◆第二十三話・フィールドアスレチック?◆
  

 「ん?異次元箱か?」
研究所内部を進んでいくアレスの目の前・・ではなく、すぐ横にそれは燦然と輝いていた。(笑
今2つ手元にある異次元箱は、すでにほぼ満たんなのである。闇屋もいそうもないそこでは、このままいくと入手したものを捨てることになるだろうと予想された。
が・・・・そこは通路が動いているのである。気づいたときは既に遅く、壁に阻まれた次の通路へとアレスは入っていた。

そして、その動く通路の終着点につくと、アレスはためらうことなくくるっと向きを変えた。勿論、異次元箱を取りにである。

が・・・・・
「くそっ!なんで飛び移れないんだ?」
動く通路の早さより早く走れば、物理的に来た道へと戻れるはずなのだが、どうしても進むことができない。
「乗った者の歩行スピードにあわせて動くわけか?」
しばし考えるアレス。
その動く通路の両サイドには、次元箱だけでなく宝箱もあった。ここはなんとしても中身を確かめるべきだとアレスは思う。
たとえ、その前に通過してきた小刻みに仕切った動く床のエリアにあった宝箱のように爆弾仕掛けだったとしても。

が、ふとアレスは思う。何か仕掛けがあるのだろうか?仕掛けで動く通路が止まるということもありうる・・それとも、どこかにスイッチが?
が、周囲の壁や床を丹念に調べてみても何もない。あるとすれば、次の部屋へのドアだけ。
次へと進む前に、気になったことは片づけたい、アレスはそう思い、今一度、動く通路を反対にダッシュする。

が・・・数度繰り返してもやはりアレスのスピードにあわせるのか、一向に前進できない。

(ひょっとしたら、ここで足止めさせるつもりの囮か?)
アレスの脳裏をふとそんな考えも走る。
(どうやって乗っている者のスピードを感知しているのだ?)
少し休憩することにしたアレスの頭に、あれこれ考えが浮かんでくる。
(そういえば、ここはまるでアスレチックだな?いろんな仕掛け満載の。)
そして、そこまでの様々なトラップをアレスは思い出していた。

何かの培養の研究をしているらしいそこで、まずアレスの前に出たのは、真っ赤な薔薇の花束・・・ではなく、真っ赤な肉の塊が入っている巨大な丸いガラスケース。しかも数個そのエリアに居座っているそれらを、スイッチで移動させて道を作らなければならなかった。
といっても、さほど困難だというわけでもなかったが、数回それをスイッチ入れ直さなければ奥への道へ繋がらなかったことは、結構運動になった。
その仕掛けはまた別のところでもあった。が、その時は、床にあったスイッチを真っ直ぐ進みながら順番に踏んでいったら、すんなりと次のエリアへの階段のところまで行きつけた。
ただ・・・そのスイッチを踏む順番を帰れば、両脇に広がっている空間へも行けそうであり、球体があまりにも大きくて、その背後は見えないが、なんとなく宝箱もあるのではないか、とアレスの第六感は注意を促していた。
もちろん、せっかくできた道を無視し、スイッチを踏んで、球体の配置換えをして、両サイドのエリアも調べたということは言うまでもない。
おかげで最初にすんなりできた道が、今度は、なかなか上手く配置できず、多少いらついたとかそうでもなかったとか?

部屋の周囲から矢が出てくるそこでは、床のスイッチが問題だった。
『真実は一つ。正しき床を踏みしめよ。L1、G2、J1』と書いてあるプレートに従おうと思ったが、なぜだか考えるのが面倒で、それでも、左手に寄って、前に2歩そしてジャンプをしてみた。・・・・結局1回矢が出たが、そこはそのくらいお手の物のアレスなのである。奥の扉を開け、すんなり次の部屋へと向かった。
が、そこは硫黄の部屋。飛び石感覚で道が自動にできていく不思議なエリア。が、簡単には次の部屋への扉の前までは行かせてくれなかった。
すぐ目の前に扉が見えているのに、もう1つあれば、というところで、引き返したこと数度。ぴょんぴょん跳ね回ったそこでは、他と比べて結構時間がかかったらしい。

そして次は、鏡の部屋でだった。もっともそれらしき忠告が部屋へ入る前のプレートには書かいてはあった。つまり、その鏡は魔法を跳ね返す特別仕様。そこにいた敵が直接攻撃が全く効かないアイアンゴレムだったということもあり、ついファイヤーボールを放ってしまったアレスは、あやうく自分の魔法でおこげになるところだった。
はじき返すだけなんだから、飛ばない魔法ならいいだろう、と判断したアレスは、盾で防御しつつサンダーの魔法での接近戦を試みた。
結果は上手くいったが、そこには1匹?ずつ倒していたのでは時間がかかることと、魔法を弾く鏡ということで、ある作戦を思いつく。
楽して勝てるならそれにこしたことはない。そして、アレスはそれを実行に移した。


−バシューン・・・バシューーン!・・バボン!−
アイアンゴレムは、何も考えずにただ部屋の中を歩き回っている。そして、アレスの放ったファイヤーボールは、そのアイアンゴレムに当たらない限り対面の壁にある鏡に反射されて飛び続ける。
というわけで、そこはしばしファイヤーボールの飛び交う賑やかな場所となった。
ただ、撃った数が多くて、敵が全滅しても残っていた数発を避けて部屋の奥へ進まなければならなかったが・・・まー、それも一興だろう。いい運動である。


(考えていても始まらないな。少しは休憩にはなったが・・・)
アレスは先へ進んでみようという結論を出していた。
動く通路の上を反対に進むことは不可能であり、周囲にその解除らしきトラップもスイッチもない。意地でも反対方向に進んでやろう、いや、進みたい、とは思ったが、ひとまず動く通路のことはおいておいて、先へ進むことにした。仕掛けに降参したようで、なんとなく面白くなかったらしいが。

(培養実験というのは・・こいつか?)
それまで異次元箱を取ろうとまるっきり無視していた奥の扉を開けたアレスは、そこにいた敵を見て愕然とする。
それは、確かにバノウルドの地底で出会った最後の敵、欲と権力に駆られ禁断の書に手をのばし、その地の守護を倒した王のなれの果ての小型化したものだと思えた。

(ここでこんな奴に出会うとはな・・・おそらくこいつ1体だけじゃないんだろう。)
ここに来るまで、さほと強い敵はいなかった。ほとんど遠くからファイヤーボールで片づけていたアレスは、そこまでまるでフィールドアスレチックをしてる気分だったのである。それはそれでいいが、少し飽きてきたところでもあった。

(ミニチュア(といってもご本尊と比べればというだけで、人間と比べればはるかに大きい)でも、あいつの分身だ。少しは手応えあるだろうな?)
剣を構えつつ、心のどこかで嬉しさも感じているようだと、アレスは、ふっと自嘲した。


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