-アレス・8歳の大冒険-
  
 
第三話:お茶会の親子?門番?  
 

 「なんだ、坊主?なんか用か?」
ガラガラットに教えて貰った道を走っていったアレスくんは、そのお茶会が開かれていると思われる庭の門の中へ入ろうとしたとき、不意に門の背後から現れた大男に上から睨まれてびっくりしました。
「あ、あの・・・・」
小さなアレスくんにとって、まるで小山のように見えるその大男は、背の高さだけでなく、鍛え抜かれた身体でした。筋肉隆々、盛り上がった力瘤は黒光りしてます。まるでそれは、お話の中に出てきた真っ黒な魔神のようだとアレスくんは思いました。
ぎろっとアレスくんを睨み、その大男は続けます。
「オレの名前はシャザー。」
「そして、オレの名前はハクシャー。」
すっと門の背後からまた一人同じような筋肉隆々の大男が出てきて続けました。
そして、一呼吸置くと、2人は同時に言ったのです。
「オレたちは、神聖な闘技場の門を守る最強の戦士親子・・・・い、いやっ、もといっ!お茶会の門を守る双子の木こり・・・じゃなかった・・・・ディー&ダム警備会社から派遣された最強のガードマンだっ!」
「え?」
マッスルマンポーズを取り、威信をかけての2人はアレスくんを睨み付けます。でも、アレスくんの純真さには効き目がなかったようです。
「最強の門番さんなの?すごいね、おじさんたち!」
がくがくがくっ・・・・・・2人はその反応にずっこけてしまいました。だって普通なら恐ろしくて真っ青になって震えて腰を抜かしてもいいはずなのに、アレスくんたら、目を輝かせてとっても嬉しそうだっただからです。
「ま、まーいいか・・・・・」
でも2人は思い直します。びびらせることはできなかったけど、尊敬の眼差しで見上げてるアレスくんは、とってもかわいらしく思えました。
「で、ここに何のようだ、ぼうず?」
シャザーと名乗った大男がアレスくんに聞きました。
「ここは、ハートの女王様でさえ許可がないと入れない庭なのだぞ?」
「ハートの女王様でも?」
「そうだ。偉大なるこの国の女王・ザノン様。」
次にハクシャーが続ける。
「それでも、ここの庭は特別だからな。」
「女王様でも入れない庭なの?」
「そう。下手にはいるときちがいがぁ〜移るから〜〜〜〜♪」
「え?」
「だから〜〜〜、我々が守るのさ〜〜〜♪最強の我々がぁ〜〜〜♪」
「地上〜、さ〜〜い強ぉ〜〜の〜〜、オレたち親子/双子がぁ〜〜」
わわわわ〜〜〜♪と二人は合唱しはじめ、アレスくんは目を丸くして見つめます。
「あ・・・おやじ、『親子』じゃなくって双子だって!この世界の設定ではオレたち兄弟だぞ?」
「あ、そ、そうだったな・・・」
「まったく・・気を付けろよな?」
「そういうお前も今オレのことを『おやじ』と呼んだぞ?」
「あ・・そ、そうだったか?失敗、失敗!」
「あ、あの〜〜・・・・」
合唱(?)を中断し、すっかり自分たちの世界に入って会話している2人に、アレスくんは邪魔して申し訳ないという表情で声をかけました。
「なんだ?」
そして、同時にそう応えてぎろっと睨んだ2人にちょっとびくっとします。
「ぼ、ぼく、紫うさぎさんに用事があるんです。こ、ここのお茶会にいるらしいって聞いて・・・」
「なに?紫うさぎにとな?」
「は、はい。」
睨みをきつくした2人にアレスくんは待たしても少しびくっとしてしまいました。
「紫うさぎは、ハートの女王様の使いだぞ?」
シャザーがぐいっとアレスくんの顔に自分の顔を近づけて睨みます。
「何者だ、ぼうず?事と場合によっては子供でも容赦しないぞ?」
ハクシャーもぐいっとアレスくんを睨み付けます。
「あ・・あの・・・・・ぼ、ぼくがお昼寝してたところに、紫うさぎさんが躓いて・・それで遅刻しちゃうとかで・・・ぼく、あ、謝ろうと思っておいかけてきたんだけど・・・」
それでも、悪いことはしていないので、アレスくんは、ちょっとびびりながらも堂々と?言いました。
「謝りにか・・・う〜〜ん・・・」
「お願いです、紫うさぎさんに会わせてください。」
腕組みをして考え込んだシャザーとハクシャーに、アレスくんはぺこりと頭を下げてお願いしました。
「どうする、おやじ?」
「どうするって・・・・悪人には見えないが・・・って、『おやじ』じゃないだろ?」
「「あ・・ご、ごめん・・・」
「まったく、気を付けろよ!」
「うん・・・つい・・な・・・」
「その気持ちも分かるけどな・・・・」
「そ、そうか?」
「オレがお前の尊敬の対象だってことは分かってるからな。」
「・・・尊敬とはちょっと違うけど・・・」
「ん?なんか言ったか?」
「あ、いや・・・べ、別に・・そ、そうだよな?やっぱり兄弟よりどうしても上(単に年齢の差)の感覚があってさ・・・」
「そうだろう、そうだろう。(能力などに対する評価での「上」を期待)」
ぐいっと片腕を絡め、2人はお互いを見合ってにやっとする。
「あの〜〜〜・・・」
再び自分たちの世界に浸っている2人に、アレスくんはそっと話しかけます。
「おっと、そうだった。すまんすまん。」
2人は同時に頭をかきながら、いっしょに応えました。
「ともかく、許可書を持たない者は入れるわけにはいかん。」
「許可書?」
「そう。」
そして、再び2人は合唱を始めました。
「お茶会への許可書は〜・・・わわわ〜〜〜〜・・・四精霊のサイン〜〜〜♪」
「四精霊のサイン?」
「そうさ〜〜・・四精霊のサインはぁ〜〜〜彼らが持つ輝玉版〜〜〜それがぁ〜〜字か書けない彼らからの許可書なのさ〜〜〜らららら〜〜〜〜」
「輝玉版・・・ど、どうやってもらうの?」
「それは〜〜出会ってからのお楽しみ〜〜。」
「どうしても、その許可書がないとダメ?」
「ここの〜庭はぁ〜狂気が囲んでる〜〜、だから〜〜その許可書が必要なのさぁ〜〜。それがないと狂ってしまうからあ〜〜〜〜♪」
筋肉もりもりの大男が、夢みるような表情で、胸で両手を合わせて気持ちよく歌っている様子は、さすがのアレスくんでも似合わないな、と思ってしまいました。でも、そんな失礼な事は言いません。
「狂ってしまうの?」
「そうだよ〜〜〜〜・・・わわわわ〜〜〜〜♪」
「で、四精霊さんとはどこで会えるの?輝玉版ってどんなものなの?」
「それは〜よん〜〜色の〜〜宝玉の瞳〜〜、それを〜持つ〜、ま〜〜るい円盤なのさ〜〜〜♪」
「入りたいのなら〜〜〜」
「入りたいのなら?」
「もらっておいで〜〜〜」
「だから、どこで?」
「わわわわわ〜〜〜〜〜〜♪」
2人の合唱の声が一段と大きく、そして低く辺りに響いた。
「え?・・・う、うわ〜〜〜・・・・・・・」
次の瞬間、アレスくんがたっていた地面がぽっかりと開いた。まるで何もない空間のようにぽっかりと黒く。
「わ〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その真っ暗な穴に、アレスくんは、ひゅ〜〜〜ん、と落ちていきました。
「・・・・・ぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
−ドスン!−
それでも、下から吹き上げてくれていた風によってアレスくんは、さほど衝撃もなく地面に着いたのです。・・・といっても、全身を強く打ち付けましたけど。そのくらいで命があっただけ幸運だったと言える深さでした。

「う・・・い、痛ぁ〜〜・・・・・・」
身体のあちこちをさすりながら、アレスくんは起きあがります。
そして、上を見上げました。
「どうやって戻ったらいいんだろ?」
アレスくんが落ちてきた頭上には、陽の光がまるで、点のように見えます。
「真っ暗だし。」
そして、周囲は真っ暗です。
「でも、行かなくちゃ。四精霊さんと会わなくっちゃ。」
アレスくんは目を凝らしてゆっくりと歩き始めました。
ぎゅっと拳を握り、いつでもグーパンチが繰り出せるように、注意しながら、ゆっくりと。


その地下洞窟で何がアレスくんを待っているのか。洞窟の奥からは、何やらざわめきが聞こえてきます。
お茶会にいる紫うさぎがアレスくんが探しているうさぎとは違っていることも知らず。
アレスくんは進みます。お茶会へ行くために。四精霊から許可書である輝玉版をもらうために。
真っ暗な洞窟は、ちょっとアレスくんを不安にさせましたが、パワーグラブを手に入れる為に入った洞窟での勇気を今一度自分の中で燃え立たせて、アレスくんは進みます。
大丈夫。悪いことしてるんじゃないから、きっと四精霊さんと会える。話せばわかってくれるはず。そして、どこかに地上への出口もあるはず!

自分に言い聞かせ、アレスくんは胸をはって歩き始めました。     



お絵描き掲示板に描いたものです。
それらしくないのですが・・・置いちゃおうと・・・/^^;



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