛翔し、炎を繰り出して反撃する。
(困ったわ・・完全に自分の身を盾にしてゾールを守りながら、向かってきてるわ。あいつらの守りに死角がない・・・・こっちからの攻撃は全て跳ね返されてしまう。・・・・)
ドーラは焦った。そう、風精、火精、水精、など精霊魔法、ドーラの元から持つ炎の攻撃魔法、全ての魔法は彼らシャドーによって跳ね返されていた。
まるでドーラの放つ攻撃弾道は、完璧に見切っているとでも誇るように彼らは余裕たっぷりの足取りで動いてた。
(まったく!こ〜〜んな時にアレスは何してんのよっ!いつもなら、あたしのピンチの時には出てきてくれるじゃないのっ!なに、いつまで地下迷宮でちんたらしてんのよっ!!!!)
と毒舌を放ちながらもドーラは青ざめ始めていた。
バルカンの抑える力も徐々に弱まってきているのか、ゾール本体から、暗黒パワーが、強まり始めていた。
(少しでもお師匠様が抑えてくれている間に倒さなければ!)
焦るドーラ。が、相変わらずシャドーたちが、彼女の攻撃を遮り続けていて、ゾール本体を狙ってもゾールには命中しない。
そう、こういった場合、分身など倒しても本体を倒さない限り、いくらでも復活してくる。それはそれまでのこういった輩との戦いでドーラは学んでいた。だからこそ、少しでも隙を見つけては、ゾール本体に攻撃魔法を撃つのだが。

−シャシャッ!ジャッ!!!−
シャドーからの攻撃は、ゾールの力が少しずつ回復してくると共にますます激しく、そして、強力な攻撃波となってドーラに襲いかかってきていた。
(お師匠様・・・・あ、あたし・・・あたしじゃダメかも・・・あたしの力じゃ・・・・)
攻撃を避けるのも、そして反撃するのも、もう体力も精神力もつきかけていた。バルカンへ自分の不甲斐なさを謝りつつ、2体のシャドーに挟まれ逃げ場を失ったドーラは、死を覚悟して自分にぐんぐん巨大化しつつ向かってくる暗黒波を、霞みつつある視野の中にとらえていた。
(簡単に殺られるものですかっ!)
最後の魔力を振り絞り、ドーラは特大の火炎球を自分に向かってくる2体のシャドーに投げつけた。彼らの精神波が自分の身に直撃することを覚悟して。

「ぐ・・・・・ぐぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜・・・・・!」
と、その時だった・・・・
「え?な、なにがどうなって・・・こうなったの?」
不意に空気を震撼させ鳴り響く雷鳴のように、そして、地の底から絞り出てくるようなぞっとする断末間の叫び声と共に、シャドーは一瞬にして消滅し、ゾールがその場に倒れた。

「え?・・・だ、だって、あたしの攻撃は何一つゾールには当たってなかったのに?今だって・・あたしはシャドーに向かって放ったのに・・・?」
ゾール本体が倒れたことでシャドーも、そして、ドーラ目がけて空を飛んできていた精神波も一瞬にして消滅してしまっていた。

それは、それまで本体への攻撃をその身で受け、・跳ね返していたシャドーが、初めて自分自身に放たれたドーラの火炎球を、咄嗟に跳ね返した際、運悪く(ドーラにとってはこれ以上ないラッキーなのだが)その跳ね返した火炎球が本体に直撃してしまったのである。しかも1発目ならまだゾールも倒れるまではいかなかった。が、バルカンの抑える力も弱まってきていた為、自分自身もドーラを攻撃しようと、テレポートであちこち転移移動し始めていたのである。
止まっている本体に跳ね返した火炎球がいかないよう、自分の身を充てることはシャドーにとってたやすい事だった。が、今は本体も移動している。転移先は、本体とシャドーの関係である程度計れるが、咄嗟のときでは、予測はたたない。
結果、ゾールは最悪の事態を自分で呼び込んだ、いや、自分でシャドーが跳ね返したドーラの火炎球の真正面へ転移したこととなった。そして、1発目のそれを受け、慌てて転移したところに、もう1体のシャドーが跳ね返した火炎球が飛んできた・・・ということなのである。(ゲーム上実際あった事実です、はい。/^^;)
もちろん必死でシャドーとの攻防を繰り返していたドーラには、そこまでのことは分からず、不思議に感じるばかりではあるが、結果オーライならそれでいいのである。(/^^;
(火精にでもこのときの事を聞けば、答えてくれるだろうが)


「ゾール・・・」
疲れ切った身体を引きずるようにして、ドーラは、ゾールの死亡を確認するため、傍に寄った。
「く・・・くそ・・・・この私が・・・お前ごとき小娘にしてやられるとは・・・・・こ・・このままではすまさん!お前も・・・お前も道連れにしてやるっ!」
虫の息の元、身動き一つできなかったが、ぎっと近寄ったドーラを睨みあげたゾールのその形相はすさまじかった。悔しさと憤りを込めてドーラを睨むその顔はまさに悪鬼のそれ。
(いけない・・・逃げなくっちゃ・・)
ゾールの言葉とその表情で彼の覚悟を悟ったドーラは瞬間的にきびすを返して扉に向かおうとする。が、まだ身体を反転しないうちに、自爆するその激しい衝撃と爆発音、そしてものすごい爆風がドーラを襲った。
(・・・まずったわ・・・自爆を予想してなかった・・・これで、一応相打ちに持ち込んだわけね、ゾール?・・・それでも・・いいわ・・・・ゾールを倒せたのなら・・・・)
それは瞬時の思考。そして、瞬間的に防御魔法を自分の周囲に張ったものの、爆心地であるゾールに近すぎた。
爆発時の衝撃と爆風に包まれ勢いよく飛ばされるドーラに、もはやその意識は保たれていなかった。




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