**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その5 ひび割れと落とし穴

  

 「お、重いわ・・・・・なんで洞窟っていつもこうなのよぉ?」
ビトールのときもブンデビアのときもアレスを追いかけていたドーラ。そのおかげか、アレスが道を切り開いた後通ってきた。そしてここボレアの洞窟もアレスの方が早いはずだったのだが、ここへ来るまでの入り組んだ山道。道を知り尽くしているドーラとアレスの違いなのか、到着したのはドーラの方が早いらしかった。
数日前この辺りで地震があったせいで、洞窟内のあちこちで道がふさがれていり、それまで誰も足を踏み入れたことのない奥への道ができていたりしていた。
もちろん、完全には開かず、ひび割れた箇所も何カ所あった。
そう、行けるところは全て回ったドーラに残された道。それはひび割れた壁を崩して先に進むことなのである。
それまでにも誰かが奥へ進もうと試みたのか、まるで奥へ行きたければ壁を崩せと言わんばかりに放置されていた大金槌を持ち、ドーラは数カ所あるひびの入った壁を1つずつ壊して回る羽目になっていた。

「まったく、誰のせいでこんな苦労してると思ってんのよ?どこを迷ってるのよ、アレスののろま!」
−ズガッ!−
それでもアレスを待っているわけにはいかない。ドーラは襲いかかってくる魔物に注意を払いながら金槌を引きずって奥への道を探していた。

−ドゴッ!・・ガラガラガラ・・・−
「なによぉ〜〜・・・また宝箱で行き止まり?・・・・あたしはどうでもいい宝より、砂岩板のあるという最深部へ繋がってる道の方がいいわよ・・ああ〜!もう!これでいくつ目?」
かと言え、アレスの酒代のおかげで(ドーラ談)一文無し状態になってしまったドーラには、宝は資金となる。文句をいいつつ、ちゃっかり回収するドーラでもあった。

「ここの宝箱で手に入れた回復ポーション・・飲みたいけど・・・でも、どうしても必要な時までやっぱりとっておいた方がいいわよね?」
魔物退治はお茶の子さいさい。時には背後からとかはさみうちなどでダメージを受けることもあったが、普通なら簡単なものである。視野に入った魔物に遠くから炎を投げつけさえすればいい。ドーラの体力は、どちらかというと、壁崩しと、大金槌を運ぶことで削られていた。
「ちょっとこの辺りで休憩しましょ。」
休憩できる余裕があるのなら、ポーションを使うことはないと判断したドーラは、壁にもたれて休むことにした。


−ハッ!−
ついうとうととしてしまったドーラは、ある人物の気配を敏感に感じ取り、一気に全身に緊張感を漲らせる。
ある人物とは、誰あろう、アレスである。すっくと立ち上がり、ドーラは近づいてくるその気の方向をきっと見据える。

「遅かったじゃない、アレス!・・じゃないっ!・・あんた、何のためにまたここへ来たのよ?・・・まさか忘れたとは言わせないわよ?8年前、ここであんたが何をしたか?」
横道から姿を現したアレスにさっそく罵声を浴びせるドーラ。
「今日こそその首をもらって、お師匠様の墓前に供えてあげるわ!覚悟なさいっ!」
ツカツカとアレスに近づいていくドーラ。
−ガコン−
「え?・・・き、きゃあっ!」
保護色で全くわからなかったが、どうやら床に落とし穴のスイッチが仕掛けてあったようだ。
ドーラはそのまま穴の中へ足を取られ、落っこちる。
−ストン!−
「ふん!このくらいの穴!落ちるのはお約束だったとしても、最初の頃とは違ってノーダメージですみますからね。」
すたっと着地して見上げるドーラ。
が・・・
「あ!こら!アレス!穴に落ちた人間を無視して進むつもり?・・あ、あんたには、かよわいレディーを穴から引き上げてやろうという小さな親切心も持ち合わせてないの?」
極悪非道の賞金首なら、そう思う方がおかしいとも思われるが、ドーラは穴の淵からみえるアレスの姿に怒鳴っていた。
そう、それは、当然のごとく、ドーラのことなどまるっきり無視して穴の横を素通りしていくアレスの姿。


「・・・・無視されたのは面白くないけど・・・でも、大金槌はきちんと持っていってくれたのね。」
なんとか穴の壁をよじ登ったドーラは、これで苦労して大金槌を持ち歩いて壁を崩さなくてもいいと一応喜ぶ。 が、次に別の事に気づいてはっとする。
(それはいいけど・・・宝物までアレスに取られてしまうじゃないの!それに、まだ酒代も返してもらってないわっ!)

「アレス・・アレスは、どっちへ・・・?」
行く手を塞ぐ魔物に火炎を投げつけ、ドーラはもう進撃していた。


「ミ、ミレイユ?」
「ドーラお姉さま?帰ってらしたの?」
−ガコン!きゃあっ!−
そして、妹ミレイユとの思いもしなかった再会、それもお約束の落とし穴に邪魔をされてしまった。
「アレスならわかるけど・・・ミレイユが穴に落ちたあたしを無視して行ってしまうなんて・・?」
それとも一瞬見たと思ったあれは、幻だったのか?・・・そして、幻聴?・・・穴から出たドーラはとぼとぼと歩いていた。


−カチリ−
「え?・・・」
それは壁にあった紐をぼおっとしたまま引っぱったときだった。
不意にドーラの左右に猿の姿が現れたと思ったその瞬間、ドーラの腹部と頭部に激しい痛みが走り、そのまま闇が彼女を覆い尽くしていった。


「ハッ!」
しばらくして気づいたドーラは、彼女の両横に自分自身より多少大きくそしてがっしりとした猿が倒れていることに気づく。
「この太刀傷は・・・・」
1匹は額を一刀両断、そしてもう一匹は一突きで心臓を射抜かれていた。
そして、手当されている自分。
「ア、アレス〜〜・・・あ、あいつね?・・あいつが・・・・」
助けてくれた、という言葉も確かにドーラの思考にはあった、が、その後の激しい怒りでそれはかき消されてしまう。
「またしても気絶した女を一人、こんな危険なところにほっぽって先に行ったわね?!」

−ダダダッ!−
落ち込んでしまったミレイユとの再会のこともどこへやら、怒りパワーで体力、気力ともフル全開!燃えたぎる怒りと共に、ドーラはアレスの後を追った。             


ボレアの洞窟の闇屋
「人間のべっぴんさんが来るところじゃないよ。危ないからね。」

(緑色の目が印象的だったので、描いてみました。
全く別人?になってしまってるところは、笑って許して下さい。)



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