**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その17 祭りに浮かれ?

 

こじつけ画像ですが・・・


  

 「ちょっと、そこ行く美人なおねーちゃん♪」
「え?・・あたし・・・のこと?」
路地裏を歩いていたドーラに声をかける陽気なおじさんが一人。
「ねーちゃん、今暇かい?暇だったら寄っていかないか?」
「え?」
ナンパ?とも思いつつ、その悪びれない陽気な口調と朗らかな表情に、ドーラはつい応えていた。
「おいらカジノの呼び込みのアルバイトしてんだけどよ、どうもいまいち入りが悪いんだ。ねーちゃんが来てくれりゃ、いっぱい入ってくれると思うんだがなー。」
「え?あたしにカジノガールでもしろっていうの?」
「うんにゃ。そこまで言ってないよ。やってくれりゃ、言うことないけどな。だけど、従業員はもう人数足りてるし、ほら、なんてったって、従業員とじゃ、気さくに話せれないだろ?そこはさ、お客同士なら気楽にさ?」
「でも、あたし、お城に用事があるのよ。」
「よしときなって!あんなとこ行ってもな〜〜んにもいいことないぜ?ほら、そんなことよりさ、カジノで楽しみなって。それにな、闘技場もあるんだぜ。参加するも良し、賭けに加わるも良し♪楽しいぜ。」
「そうね〜・・・・。」
ドーラの手配書こそ貼ってないにしても、城内の兵士となると、それくらいの情報はきちんと行き渡っていると思われた。特に門番がお尋ね者を知らないわけはない。
カジノは様々な種類の輩が集まる。城内あるいは正門以外の進入路などの情報を入手できるかもしれないと思ったドーラは、その男の後をついていった。


そして・・・・
「きゃ〜〜♪またまた777よっ!ボーナスタイムに入ったわっ!」
カジノの中にその姿を消した数十分後、スロットに興じるドーラの姿があった。
「ほう・・ねーちゃん、ついてるなぁ。」
ドーラのマシンの周囲には、野次馬たちも集まっていた。
「よー、ねーちゃん、縁起担ぎにねーちゃんの出したコインを1枚くれねーか?あ、いや、くれとは言わねー、オレのと交換してくれねーか?」
「いいわよ♪勝手に替えていったら?」
時には1枚と数枚、替えていく奴もいたが、ついてるドーラはそんな小さな事は気にしない。そして、どこかうさんくさそうな人相の男と目が合うと、コインを交換する振りをしてぼそぼそと情報交換などもした。


そうしてひとしきりカジノで楽しんでから、ドーラは、そこで得た情報、妹ミレイユと連絡が取れるだろうアカシック・ギルドの連絡所へと足を向けた。

「アカシアの花冠が玄関口の上に飾ってあるわ。ここね?」
カジノにいた男から聞いた場所に来たドーラは、ドアノブにそっと手をかける。
が、カギでもかかっているのか、開きそうもない。
(普通のカギでいけるわね?)
ドーラは針金を取り出すとカチャカチャっと難なくロックを外して中に入る。

「留守だからカギをかけてあったのかしら?誰もいないし・・・テーブルとイスだけで、調べられるような書籍もないのね。」
がらーんとしたその部屋には、テーブルとイス、そして、空の書棚があるだけだった。

「おい!こんなところで何をしている?!」
不意に背後から声をかけられ、はっとして後ろを振り向いたドーラに男は言葉を続ける。
「貴様はドーラ!」
玄関から入ってきたその男の顔には見覚えがあった。
ミレイユに砂岩板を渡した時、彼女と一緒にいた男達の中の1人だとすぐ判断できた。
(そう言えば、あれはアカシアの花びらだわ。)
ドーラはその男がかぶっているベレー帽の飾りがなんだったかようやく気付いた。
(つまり、ギルドメンバーってわけね。とすると、ギルドの巫女となってるミレイユにとっては味方?・・・にしては、目つきが悪いわね。なぜだかこのあたしを敵視してるわ。長と仰ぐミレイユの姉のあたしを。)
そう考えている間も、彼女が受けた印象を肯定するかのような男の言葉が乱暴にドーラの耳には入り続けていた。
「よく王都まで来られたものだな。貴様に賞金がかけられたのは知っている。ゾールがしくんだこともな。」
「やっぱりね。」
ドーラは男の言葉をうけて、ふふん、と鼻で笑った。
「どう取り入ったのか、ただの宮廷占い師だったあいつが摂政となり、国王ギゼールII世をさしおいて絶大な権力を握ったんだ。」
「ふ〜〜ん・・大した出世ね。」
「城の連中はみんなゾールの言いなりなのさ。奴め、何を企んでいるのか・・・。」
「ミレイユは?ここにはいないのね?どこにいるの?」
「ゾールは城にいるはずだ。会って来いよ!降りかかる火の粉は払う。それがあんたの流儀なんだろう?その方がオレとしても都合がいい。あんな奴にバルカンの弟子を名乗られてはいい迷惑だぜ。」
男は彼女をぎろっとにらみ返すと、ドーラが求めた答えとは違った言葉を吐き捨てて立ち去っていった。

「あ!ちょっと!待ちなさい!」
慌てて追いかけたのだが、通りの人混みに紛れ、ドーラは男を見失ってしまった。


(仕方ないわね・・・・まー、ミレイユは彼らに守られているようだったから、あの子に害があるとは思えないから、よしとしましょうか。でも、なぜあたしまで敵視されなきゃならないのかしら?・・・・ゾールに会って来い?・・・言われなくても会いに行くわよ!大歓迎してくれたんだから、おまけをたっぷりつけてお礼してあげなくちゃね。)
ふとドーラの脳裏に、タントールを離れる前であったゾールの顔が浮かぶ。小馬鹿にしたようなゾールのいまいましげな顔。
(ふん!いつまでも非力な小娘のままじゃないのよ!見てらっしゃい!その首ねっこひっつかまえて、何を企んでいるのか白状させてやるから!!」

王宮の前のメインストリート広場でクリスマスのビッグイベントがある深夜0時。兵士とて人の子。門番や衛兵たちも、そっと抜け出てそのバカ騒ぎに混ざるという情報をカジノで耳にしたドーラは、手薄になったその時なら城内への潜入もたやすいだろうと判断して、時を待ってから、城門へと向かった。
城は24時間、猫の子1匹入れないほどの警戒態勢を引いている。加えて、正門以外の侵入経路はどこにもないということもカジノで聞いていた。
門番全員いないということはさすがにないだろうが、少人数なら、さほど大騒ぎにならず潜入できるだろう。ドーラはそう踏んでいた。  




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