◆第二十八話・最強の盾と青い鬼火◆
  

  
 地下迷宮・・・FORTRESS・4F・・・アレスは苦戦していた。
そこにいたのは、ハーピー・・・鳥人間である。が、その多さとそして、素早さ、魔法耐性の高さ、そして、その鋭いくちばしと全体重をかけて繰り出してくるキック(もちろんその先には、鏃の先のように尖った爪がある)攻撃は、まともに受ければ、かなりのダメージがあった。
加えて、不死である式神。これも魔法耐性があるので結構やっかいだった。
倒すと1枚の紙に戻る。が、燃やさない限り復活する。戻っている時間はほんのわずか、そのタイミングが問題なのである。1体だけならいいが、周囲にはわんさかといる。

「ん?次への道か?」
敵を倒しながら進むアレスの視野に、横道への洞窟がみえた。
『最強の盾サザン・クロス
その呪い解きたる自信を持つ者のみここをくぐれ。』
(ということは・・この横道の先にあるわけか。)
一人呟きアレスはその横穴に飛び込む。
「ふ〜〜・・・・」
ひっきりなしに襲ってくるハーピーと式神のおかげでアレスは深手を負っていた。回復ポーションを飲むわずかな間もないほど。
アレスはつくづく回復魔法が欲しいと思いながら、回復ポーションを喉に流し込んでいた。

(ここは・・・魔物はいないのか?)
そう、そのエリアには襲ってくる魔物は一匹もいなかった。が、そこはあちこちに転移のトラップが仕掛けてあった。

(まー・・そう大したトラップでもないな。)
アレスはトラップがいくつか仕掛けてあるそのエリアを通り抜け、細い通路を進む。

そして、その奥にサザン・クロスはあった。
『4つの台座。4つの偶像。永遠の繰り返しを止めるための儀式なり。』
入口付近には、そう書かれたプレートがあった。
(あの異形の偶像だな。)
そう思いながら、アレスはドアを開けて中にはいった。
−シュオン!−
(ぐっ!)
不意に襲ってきた何者かにアレスは吹き飛ばされ、勢い良く壁にたたき付けられる。
(な、なんだ・・・)
そして、その衝撃で頭がはっきりしないうちに、再び何者かがアレスめがけてものすごい勢いで直進してくる。
−ガスッ!−
それをぎりぎりで避けるとアレスはともかく急いで出口へと走った。
「そ、そうか・・・あれが最強の盾・・か・・・」
結界が張ってあるのか外へは出てこない。アレスは少しずつはっきりしてきた頭で中の様子を伺う。
高速に回転している真っ赤な盾。それがアレスを襲った犯人であり、アレスが手に入れようとしていた最強の盾、サザン・クロスなのである。

(よし!今度は油断しないぞ!)
その衝撃を和らげるため、バリアを張り、攻撃力を倍にしてくれるバリアの魔法を唱え、アレスは再び中へと足を踏み入れる。
試しに火炎の魔法を放ってみたが、まるっきり効果なし。

−シュッ!ガスッ!−
数度攻防を繰り返すアレス。不意に盾は奥の台座へ収まった。
(やれやれ・・・呪いというのは自由自在に動くというこのことか?しかし・・・偶像を使わずにすんだじゃないか?)
が、盾を手に取ろうとしたアレスは、呪い本質を悟る。
永遠に繰り返される・・・その意味は、ダメージを与え、大人しくさせることはできても、触れようとすれば、復活するのである。そして、また攻防の繰り返し。最強の盾という名をもつだけあって、大人しくさせるのも尋常ではない。

(像を四隅におけば、復活することなく、手にすることができるということか?)
そんなことを考えながら、アレスは盾の動きに注意を払いながら、隙を見て四隅に偶像を置いて回る。

(さて、本番といくか?)
改めてアレスは盾と対峙する。


(他に道がないぞ?)
無事サザン・クロスを手に入れたアレスは、FORTRESS・4Fに戻り、次のエリアへの道を探していた。が、隅々まで探したが、開かないドアが2カ所あるのみ・・それ以外なにもない。しかも、カギがなくそのドアは開けれない。

(しかし・・・これはどういうドアなのだ?)
アレスはしばしそのドアをじっとみつめていた。それは、透き通った緑色の球体であり、中に胎児のようなものが回転していた。
(ともかく、カギか・・・宝箱は全て開けた・・そういうときは、そのエリアにいる敵を全て倒すと最期の1匹がカギを持っているというパターンなんだが・・)
果たしてそのパターン通りに行くのか・・・だが、途中見つけたプレートから、アレスはその事を確信していた。
『新しき道を欲すれば、鳥を全て討ち滅ぼすべし。』

が、なんとか強敵だったハーピーを倒し、目的のスカルキーを使って開けたその先には道はなく、奥に青い鬼火のような火の灯った燭台があるのみだった。

不思議な色をした炎。それは浜辺の波のように透明で、青い揺らめきを見せていた。手を差し伸べても熱さは感じられない。
その普通の炎とはまるで違っている妖しい揺らめき、魂を吸い取られそうなその炎を眺めていると、迷宮にいるという現実をアレスはふと忘れそうになった。

(っと・・・・い、いかん・・・)
アレスは頭を振って、ぼーっとなった自分を叱りつける。
(ここへ来るまでに燭台があったな・・・確か・・・)
アレスは四次元箱から松明の棒を取り出す。それはひびの入った壁を崩して手に入れていたもの。
『地には平和、人には愛を。
 闇には青き・・・・を。
 全てが揺らめくとき、
 必ず新しく変わる物がある。』
それと同時に、プレートの言葉を思い出していた。
(青き・・・・か・・?しかし、この炎は青というより緑だが・・・そういえば、どこだったか、緑を青と呼ぶと、聞いたことがあるな。その昔、現在の青を緑、緑を青と呼んでいたという名残で・・だったか?)
そんなことも脳裏の片隅で思い出しながら、アレスはその棒を炎に近づける。
−ぽぅ−

全ての燭台にその青い鬼火をうつすと、地響きが走り、どこかで壁の崩れる音がした。

「階段か・・・ようやく次のエリアだな。」
アレスはゆっくりと階段を上がっていった。


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