**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その19 魔に魅入られし王城

    

 「何よ、これ・・・・1階、2階は兵士だったけど、地下1階に下りたら・・・と言って普通に下りたんじゃなくて、穴に飛び込んだんだけど(断っておくけど、落ちたんじゃないわよ?他に進められる道がないから落ちるのも必要と思って落ちたのよ!)・・・地下1階から、もう巨大ラットに骸骨?・・・これが人の住む所っていえる?謁見室はもぬけの空だったし、1階からあちこちトラップがびっしりだし・・・・これは、もう・・・王様に気に入られてなんて段階じゃなく、おそらくゾールは、王を葬ったかどこかに幽閉して、実権を握ったってわけね?」

城に入ったドーラは、各階をしらみつぶしに調べて回った。
どの兵士も生気を抜かれたもぬけの殻状態の戦闘人形。ドーラの姿を見るやいなやかかってきた。
「まー、城の兵士なんて敵じゃないけど・・・・魔物じゃないから、やっぱり倒しにくいわよね。」
ドーラはそれまで装備していた火精の杖を風精の杖に変え、兵士たちは突風で吹き飛ばして気絶させることにした。
もちろん、魔物である巨大ラットや飛空しゃれこうべなどは、粉々に粉砕。/^^;

そして、地下1階にあった武器庫の奥からの隠し通路の先に潜んでいた宮廷魔導師から、特殊なカギを奪い取ると、ドーラはわざと武器庫のトラップにかかって、地下2階へと落ちた。
そう、時間制約のあるその武器庫は、立ち止まってきょろきょろしていると、床がなくなっていく仕掛けなのである。四隅以外通路は全てそうだった。歩いていく後から床が消滅していく。まるでドーラを追いかけてくるように。最初はどきどきしながらともかく内部の把握をと思って通っていたドーラだったが、四隅は落ちないことを発見してからは、それを上手く利用し、すばやく武器を回収するということをしてのけた。
おかげで、いろいろな武器が入手できてほくほくのドーラ。中にはドーラでは使えそうもない手裏剣やブーメランなどもあったが、そういったものは売ればいい。元はタダ、大もうけである。

(え?それじゃ盗賊ですって?いいのよ!今や魔の住処となってしまってる城なんだから!こういったものはない方が安全なのよ。)

王城、地下2階、そこはまさしく魔が支配していた。
おそらくゾールの操り人形であろうと思われる宮廷魔導師、そして、これこそ魔と言わずして何だろう。自分の頭部を片手に抱え、もう片手には鋭い剣をかまえる、甲冑の魔物、デュラハン。そして、命を奪われた人々の怨念が取り憑いた剣、ソードオブカース。それらに炎系魔法は跳ねられ効き目がなかったが、風精の術は十分に効いた。
ドーラは、風精の杖で、風精を召喚し、高みの見物よろしく、その後を鼻歌交じりについていく・・・というのは冗談だが、風精たちが、敵をきれいに一層してくれた後を、隠し通路はないか、あやしい壁はないかと周囲に注意を払いつつ進んでいく。

敵モンスターには、精霊の力で、苦労することなく進んだドーラだが、彼女を苦労させたのは、崩れかかった壁である。
通路の隅に転がっていた大金槌を引きずりつつ、壁を崩して進んだのである。それも、1カ所や2カ所ではなかった。

「ああ〜もうっ!こんな時アレスはいったい何してんのよ?!アレスでなくても、あの筋肉女でもいいけど・・・まったく、まだここまで探索が進んでないなんて、何うろちょろしてんのかしら?まさか、掴まったわけ・・じゃないわよね?」
ふとそんな心配がドーラの脳裏を過ぎり、彼女は慌ててそれを打ち消す。
(なんといってもアレスだし、それにあの筋肉女にしても、掴まるようなドジはしないわよね?)
それに、アレスにならまだしも、啖呵を切った手前、たとえここで出会っても、筋肉女のアンバーなどに頼みたくはなかった。
ということで、重い大金槌を引きずって、壁を崩し続け、通路を作り、その先にあった道へと出る。
(まったく!まるで通路を壁で塞いだって感じね。この先に何かを封じてそれを隠すかのように・・・)

そんなことを考えながら進んだドーラは、その先にあった牢屋の中に一人の兵士を見つける。
その身なりから近衛兵だろうと思われた。
彼は、突然のしかも予期し得ない訪問者に驚きながら、牢の奥から、鉄格子まで走り寄ってきた。
「君は?・・・この城の人間じゃないな。」
「そうね。」
「私はガンテス。この城の近衛兵をしていた者だ。」
「やっぱり。」
そう答えつつ、ドーラは、鉄格子のあちこちを調べる。もちろんカギはない。だから、なんとか壊せないかと思ったのだが・・・頑丈なそれは、ドーラの力ではびくともしない。
「ね?つまり、お城のこの状態ってゾールの仕業?」
「よく分かるな。そうだ。」
ガンテスは忌々しげに頷きながら答えた。
「ゾールが謀反を起こしたのだ。国王陛下もどこかに幽閉されているはずだ。」
「国王も閉じこめられているの?でも、殺されたわけではないのね?」
「たぶん。私がここに閉じこめられているように。」
「・・・世も末ね。・・・ちょっと待ってよ、じゃあ、あたしを賞金首にしたのは、誰なのよ?やっぱりゾール?」
「そうか、ゾールは君に賞金をかけたのか。なるほど、魔物がひしめいているここまで下りてこられるだけはある。ゾールは君のその力を警戒したのだろう。頼む、国王陛下を助けてくれ。陛下が助かれば、手配を取り下げることもできる。」
「そう・・ね・・・・。いくらゾールでも、本物の国王が出てきたら、威張り散らしてるわけにはいかないわよね。わかったわ、どこに幽閉されているかわからないけど、ともかく、私はゾールを探してここをくまなく調べるつもりなのよ。幽閉場所も発見できるかもしれないから、一応それも心がけておくわね。」
「かたじけない。」


そして、あちこちトラップに邪魔されながら探索を続けたドーラは、地下2階の奥の奥、独房の中に囚われている国王、ギゼールII世を発見した。

「ゾールの手先か?」
暗闇の中、少し威厳を含んだ声がドーラの耳に響く。
「いや、そのようには見えぬな。」
奥から鉄格子のすぐ傍まで歩みよってきた男の服装は、一見して国王のものだと分かるそれだった。
「もしかして、あんた・・・」
本物らしいその風格に、ドーラは慌てて言い直す。
「あ、あなたは国王・・陛下?」
うむ、と頷き、男は言葉を続けた。
「余は国王ギゼールII世・・。だが、今では何の力もない。」
瞳に悲しげな色を浮かべ、ギゼールは話す。
「小国フィベリアは、今やゾールの思うまま。奴の目論見にもっと早く気づいていれば・・。」
幽閉されたその真っ暗な牢獄の中で、どれほどこの男は後悔し、己の浅慮を呪っただろう。

「ゾール・・・お師匠様に代わって、あんたの悪行に白黒つけてやるわ!」

「ゾールと戦うつもりか?奴の魔力は計り知れぬ。そなたの気持ちは嬉しい。非常にありがたい申し出だが、その申し出、受けるわけにはいかん・・。」
ドーラの呟きを聞き逃さなかったギゼールは、慌てて止めた。
「破門された兄弟子とはいえ、同じバルカンの教えを受けた者同士。ゾールの魔力が計り知れないというのなら、このあたしだって、決してあいつになどひけを取ってないわ!」
「おお、大魔導師バルカン殿の弟子であったか。なるほど、ここまで来れたのもそれで納得できる。常人ではいかに鍛えぬかれた兵士であっても、魔物には到底立ち向かえぬのでな。我が精鋭の兵士たちも奴の魔力の前には無力だった。」
「でしょうね。ゾールはなんといってもお師匠様の一番弟子だったんだし・・。」
「・・・・」
「大丈夫!命をかけてでも、ゾールを止めて見せるわ!お師匠様の名誉の為にも!」
「・・そうか・・・命をかける心構えができておるのだな・・・。余のことはどうでもよい。ゾールの企みは、おそらく国政の実権だけではないだろう。事はフィベリアの存続に関わるかも知れぬ。」
「・・・人の世の存続かもしれないわね?」
「・・・人の・・世か・・・余は・・なんということをしてしまったのだ・・国王として止めねばならぬ立場であったに、むざむざそれを許してしまった。」
「大丈夫よ、このあたしが必ず止めてみせるから!」
「分かった。だが、くれぐれも気を付けるのだぞ。」
国王ギゼールII世の憂いと期待の視線を背に、ドーラは、再び探索を続けた。


が、ドーラのその意気込みをあざ笑うかのように、トラップが立ちはだかる。
行き止まりと鍵穴のない扉で閉ざされた通路。
「・・・ここに来るまで、くまなく調べたわよ。隠し通路は全て見つけてきたつもりなのに・・・・」
『直通階段  守護方陣を解除せよ』
絶対怪しい!そう思った開かずのドアの横にあったプレートを睨み、ドーラは地団駄踏んで悔しがっていた。




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