**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その13 人魚の瞳

 


  

 「なによ〜〜〜〜?!ここはっ?!」
岩壁に『徒労の浜辺』と掘ってあったそこは、辺り一帯落とし穴だらけ。
(これみよがしに鉄球なんて落ちちゃてて・・・見え見えじゃない?)
が、いつもならほぼ?1歩置きの落とし穴も、今回は違っていた。落とし穴地帯なのである。1歩進もうにも進めない。
(誰よ、こ〜〜んなふざけたトラップ作った奴は?)
拾った鉄球を落として確認してもよかったのだが、もったいない。ドーラは全部歩いてそこ一体が落とし穴で湿られているのを確認したのだった。

そして、再び波の静かな海岸へ出る。
「え?」
ドーラがその浜辺へ出ると、正面にある岩がほのかに光を放った。
「なにか出てくるの?」
杖をかまえ警戒しつつ見ていると、そこに人魚の姿が見えてきた。
「何もの?」
神々しいような光を全身からはっするその人魚は、静かに目をあけると、ドーラに微笑んだ。
「この世には変えることの出来ない時の流れがあります。あなたはすでにその流れに乗ってしまった。まずは、この先の祠にある青き宝玉を探しなさい。」
「青き宝玉?」
それはいったいなに?と聞く暇もなく、人魚はすうっとその姿を消した。

「なんなのよ、いったい?・・・・誰もかれも勝手に人に頼みゴトして消えていって・・・まったく・・・・・」
が、他に道もない。必然的に祠への道を辿ることとなったドーラは、そこで、その祠を守っていると思われた魔物?に唖然とした。

「大きなカニ・・・これって、どれほどの食料になるのかしら?とてもじゃないけどあたし一人じゃ食べきれないわよ?ともかく、相手はカニなんだから・・ボイル?・・・といってもこんな大きいカニが入る鍋はないし、周囲にちょこまかと動いてる小さい(といっても結構大きさはある)カニはなんとか調理できそうだけど。」
ガスっとその巨大なハサミでの攻撃をかわしつつ、ドーラは考える。動きがさほどスピードがなかったのが幸運でもあった。
「じゃ、丸焼きよね、やっぱり?」
ダッシュして巨大カニと距離を取ると、ドーラは火精の杖をかまえて精神を集中する。
「火精よ・・・・・・・・猛き炎の精霊よ・・目の前の敵をその炎で燃えつくせ!」
ごごごぉ〜〜と勢い良く杖の先から火精が燃え上がる。

数分後、そこにはカニ肉の焼けた香ばしい香りで満ちていた。


「ふ〜〜ん、これが青き宝玉、青き瞳ね。・・つまり、人魚の瞳ってわけ?」
海の深い青を思い起こす透明なその宝石をドーラは布にくるむと腰袋に入れて、人魚のいた浜辺へと戻った。

「私は海洋の女神スキアの娘。砂岩板を携えし者に、青き宝玉を渡すことが我が使命。その役目もこれで終わりです。純白の聖地を目指しなさい。そなたの幸運を祈ります。」
「え?ちょっと待って!それだけ?・・・他に説明はないの?」
再び言うことだけを言って姿をけした人魚に、ドーラは吼える。
「ちょっとー!理由くらい説明しなさいよっ!」

(まったく・・・RPGっていつもこうなんだから・・・・無理難題、拒否できない依頼と探索・・・まー、それがなくっちゃ進行しないんだけど・・・。)
ぶつぶつ文句を言いながら、人魚が封印を解除した岩戸をあけてその先を進んでいったドーラの周囲を、不意にばらばらと数人の男達が取り囲んだ。

「ちょっとあんたたち!このあたしに何をするつもり?!」
啖呵を切ったドーラの視野に、男達に続いて走り寄ってくる一人の少女の姿がみえた。
「ミレイユ?」
「ドーラお姉さま。無事だったのですね?」
「ミレイユ、こいつらは何ものなの?」
ドーラを囲んでいた男達に包囲を解くように命じたミレイユをドーラは不思議そうな目で見る。
「アカシック・ギルドの者です。この地に伝わるアカーシャの力。亡き師匠バルカン様の意思により、私はアカーシャの巫女としてギルドを守ってきました。」
「アカーシャ?アカシック・ギルド?」
「今では私が巫女を務めていますが、バルカン様はお姉さまをと考えていらっしゃったのよ。」
「あたしは巫女なんて柄じゃないわ。」
「それより、私たちと一緒に来てくれますね?」
「ちょっと待って、ミレイユ、巫女だかギルドだか、なにがなんだか分からないわよ。それが一体どうしたの?」
「お姉さま、行きましょう。」
「ダメよ。まだバルカンの仇もとってないし、ゾールの奴にきっちりとお礼しないとね。」
「いいじゃないか、ミレイユ。砂岩板さえあれば、巫女が誰だってかまわないさ。」
男の中の一人がミレイユに言った。
「砂岩板?これのことね?こんなもん、欲しければあげるわよ。」
「待って、ドーラお姉さま。私たちと一緒に・・・」
砂岩板を手渡し、そのまま先を進もうとしたドーラをミレイユは引き留める。
「つもる話はあるけど、まずはゾールよ!奴を叩きのめさなきゃ、あたしの気が収まらないわ!」
「わかりました。町に戻るのでしたら、この先に抜け道があります。この鍵を持っていって下さい。」
「そう。ありがと。じゃ、もらっておくわ。」
ドーラの性格を十分知っているミレイユは、それ以上引き留めても無駄だと同行を諦める。
「お姉さま、またお会いしましょう。私たちは急いでますので。」
にっこり笑うと、ミレイユは、ばたばたといかにも忙しげに男達と走り去っていった。
「・・・まったく、なんなのかしら?ミレイユまでろくに説明もしないで・・・まー、いいわ、また会えるでしょうから。ともかくあたしは町へ戻ってゾールの居所を調べなきゃ。ゾールをぎっちょんぎっちょんのぎったぎたにしてから、人魚が言ってた純白の聖地ね。でも、純白の聖地なんて、どこにあるのかしら?あれ?・・・ちょっと待って、ミレイユが欲しがったのは砂岩板だけど・・・砂岩板を持っているものに、人魚の宝玉を渡すとかあの人魚は言ってたわよね?・・・じゃー、ミレイユが本当に欲しかったのは、これ?」
ドーラは思わず袋から青い宝石を取り出して見る。
「でも、どこへ行ったのかわからないし・・・」
ミレイユたちが、ドーラが来た方向へ行ったわけではなかったことから、他に使い道があるとも考えられた。
「まー・・・いいか・・。」
また会った時に聞けば、と思い直し、ドーラは先を進んだ。
 




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