『ニールとゆかいな仲間たち♪』
== ネクラ・・もとい!ネクロマンサー、ニールの徒然冒険記 ==

その1  初めましてのご挨拶 ・・・ネクラで悪かったな〜・・・(T-T)

 


 魔物との最前線だというそのローグのキャンプ地に着いたのはもう日が暮れようとしていた雨の日だった。
しとしとと降る雨は、まるで歓迎してくれているように、やさしく包み込んでくれていた。

「ようこそ。」
最初に声をかけてくれたのは、ワリヴという名の男だった。彼はキャンプ地の荷物などの管理をしているらしい。いわば風紀委員というところか。
「今度はネクロマンサーか・・・ここにいたかったらもめごとは起こさないでくれよ。」
彼はそういって、オレが私的に使ってもいい場所を示してくれた。
そこは、飲み水を保管してある大樽が積んである荷車がある場所だった。
「ここか?」
「ああ、そうだ。ここは共同生活なんだ。好き勝手に行動してはいるが、一応キャンプ内では、それぞれ役割を担ってもらってる。あんたには水の番をしてもらう。」
「寝るときは?」
ここまで旅してきたオレは、一応寝袋は持っている。が、気持ちのいい小雨も眠るとなるとそうも言っていられない。
「荷車の下で雨はしのげるだろ?身の回りのものもその辺りにおいておいてくれ。あと、保管箱を貸してやる。なんと言ってもこのあたりはお宝の宝庫だからな。貴重品はそれに入れておけばいいだろ。これがカギだ。」
無表情のまま差し出すワリヴからカギを受け取りながら、つまり、気に入らなければ出て行けといったところだな。と思いつつ聞いてみた。
「新参者に水の番などさせていいのか?」
そう言ったオレを見て、ワリブはにやっと不敵な笑みを浮かべると静かに言った。
「その時はその時さ。なんといってもここには、戦士は履いて捨てるほどいるんだからな。」
おかしなことをしたら、即座に追放かもしくは・・・・とでも言いたそうな目で続けると、まだ他にも聞こうとしているにもかかわらず、ワリブはゆっくりと立ち去っていった。
そうか・・これは、お互いに信頼できるかどうかを試すってことか。

一人納得し、荷車の下に荷物を置くと、キャンプ地内を見て回った。
ローグのキャンプ地というだけあって、女性戦士が目立った。ワリヴ以外の主だった人物は、指導者的立場のハイプリーストのアカラと傭兵頭のカシャ、鍛冶屋のチャルシーと胡散臭そうなギードという名の闇屋。
魔物のうわさを聞いて来ている戦士なども結構いた。が・・・・

「ネクロマンサーか?・・・・本当にそうなのか?」
ほとんどの者はそう言いながら、頭のてっぺんからつま先までじろじろと見つめた。
そして、二言めには必ずこう続いた。
「まさか、あんたがあいつらを復活させたわけじゃないだろうが。・・・・・が、ネクロマンサー・・死霊使いねー・・・。」
「だとしたら?」
あまり同じことを言われた為、何回目かのとき、冗談でついそう言ってしまったが、その時のそのローグの態度は脳裏にくっきりと焼き付いている。
気持ち悪いものでも見るような目つきがその瞬間、これ以上鋭くならないほどの鋭さに変わり、持っていた弓に矢をつがえるとこう叫んだ。
「事実か?!」
急がず騒がず、両手をかざして冗談だと言ったものの、その言葉は、明らかにオレを受け入れてはいないことを示していた。
一応キャンプ地内でのもめ事はご法度。それ以上の行動にはでなかったものの、彼女の射るような視線は、その場を離れるオレの背中にずっと突き刺さっていた。
もっともオレとしても事を荒立てるつもりもない。嫌われるのは今更始まったことじゃない。

しかも、法外な値段で未鑑定品を売っているギード。そんな胡散臭い奴でさえ、こうつぶやいた。
「ネクロマンサー・・・生きているうちにこの目で見られるとは思いもしなかったよ。・・・会ってみたいとも思わなかったがね。・・・どうかね?昨今のこの騒動はあんたのような者が引き起こしてるって言ってもいいんじゃないか?」
魔物騒動のおかげで儲かってるんだろ?と言おうと思ったが、大人気ないのでやめた。そんな挑発にのるのもばかばかしい。しかし、ネクロマンサーに対する世間一般の評価をこのキャンプ地で垣間見た気がして、あまりいい気はしていなかったことは事実だった。
それ以上ギードとは話す気もなくなり、離れかけていたオレを引き止めるかのように、彼は、にたりといかにも悪徳商人らしい笑みを浮かべ、オレの肩を軽く叩いて付け加えた。
「まーなんだ、かと言っても、わしは儲かりゃ文句はない。せいぜい稼いで買ってくれ。他では手に入らないいいもんばかりだよ。当たり外れはあんたの運だがね。ふぉっふぉっふぉっ。」

 そして、しばらくの間、数人集まるとオレのうわさでもちきりだったらしい。
「おお、いやだ。思い出しただけでもぞっとする。あのいかにもネクラそうな表情、あの目つき。」
「ネクロマンサーは、死霊を愛するネクラなロマンチストという意味らしいじゃない?」
「いやーー、死霊だなんてーーー!へ〜んた〜〜い!」
「死んでもずっと愛してくれるんじゃない?」
「もしかして、彼も死んだ恋人を復活させて連れているとか?」
「ええ〜?冗談でしょう?!あ〜んな暗そうな顔と、がりがりに痩せててさ、恋人なんてありえないって!」
「じゃー、最初から死霊を召喚して恋人にするとかかな?」
「スケルトンの恋人?」
「そうそう。で、仲良く毒薬作っていたり、呪詛の秘薬を研究したり?」
「それってもしかして、究極のネクラ?」
「かも〜〜〜。」
「だから、ネクラマンサーって言うんでしょ?」
「違うわよ、ネクロマンサーよ。」
どっと笑いが辺りに響く。
「どっちでもそう違いはないって。」
「それよりも、彼が本当に味方かどうかが一番の問題ね。」
「そうね。」

 ・・ったく、ローグといっても女は女。噂話が好きらしい。
おかげで、噂話とはわかっていてもローグたちを束ねるアカラは、腕と信用性を証明するために、キャンプ地の近くにある魔物の巣窟と化した洞窟の魔物を一掃するよう、半強制的に言ってきた。

 ったく・・・世間の奴らはちっともわかってない。死霊のどこが悪いんだ?ネクロマンサーのどこが気持ち悪いんだ?他の戦士と単に使役するものが違ってるだけだろ?
・・・・こんなに従順でかわいい奴は、人間なんかにゃいないんだぞ・・・。

通称『ブラッドムーア』と呼ばれる魔物が徘徊する荒野。傍らで必死になって敵と戦ってくれているスケルトン。手をとめてオレはじっとそんなスケルトンを見つめながら考えていた。
修理費もいらないし、使い捨てでお得だぞ。死んだらまた新たに召喚すればいいんだしな。
・・・あ、すでに死んでいたんだっけ・・・・。
          


[つづき]


ニールとゆかいな仲間たち-Index】