**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その16 フィベリアへ

 


  

 「あっつっ!!!!な、なによ、あんたっ!」
川面から吹き上がってくる涼しげな風に、ついうとうとしてしまったドーラは、不意に襲った熱さに飛び起きる。
と同時に、何やら真っ赤な甲羅の亀ののうなものに突撃されそうになり、慌てて横に移動して避ける。
と、目標物に避けられたそれは、ぐるっとカーブして再びドーラめがけて飛んでくる。
「な、なによ、あれ・・・・まるで子ガメラじゃないの。」
そう、話に聞いたことのある空を飛ぶ巨大亀。クルクル回転させ、手足を引っ込めたその穴から火を吐くというそれと大きさと色こそ異なっているが酷似していた。
「このあたしに火を放つなんて、やってくれるじゃないの!ふふん、あたしの火炎のすごさを教えてあげようじゃないの!!」
そして、ぐるぐる回転の体当たりと火炎放射で攻撃し続けてくるそれと、ドーラとの戦いが始まった。

それは、テストゥードと呼ばれるモンスター。火炎攻撃と、その固い甲羅の全身を勢いよく回転しながらの体当たり攻撃を得意とするモンスターである。
かといえ、大した相手ではない。油断さえしてなければ、体当たりを避けるのは容易であり、その火炎は、どちらかと言えば、ドーラの放つ炎の方がその威力は数段上である。
が、なかなかヒットしないドーラに苛立ちを覚えたのか、仲間を呼んだ。

「ふん!そのくらいあたしにとっては、エアロビダンスよ!」
テストゥードたちの四方八方から飛んでくる体当たりをドーラはまるでダンスでもしているかのように、軽く、そして華麗に避ける。
(そうだわ!)
ふと思いつき、ドーラは、彼らを、その昔、川底の地下洞窟への入口があるらしいと聞いた崖の方へと誘導していった。

そして、そこで彼らを小馬鹿にする。
「あんたたちねー、もっと身を入れたら?そんななまっちょろい動きじゃ、このあたしになんか当たらないわよ。・・そうね、当たっても、そのくらいじゃ、あたしのシールド魔法で跳ね返されるのが落ちよ。」
ドーラのその言葉が理解できたのか、あるいは、そのいかにも小馬鹿にしたような表情で理解できたのか、彼らは、それまで以上の回転に飛行スピードを上げてドーラに突進する。
それでもひょいとそれを交わすドーラ。そして、勢い余った彼らは、ドーラの思惑通り、ツタの生い茂った崖にぶち当たる。
(おりこうさんね♪その調子で頼むわね。)


そして、数十分後、ドーラは、ぽっかり口を空けた崖のその隙間の中へと体を滑り込ませていた。


−ピチョン・・ピチョン・・・−
岩盤の間からしみ出た水のしたたり落ちる音だけが響く狭く暗い地下洞窟は水路となっていた。だが、水かさはさほど深くはなかった。ちょうどくるぶしがかぶるほどだろうか。ブーツを履いているドーラにはそのくらいでは気にはならない。
加えてそこには邪魔になる魔物の類はおらず、意外にもすんなりと対岸へ出ることができたのである。



−ざわざわ、がやがや・・・−
対岸に広がる森を抜けるとそこは国都フィベリアの町並みが見えていた。


「ふ〜〜ん・・・あたしの手配書はどうやらタントールだけのようね。・・・あのジャングルと川を越えられるわけはないって踏んだわけ・・か。・・バカにしてくれるじゃないの、ゾールも。」

行き交う人々でにぎわう国都の街道。そこには、ドーラの張り紙も、彼女を警戒している兵士の姿もなく、その手の心配はいらないと判断できた。

「あら、行き交う人たちがバカに陽気だと思ったら、クリスマスっていうお祭りシーズンなのね。確かこれって、どこかの国のお祭りを真似したんだったわよね。発祥地では宗教行事だったらしいけど、ここでは、単にお祝いごとになってるのよね。商人たちが上手に利用してるっていうか・・・・まだ続いてたのね。」
その様子ににんまりしながらも、万が一ということもあると思ったドーラは、大通りから小道に入り、早々にその喧噪の中に姿を消した。  




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