**Brandish3リプレイ創作ストーリー**



その2 見知らぬ故郷
  

 『交易の街タントール』
山道の終着点。塀に囲まれたその街は、8年前と変わらぬ姿でドーラを迎えた。
が・・・・
「な、何よ、どうしちゃったの?」
タントールの街から数キロ離れた森に住んでいたとはいえ、食料の買いだしなどには、毎日のように来ていた街だった。当然、街には顔見知りの人もいるはずである。が、通りを通る人々にドーラは全く見覚えがなかった。ある種、知人にあい、今までの事を聞かれたらどう説明しよう?と思っていたドーラはほっと安堵もしたが、同時に不思議に感じる。
ドーラがここを離れる時、フィベリアは暗雲を孕みつつあった。国王は富国強兵を唱え、老人子供を除き、男という男を街から徴兵しはじめたのである。そのことに不安を覚えながらもドーラはバルカンの仇であるアレスの後を追ったのだが、知り合いがいてもおかしくないはずの女たちでさえ、見ず知らずの人間ばかりだった。
「あら?・・・家への道が・・ない・・・」
タントールの街の西側に、ドーラの住んでいた家がある森への小道があるはずだった。
が、道があるはずのそこには家があった。背後へ回っても、街を囲む塀があるのみだった。
「・・・・・・ミレーユ・・・・・」
ふとドーラの脳裏に、妹ミレーユの顔が浮かぶ。血のつながりこそないが、3つ年下の妹。共に大魔導師バルカンの弟子としての修行も積んでいた。
「あの家に住んでいないのかしら?」
そんなことを考えながら、ドーラは情報収集のため、街のほぼ中央にある酒場へと足を向けた。


酒場へ入ると同時に、そこで飲んでいた数人の客と店主の視線がドーラに注がれる。
「やあ、こんな場末にめずらしい。美しいお姉さんは大歓迎だよ。」
その客の一人である冒険家らしい男がドーラに近寄ってくるなり、話しかけた。
「ここはあんたの店ってわけじゃないんでしょう?」
ちらっとその男に視線を流したドーラは、ぶっきらぼうに言う。
「そんなにツンツンすんなよ。オレはフレッド。お友達になってほしいだけさ。」
「ずうずうしい人とは、お友達になりたくないわ。」
「冷てーなー・・・って・・さっきからどっかで会った気がすると思ってたんだが・・・思い出した!あんたもしかしたら、ブンデビアのダークゾーンで会った?・・・・そ、そうだ、あのときの魔法使いのねーちゃんだ!」
「そうだったかしら?」
一応ドーラは記憶を探ってみる。が、全くその顔に覚えがない。
「ほら、ねーちゃんが探してた男の情報あげたじゃないか?尼さんと一緒に行動してるってさ?」
(アレスとクレール)
その時の男の顔は記憶にはなかったが、その情報をダークゾーンにいた男から聞いたことは思い出したドーラ。
「ところで、なかなかしゃれたマントをしてるねぇ。でも、オレはそのマント、外した方がもっといいと思うな。」
が、フレッドは思い出してくれたものと思いこんで、にやっと笑って1歩ドーラに歩み寄る。
「あーら、ありがとう。でも、あんたに口出しされる覚えはないわよ。」
きっと今一度睨み直したドーラに、フレッドはすっかりお友達になった気分でにやけながらドーラが嫌いな種類のセリフを口にした。
「いや、みんなこう思ってるぜ。姉ちゃんのカワイイお尻が拝めなくって残念だってさ。」
「な?!・・・」
ドーラのきつい視線に蔑視の色が混ざった。
「二度とあたしの前にその顔を見せないでちょうだい!」
「っとと・・・・こりゃだめだな・・バイバイ」
きつく言い放ったドーラの剣幕にしっぽを巻き、男は早々に外へと出ていった。


酒場でドーラが得た情報は、街の人間そっくり国王の命で他の街の住人と入れ替わらせられてしまったこと。そして、北の洞窟には手強い魔物が住むようになってしまったこと。大魔導師バルカンの家のあった西側の道は森を通って魔物が街まで出てくることを懸念して、やはり王命で封じたこと。そして、街の南にある墓地西に建っている屋敷は、化け物屋敷になってしまっていること、国都フィベリアまでの道は、最近地震で道が寸断されてしまい、野生の危険動物が徘徊するジャングル経由の道しかなくなっていることなどだった。しかも危険だという理由で、墓地への門、そしてジャングルへ繋がっている道への門も、カギがかけられ通行不能となっていた。

「どっちにしろボレアの洞窟に行くしかないようね?」
酒場を出、タントールの街をあちこち歩き回って一通り調べると、ドーラは再び酒場へ来ていた。
交易の街であることは昔と変わりない。医者や武器屋などの店は、昔と変わらずそこにあった。が、ドーラの見知った人間は誰一人としていなかった。妹、ミレーユの行方を聞いてみても、誰も何も知らないようだった。
(ゾールが自分で行かず、わざわざあたしに使いをよこしたのよ。中にいる魔物は、半端な強さじゃないはずよ。しばらくまた魔物退治に没頭しなくちゃいけないなら、その前に何か食べておきましょ♪)
山道を急いできたその足で街中を歩き回って疲れていたこともあった。その疲労回復と、食欲を満たすため、ドーラはしばし休憩することにした。

「あ・・・・マスター、それ1杯くれない?ストレートでいいわ。」
カウンターで軽く食事をとっていたドーラの目に、ワインの瓶が目にはいった。
それは、亡きバルカンが好んで飲んでいたワイン。まるっきり見ず知らずの街となってしまっていたそこで、たった一つ見つけた見知ったそれに懐かしさを覚え、思わずドーラは注文していた。
「マスター、お代わり。」
「お嬢さん、いける口ですねー。おいしいでしょ?これはタントール名物の一つなんですよ。」
バルカンがその昔飲んでいたワインを今こうして自分が飲んでいる。その時の満足そうな嬉しそうなバルカンの顔を思い出し、そして、平和で楽しかった懐かしいその頃の思い出に、いつしかドーラは酔いとともに浸っていた。              


イメージ画像です。/^^;



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