**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その10 砂漠の激走

 

もうこのシーンはお約束ですね。 

  

 「きゃあああああ・・・」
ドーラは熱風舞う砂漠の中を疾走していた。
そう、お約束ごとのようなハプニングがここでも起きていた。
−ゴロロロロ・・・・−
必至で駆けるドーラを押しつぶそうと、背後から巨大な岩が彼女に迫ってきていた。
「な・・なんでこんなところにこんな仕掛けがあるのよぉ?」
半分息を切らしながらドーラは走り続ける。

そこは岩場に囲まれた砂地。砂漠の一区画。岩山に囲まれた狭い道を歩いていたときだった。
−カクっ−
「え?」
普通に歩いていた地面のそこだけ、踏み込めたのである。
「ま・・まさか・・・・・」
それまでの経験によるドーラの第六感がそれを予期させた。
−ゴロン・・・・ゴロン・・ゴロロロロロ・・・・−
「や、やっぱり?」
後ろをちらっと振り向き、視野の中に動き始めた巨大な岩を見つけるや否や、ドーラは駆けだした。
−タタタッ−
「冗談じゃないわよ・・・アレスは先に行ったんじゃなかったの?なんでワナが発動してないのよ・・っていうか・・なんでこんな砂漠のど真ん中にこんな仕掛けがあるわけ?」
岩陰に横道・・でなくとも、身体を潜めるだけのくぼみはないか、とドーラは走りながら左右に注意を払う。
「な、なによ、これ・・・・横道はあってもその先に岩があるじゃないの!」
−カクン−
「え?」
ドーラは再び同じ様なスイッチを踏んだ感じを受け青くなる。
−ゴロロロロ−
「ち、ちょっと、そう来るわけ?」
そう、ところどころに横道はあったが、ドーラが今走っている直線上の道とその左右に伸びているすぐ行き止まりの横道。2つの道が交叉している真ん中に、横道の片方にデデン!といすわっている巨大な大岩を動かすスイッチがあった。
つまり・・・横道へ逃れるわけにもいかないのである。今ドーラに迫っている岩は避けられるが、別の大岩によって潰されてしまう。もちろん、周囲を囲んでいる岩山はよじ登れるようなものではない。
−カクン・・カク・・・カチ・・・−
「な、なによ、いつくあんのよぉ〜?!」
両サイドに注意を払いながら、猛スピードで駆けているドーラに、いくつ横道があったかなど、数えている時間はない。が、いずれもスイッチ付きだった。

「え?ち、ちょっと・・行き止まり?」
そんな状態のドーラの目の前に険しい岩壁がそそり立っていた。
そして、その行き止まりの少し手前に、最後だと思われる横道があるような気配を受ける。
「い、いちかばちかよ!こうなったら最後の横道に駆け込むしかないわ!」
−ダダダダダッ!−
息もあがりかけていた。が、命がかかっている今、そんな事も言っていられない。

−カクン・・タタッ−
スイッチを踏んだとき、その傾斜で身体のバランスを失う。が、体勢をすぐ戻し、ドーラは、意を決して横道へ駆け込んだ。
−ゴロン・・・ゴロ・・・ゴロン・・ゴロロロ・・・−
「や、やっぱり・・・・」
荒い息を肩でしつつ、ドーラは予想通りのこの展開に希望を失う。
が・・・・
「今までの横道にあったのよりスピードが遅いわ。」
直感でそう感じたドーラは、ちょうど岩のない反対側に駆け込んだことを喜ぶ。
ドーラを追ってきている大岩が目の前を通貨するのが早いか、はたまた、今新たにドーラに向かって来始めている大岩がドーラを押しつぶすのが早いか。
−トクントクントクン!−
決して長時間ではないだろうその時間がドーラにはおそろしく長く思えた。
−ゴロゴゴゴーーーーー!−
地響きをたて、行き止まりとなっている直線コースを転がっていく大岩。
「今だわ!」
−タッ!−
−ゴロロロロ・・・・!−
−ズ・ズズン!−
−ズン!−
間一髪!ドーラは眼前に迫り来る大岩の激突を避けることができた。
「ふ〜〜・・・・た、助かった・・・。」
他にこれ以上トラップはないと判断したドーラは、その場にへたへたと座り込んでいた。
その瞳に、大岩によって破壊され、向こう側が見えるようになった岩壁が写っていた。


「よいしょっと。」
しばらく休んでいたドーラはようやく立ち上がる。
「こんな乾ききった熱砂の中にいつまでもいたら、干からびてしまうわ。早く町への道を見つけないと!」

ジリジリと照り強烈な日差しを浴びせ続けている太陽。
食料というものも持っていない。あるといえば、回復の泉の水を入れた瓶が数本と、毒消し草。
あとは幽霊屋敷で手に入れたスタッフや魔法の指輪、そして、カギ代わりになる針金。
どう甘く考えてもこのエリアの早期脱出が必要だった。

−ガコン−
「え?」
その音にドーラの心臓は跳ねる。もうトラップの嵐は過ぎ去ったと思って少し気が抜けた状態で歩いていたかもしれない、とその瞬間彼女は反省すぐ。
−ゴロロロロ−
確かに大岩がドーラをめがけて動き始めていた。
が、そのスピードもだが、ドーラとの距離を考えても、つい先ほどのトラップと比べると、なんてことのない甘いものだった。
「ふん!詰めが甘いわね?」
ちらっと横目でその大岩を見、ドーラは先を急ぐ。


「でー・・・なによ、今度は大岩を動かせっていうの?・・・・この熱砂の中を?・・か弱い女のあたしに?」
岩壁にスイッチらしきものがあった。が、その前には大きな穴がぽっかりと口を開いているのである。そして、そこから数メートル離れたところに、ドーラの背より少し高い岩が砂地の真ん中に、その存在を誇示するかのように置かれていた。
しかもその大きさは、ちょうどスイッチらしき紐がみえた岩壁の前の穴とほぼ同じ。そのトラップは2カ所もあった。
「こんな時、アレスはどうしたのよ?どこほっつき歩いてんのよ?」
確かに消えかかっていたアレスの足跡を追ってきた。方向は間違っていないはず、というより、周囲を険しい岩壁に囲まれているその砂漠地帯には、他に道は見あたらなかった。
「岩壁をよじ登って行ったっていうのなら別だけど。」
しばし岩壁を見上げてドーラは考える。
−ボロロ・・・−
確認のため今一度その壁を手で触ってみるドーラ。
が、それまでと同様、それは非常にもろく、とても登れるような状態ではない。

「ふう・・・」
いるのかいないのか、当てにならない人物を待つより、ドーラは自分でその重労働をすることを決意した。
「うーーん・・・・よーーいしょ・・・・よーーーーいしょ〜っと・・・」
−ズ・・ズズン!−
汗だくになって、ドーラはまず1つ目を穴まで転がしてくる。
「ふ〜〜・・もう一個しないといけないなんて・・・ちょっと休憩しなくちゃ動けやしないわ。」
カチリと岩壁にあったスイッチらしい紐を引きながら、ドーラは呟いていた。
と、その時、
−ゴゴゴゴゴ・・・−
「え?」
どこかで何かが動いている音がし、ドーラは疲れている事も忘れて、音がした方向へ急ぐ。
その方向にあるのは、巨大な1枚岩。ドーラがドアだと睨んだ場所である。そして、その岩のドアを開ける仕掛けが、今苦労してようやく引いたスイッチともう一つのスイッチのはずだった。
(両方じゃなくて、どっちかで良かったの?)
そう思いながらもう一つのスイッチの横を走り抜けたドーラは、今から彼女が大岩で塞ぐはずだった穴がすでに塞がれていることを発見する。
「な、なによ、これ?・・・ア、アレスね?あたしが苦労して転がしているのを無視して・・・」
メラメラとわき上がる怒りと共に、1枚岩のところへ駆けつけたドーラは、その事を確信する。

「ア・・アレス・・・あたしにあんな苦労させて、自分の仕事を減らしてドアを開けて自分だけ先に行ったわね!」
びくともしなかった1枚岩は横に移動し、そこには、ぽっかりと道が開いていた。
「アレスー!この・・卑怯もの〜〜!女に力仕事させて、それでも男なの?!」

怒りでそれまでの疲労もどこへやら。点々と続くアレスの足跡をきっと睨むと、ドーラは勢いよく走り始めた。




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