**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その7 幽霊屋敷

 

幽霊屋敷・・のつもり・・
とっても適当・・手抜きな絵でごめんなさい。m(__)m

 
  

 ゾールの使い、シャグベルに指定された屋敷は、墓地の東側から入った小道の先にあったなんとも妖しげな空気に覆われた屋敷だった。
貴族かあるいは豪商の別荘だったのだろうか、結構大きなその屋敷は、ひっそりとした冷たい空気と、どこからともなく漂ってくる死霊の臭いといったらいいのだろうか、思わず背筋を冷たいものが走ってくるような妖気のようなものに覆われており、茂みの間から見えてきたその姿に思わず引き返したくなるような気持ちにさせてくれた。
が、そのくらいでドーラが尻込みするわけもなかった。特に、今回のことはバルカンの死の真実がかかっている。ドーラにとっては何よりもその事が優先された、
「まるで死霊の館ね・・・で、ここを砂岩板を持ってくる場所に指定したということは・・・」
やはりゾールは味方なんかじゃない・・・ドーラはそう確信していた。
「つまり・・・8年前王様が手に入れようとしていた、あるいは、手に入れていたかもしれないけど、その魔の力を手に入れる為に、この砂岩板がいるというわけね?」
その人間が手に入れてはならない力・・それを手に入れる為に必要なカギであり、ゾールはそれを手に入れようとしている。
ドーラは手に入れた砂岩板を見ながら、しばし館の前で考えていた。
「それに、街の人たちは、ここを幽霊屋敷と言ってたわ。化け物がわんさといるから近寄るなって。」
ドーラの中で、8年前のバルカンの死に関する仮定ができかかっていた。
「でも、アレスが殺した事は・・・間違いないわよ!」
アレスを追って旅に出た8年間が無駄とは思いたくなかった心が、ドーラにそのセリフを出させていた。それに、その8年があって。はじめてゾールもその事実を発見できたわけである。
『巡り合わせ』・・・ドーラは自分と初めて会ったとき、そして、アレスとの初対面のとき、そう呟いたバルカンの言葉を思い出していた。


−ギ・・ギィィィィィーーーーーーーーーーーーーーー・・−
いやな軋み音をたてながら、古びてはいたが重厚な扉をあけ、中に入る。
入るとすぐ化け物のお出迎えを想定していたドーラは、そのシーーンと静まり返ったホールに出鼻をくじかれる。
が、それはすぐ単なる最初のフェイントだとドーラは思い知らされた。
スイッチを入れ、数秒間でその先にあるドアを潜らないと先へは進めない仕掛けからはじまり、そこはまるでトラップ館。・・・プラス、やはり死霊の館だった。
隠し扉に落とし穴、回る床、ゾンビと、そして、そのゾンビの死体を食べて巨大化したのか、巨大蛆虫。しかもその前なのか後ろなのかわからない先端から突如として突き出される太い針はまともに受ければ致命傷にもなりかねない。そして、久しぶりの生者の血を吸えるとさも嬉しそうに飛びかかってくる吸血コウモリ。


「ふ〜〜・・・・あっちもこっちも行き止まり、こういうトラップも慣れたけど、面倒よねー・・・・。どうしてこういうところってすんなり目的地に着かせてもらえないのかしら?」
そして、館3F、そこが屋敷で最後の部屋だった。他に隠し部屋などはないはずだ、とドーラは広めのその部屋に足を踏み入れた。
幽霊屋敷そのものの様子をみせていた他の部屋と異なり、その部屋は、周囲の重厚なカーテンといい、清潔に磨かれている家具といい、まるで人間の住むところのようだった。
「でも、人の気配はないわね。」
一応警戒しつつ、ドーラはその部屋へ足を踏み入れる。
−シャッ!−
カーテンを勢い良く開けてみるドーラ。が・・・何も起こらない。
この館の隅から隅まで回り、この部屋が一番奥の最後のはずである。
それとも、こんな妖しげな館ではなく、指定された館は、他にあったのか?
首を傾げながら、ドーラがその部屋から出ようとしたときだった。

−ガタガタガタ!−
「え?」
何もなかったはずのその部屋で、不意に家具を動かすような物音がして振り返ったドーラは、その光景に驚く。
「きゃっ!」
そして、もう少しで黒檀のテーブルの体当たりに突き飛ばされるところだった彼女は、それより一瞬早くそれを避ける。
「な、なによ・・これ?」
そこには、部屋いっぱいにぐるぐると飛び回る家具が・・。
「ブンデビアのお城の地下で、ポーションやアイテムのポルターガイズトに会ったけど・・今度は、本当のポルターガイストというか・・・家具なわけね?」
部屋からは出ないものの、1歩部屋に入ると、それらは容赦なくドーラを襲ってきた。
「ふん!これくらいでこのドーラ様が尻尾を巻いて引き返すと思ってるの?」
−ごあっ!−
それでも、大型家具の体当たりはきつい。1つや2つならまだしも多勢に無勢。四方囲まれたら不利である。
ドーラは、戸口のところに立って、飛び回るそれらに火炎を放っていた。


「こんなところに隠し通路があったのね?」
家具を全て燃やし尽くしたあと、大型テーブルが置いてあって調べられなかった壁に、それを見つけてドーラはほくそ笑む。
「ふん!ちゃちなトラップね。」


そして、その先に、あのゾールの使いだといった白豚・・もとい!真っ白な僧服のシャグベルがいた。

「おっほっほっほ!お待ちしておりましたよ、ドーラ様。」
ずかずかと近づいていったドーラを姿を認め、シャグベルはにたりと下品な笑いを浮かべる。
「もっともあなたではなく、砂岩板をですけどもね・・・。それはあなたが持っていても価値のないもの。砂岩板はいただきますよ。」
「え?」
取り出して手に持っていたわけでもないのに、砂岩板は勝手にドーラの元からシャグベルの手へと引き寄せられていった。
「ちょっと!どういうつもりよ、これ?!」
「これさえいただいたら、あなたは用済みなのですよ。残念ですが、あなたへの報酬はこれです。」
「え?・・きゃあっ!」
もう2,3歩でシャグベルを掴むところだった、ドーラの足下が不意にぱかっと口を開け、彼女は一瞬にして暗いその穴に飲み込まれた。



−スタン!−
すぐ階下のフロアを通過し、1Fも通過し、どうやらそこは地下室らしかった。
「ふん!この程度の落下、なんともないわよ!」
バランスを崩すこともなく、正確に着地したドーラは上を睨んでひとまず文句を言う。が、同時に周囲の雰囲気と周囲に鼻を歪める。
そこは悪寒を誘う空気が満ちていた。灯り取りの小窓もない地下室のその暗闇の中、異様な気配を感じつつ、それでも、ドーラは目が慣れるまでその場で周囲に気を飛ばしつつじっと立っていた。
気配でしか周囲の様子はつかめない。が、死体に見つめられているような感覚を受け、ドーラは背筋の凍る感覚と、できたらすぐにでもこの場から逃げたいという嫌悪感を受けていた。
慌てる乞食はもらいが少ない。そういうときは下手に動かない方がいいのである。

徐々に暗闇に慣れてくるその目でドーラは、周囲を注意深く見渡す。
「な、なによ・・これ?地下墓地とかなの?」
そこへ落ちた瞬間から感じていたその悪寒の原因がわかり、さすがのドーラも吐き気をもよおす。

ドーラの周囲には、おびただしい数の屍がうずたかく積み重なっていたのである。
そして、そこにある眼球のないいくつもの眼が、まるでドーラの動きを追って動いているような感覚さえ覚えた。

「ご覧なさい。」
タイミングよく、そこへシャグベルの勝ち誇った、いや、哀れんだというべきだろうか、そんな声が響き渡る。
「あなたが訪ねてくれたので、亡者たちも喜んでいますよ。ごゆっくり楽しんで下さいね。おーっほっほっほっほっ!!」

−バタン!−
上で落とし穴の扉を閉める音が聞こえた。

「とんだ歓迎ね・・・・今まで地下迷宮でゾンビとも戦ったことはあるけど・・・この腐乱臭に満ちた狭いところじゃたまらないわ。・・それにこの数・・・。」
整った顔の額にしわをよせ、ドーラは思わず呟いていた。
そして、同時にドーラに襲いかかってくるそれらに、火炎を投げかける。
「ったく・・きりがないじゃないの?」
ゾンビは部屋のあちこちに積み重なっている腐肉のかたまりからいくらでも沸いてでてきた。
1体ずつ倒していてはラチがあかないと判断したドーラは、それらの攻撃に注意を払いつつ、腐肉の排除を重点に置いて火炎を繰り出していく。


「やったっ!館から出られたわ!」
トラップとゾンビや腐乱犬、そして、巨大蛆虫の攻撃をくぐりぬけ、1Fへの階段を見つけたドーラは思わずそれを駆け上がり、一気に玄関の扉を開けて外へと出ていた。


「1Fへの階段があった通路にもう1つ階段があったわよね?」
外へ出たドーラは、一応その目的を果たした達成感で、冷静さを取り戻していた。
「シャグベルは・・・・まだきっと館の中にいるわ・・。」

そのまま街へ戻ってもよかった。館内にゾールの姿はなかったことから、彼はやはり国都フィベリアにいるのだろうと思われることから、国都を目指してもよかった。
が・・・・・
「あの白豚にたっぷりとこのお礼を返してやらなくちゃ、気が収まらないわ。捕まえれば、ゾールの事も聞き出せるでしょうし。・・・苦労して手に入れた砂岩板をこんなに安々と手渡していいわけないわ!このドーラ様を謀った(最初から容易に想定できた事だが)らどうなるか、思い知らせてやらなくちゃ!」

くるっときびすを返し、ドーラは、幽霊屋敷の中へと戻っていった。
まだ足を入れていない地下2階をめざして。             




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