**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その15 密林の決闘

 


  

「あんたがジャングルのラスボス?」
ふふん♪と余裕の笑みを浮かべ、ドーラはようやく出会えたキングコングもどきと対峙していた。

「まったく・・・普通のジャングルだとばかり思ってたら、トラップ山盛りじゃないの。苦労しちゃったわ。いったい誰がこんなトラップを仕掛けたのかしら?・・・・秘宝らしき秘宝があるわけじゃないのに、ダンジョン顔負けよ!」
ドーラの3倍もあろうかと思えるその巨大なゴリラに杖を突きつけ、きっと睨みながら彼女は文句を言っていた。

カギのかかった門の先に広がっていたのは、まさしく熱帯の密林。
その道を強行に分け入ったドーラを待っていたのは、ドーラの進行を妨げる植物の太く成長したツルと、ジャングル特有の湿気を含んだ生暖かい空気、そして、数々のトラップ。そして、野生なのか魔性なのか区別のつきにくいものたち。

陽はからみつくように生い茂った木々によって遮られているというのに、じっとりと汗が滲み出てきそうな生暖かい光がドーラの肌を包み、得体の知れないリズムと獣の咆吼が空気を震わせて耳に、そして、全身に届いていた。ぬるま湯のような空気とその空気が醸し出している単調なリズムが、ともすれば催眠効果をもたらした。僅かでも気を緩めれば、方向感覚さえ失いそうだった。
その睡眠効果をさまたげてくれたのは・・誰あろう・・・・野生なのか魔性なのか区別がつかないそれらだったが。

巨大ヒル、殺人蜂の集団(巣付き)、不意に触手を伸ばしてくる食肉ツタ、そして、肉食獣ジャガー。
まー、ジャガーくらいは、火を放ってやればすぐ追い払える。が、苦労したのは、やはり殺人蜂だろう。巨大な巣をジャングルのあちこちに造っている彼らは、その巣ごと燃やさない限り、後続部隊はそこから出撃してくる。まさに軍隊蜂の要塞である。
そして、ドーラが青くなって、思わず逃げてしまったのは、巨大ヒルとの最初の邂逅。彼女の腕ほどの太さと長さがあろうと思えるそれは・・鋭い吸血牙をちらつかせた血の色をした口を大きく開けて、彼女の血を吸わんと飛びかかってきた。
その時・・・不覚にも、彼女は思わず叫び声をあげて後退してしまった。
そして、運悪く、そんな場面に、偶然アレスが出くわしたのである。
後退したそこにやはりジャングルへの道を選んだアレスがいたのである。
当然アレスとぶつかり、彼女はぶつかった反動で、その近くにあった落とし穴へ落っこちた。
ヒルなどに(などに、と軽く言えるようなものではないのだが)驚いて悲鳴を上げて逃げた場面を見られただけでも屈辱だというのに、結果としてアレスに突き飛ばされて落とし穴に落ちたことになったドーラ。その怒りは、恥ずかしさも手伝ってすさまじかった。
が、例のごとくアレスは彼女を助け上げるわけではない。ただ、真っ二つに両断された巨大ヒルがドーラの落ちた穴の中に落っこちてきたことから、一応彼女を襲ったそいつは片づけてくれたらしいのだが。
「そうじゃないわよっ!私が穴に落ちたから、当然こいつはアレスに向かっていったのよ。だから、自分に襲いかかってきたヒルをぶった切っただけよ!勝手に解釈して、あたしにアレスの恩を着せようたって、そうはいかないわよっ!!」
ドーラの雷のような反論が聞こえてきそうですが・・・・はい・・・。/^^;



ともかく、国都フィベリアへ向かうジャングルの途中には、どうやら古代の遺跡があったらしかった。といっても、長年の風化で跡形もなく、それらはすでにジャングルの一部になってしまい、原型が分からないほど、太いツルや草木に覆われ侵食されてはいた。が・・・所々、その肝心な通り道を塞ぐ門があるのである。
その門を開けるため、ドーラはジャングル中を幾度となく往復し、スイッチを探さなければならなかった。他に道はないのである。ただでさえいらついてくる高温高湿度の中を、そして、襲いかかってくるそれらと応戦しながら、何度も往復させられたのである。
当然のごとくドーラのイライラ度は高まる。そして、それはその巨大猿に向けられた。


「覚悟なさいっ!丸焦げにしてあげるからっ!!」
ドーラが叫ぶと同時に、彼女の周囲に炎が立ち上がる。

そして、逃げればいいものを、巨大ゴリラも暇をもてあましていたのだろうか。ドーラに突進してきた。

お絵かき掲示板で14分で描いた代物/^^;



「遅いのよ!すかぽんたん!その炎をバリケードを通れないようじゃ、ラスボス失格よ!」
格好の獲物!(それとも遊び相手?)と判断し、嬉々としてドーラに向かってくるゴリラは・・・・彼女にたどり着く前に、炎に包まれていた。

「・・・ったく、だらしないわね!ラスボスってんなら、そのくらい軽く避けて来なさいよっ!」

炎の中をくぐり抜け、自分に襲いかかってくるだろうゴリラを予想して、身構えていたドーラは、当然落胆の色をその整った顔に浮かべ、勢いよく燃えさかる炎によって作られた風によって舞い踊っている豪奢な金髪がゆれるその頭をぽりぽりかいてあきれ果てていた。


して、奥になんとか通れる獣道を見つけ、彼女はフィベリアとの行く手を阻む、川へと出た。
それは、川幅、急流、どれをとっても渡れるものではない。
  

  
「さて、どうしよう?・・・・」
しかし、ここはドーラの故郷。育ての親であり魔導の師匠であるバルカンから、情報は得ていた。通ったことも、実際にそれを見た事もなかったが、川底の下に地底洞窟があるらしいという話だった。

「でも・・・ジャングルの道はもうずっと閉鎖されておかげで、誰も通った様子はなかったし、・・・地底洞窟の道というのも、先住民というか、ジャングルにあった古代遺跡の住人たちが川向こうとの行き来に利用していたらしいという話だけで・・実際にあるかどうかもわかんないのよね〜。入口を探すにしても、本当にあるかどうか・・・あったとしても、風化しちゃってて、判断しにくいだろうし、洞窟も落盤などで埋もれてしまってるかもしれないし。」

どんなに泳ぎ達者なものでも、その激流を泳ぎ切ることは無理だろうと思えるその川面を、いまいましげに睨みつつ、ドーラは考えていた。

(汗まみれの身体もすっきりしたいのに・・・この流れじゃ浸かるわけにもいかないわね。
それに、どうやら同じようにこの道でアレスも国都を目指しているらしいから、たとえ、河川敷に流れの緩いちょっとした支流か水たまりを見つけられたとしても、堂々と水浴びしてるわけにはいかないわよね。)


それでも、しばし土手に腰掛け、ドーラは川面に沿って吹き上がってくる幾分涼しげなその風に、身を委ねていた。
  




Back ・ INDEX ・ Next