dia-top.gif (8184 バイト)

【 小さな大魔導師リッツ その2・リッツと遊ぼなのぉ〜 】
〜Diablo Story No13〜



 ロイドを追い、急ぎ修道院地下へ下りたリッツ。
「ロイドぉ、どこなのぉ・・?」
が、リッツの声は薄暗いダンジョンにこだまするばかり。
「ロォイドォ〜〜!」
リッツはロイドを呼びながら、どんどん奥へと入って行った。
−ガチャガチャガチャ・・−
と、奥からリッツを見つけたスケルトン軍団が、賑やかに近寄ってくる。
「ああー!スケルトンなのぉー!」
初めてみる魔物にリッツはもう上機嫌。
「わあ・・おもしろいのぉー。」
リッツの手前、2mほどのところで止まると、スケルトン軍団は、隊列を正して、攻撃態勢に入る。
「わーい!リッツと遊ぼなのぉ〜!」
にこにこ顔でリッツはスケルトンに駆け寄り始め、その距離、あと一歩の所で大きく息を吸うと、精一杯の声で呪文を唱えた。
「ラァイトニングゥーーーーーッ!」
−バリバリバリ!・・ガシャガシャガシャシャン・・−
ライトニングの網に捕らわれたスケルトンは、これまた賑やかに崩れ落ちる。
「わーーーー!面白いのぉ・・・リッツ、もっと遊びたいのぉ・・」
手を叩き大喜びして、リッツはその視線を他のスケルトンたちへと向ける。
と、さすがのスケルトンもやばいと感じたのか、ぎょっとして、後退する為反転する。
が、むざむざ逃すリッツでもなかった。
「ホォーリィー、ボォールトォーーーーー!!」
満面の笑顔から放たれるのは、アンデットに取っては最悪の呪文!
−カシャン・カシャ・カシャン・−
哀れ、スケルトンたちは、見事にばらばら・・・・。
「わーーー!すごい!すごいのぉ〜!綺麗に崩れてるのぉ。」
リッツはもうこの上なく上機嫌。
「わーい!わーい!」
リッツはフロア中を駆け回った。
と、突然、足元にあった頭蓋骨につまずいた。
−スッテーーン!−
リッツは勢い良く仰向きに転んでしまった。
「痛いのぉ・・・。」
半べそをかきながら起き上がるリッツの脳裏に、面白そうな遊びが浮かんだ。
「そぉなのぉ・・・これをボールの代わりにするのぉ・・・」
リッツは今自分を痛い目にあわせた張本人、そこに転がっていた頭蓋骨を拾うといたずらっぽく微笑んだ。
「うーーん・・横に転がせばいいみたいなのぉ。」
転がす面を気をつければうまく転がっていくと判断したリッツは、眼球があったであろう今や空洞となった二つの穴に指を突っ込むと、辺りを見渡す。
そして、離れた所にスケルトンを見つけると、にこっと微笑んで、それに狙いをつけた。
「いくなのぉー!」
頭蓋骨を持った腕を大きく後ろに振ると、そのスケルトン目掛けて頭蓋骨を勢い良く転がした。
−ゴロゴロゴロゴロ・・・−
転がっていくその様子を、わくわくしながら見つめるリッツ。
「ガチャーーン!」
「わーーーい!命中したのぉ!」
転がって来る頭蓋骨が何を意図しているのか、全く分かっていなかったスケルトンは、逃げる様子もなく、至極簡単に受け止めてくれた。そして、その結果として、勢い良く倒ればらばらになる羽目になった。
「面白いのぉ!」
その様子に大満足のリッツは、倒れたスケルトンに近づくと、今度はその頭蓋骨を手にして、次の目標を探しはじめる。
そして、一大ボーリング大会が始まった。但し、ギャラリーも腕を競うライバルもいないが・・。
リッツの目に止まった者は、ゾンビであれ、スケルトンであれ、はたまたスカベンジャーであれ、何でもその目標となった。
「わーーーー!玉乗りなのぉ!上手なのぉ!」
ある時、その頭蓋骨に偶然にも上手く乗ったスカベンジャーがいた。玉乗りよろしく、ゴロゴロと転がる頭蓋骨の上で、必死に足を動かしているスカベンジャーに、リッツは拍手喝采(?)で大喜びした。
「でも、リッツには無理みたいなのぉ・・これじゃ小さすぎて乗れないのぉ。」
自分では、同じように玉乗りができない事が分かって、がっかりしたリッツだった。
そんなこんなで、瞬く間に1Fの魔物はいなくなった。
「じゃー、下に行くのぉ。」
リッツは、次はどんな魔物がいて、どんな遊びができるか、好奇心で目を輝かせながら階段へと向かった。
と、突然リッツの頭に母親の声が響く。
『いいこと?リッツ?お遊びの後は必ずお片付けするんですよ。おりこうさんは遊んだ後もきちんとするのよ?いいわね?忘れないでね?』
「はいなのぉ!ママァ!」
リッツは、そこに母親がいるわけでもないのに、元気良く返事をすると、片付け始めた。
「うーーん、でもぉ・・ごみ箱もおもちゃ箱もないのぉ・・・」
しばし、腕組みをして考えるリッツ。
「そうなのぉ!そういう時は一か所にまとめて整理整頓すればよかったのぉ〜。」
少し面倒だと感じたリッツだが、後片付けは絶対と教えられていた為、忠実に実行する。
「うんしょ・・うんしょ・・・」
ゾンビやスカベンジャーの死体は一か所に集めて魔法で焼きつくし、スケルトンの骨は広い部屋にかき集め、一大モニュメントを作成した。
それは、今にも踊りだしそうなダンサーの像。
「完成なのぉ・・。骨々ロックなのぉ!」
満足げに完成したモニュメントをしばし見つめた後、リッツは下への階段を下りて行った。


 そして、2Fでもその賑やかさは続いていた。
「わーーーーい!玉転がしパート2なのぉ〜〜!」
「ストライクなのぉ〜!」
キャッキャッキャッ!と声をたてて笑いながら、楽しむリッツ。
「ああーーー、外れちゃったのぉ・・・残念なのぉ・・・。」
そして、お片付けも忘れずに!
「うーーん、ここは火事になる心配がないから火遊びしても大丈夫なのぉ。」
家では厳重に禁止されている火遊びを思いっきりでき、上機嫌のリッツ。
「わーーーい!真っ赤な火の玉なのぉ〜!」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
興奮してファイアーボルトを連続的に放ちながら、フロアを駆け回る。
「あ!そうだったのぉ。ロイドを探さないといけなかったのぉ。」
走り疲れ、休憩をと座り込んだ途端に、ふとロイドの事を思い出すリッツ。
「どこまで下りていったのぉ、ロイドぉ・・。」
そんな事を考えながら、ころんと横になったリッツはそのまま夢の中。魔物さんと遊んで上機嫌の夢。


 「ううーーーん・・リッツ、どのくらい寝てたのぉ・・?」
十数分ほどで目覚めたリッツは、独り言を言いながら、下への階段を下りていた。

 「ああーー!ロイドなのぉ!」
地下3階、その奥詰まった部屋にロイドとその仲間らしい男女がいた。
「リッツも遊ぶのぉ。いれてなのぉ〜!」
ロイドたち3人は、スケルトン軍団に囲まれ、それに加えて、スケルトンキングのその執拗なまでの攻撃に苦戦していた。
「ホォーリィー・・ボーオールトォーーー!」
リッツは、笑顔一杯でロイドたちの周囲に群がるスケルトン軍団に向けて、呪文を放ち、それと同時に、スケルトンキング目掛けて大きくジャンプ!
「ストーンカース!」
空中で自分の両足に石化の呪文をかけると、そのままスケルトンキングの頭部にぶつかっていった。
「ガッキーーーン!」
見事命中!リッツはその衝撃で首から外れたスケルトンキングの頭部と一緒に部屋の片隅へ飛ぶ。
−ガシン!−
「わーい!やったのぉ!命中したのぉ!」
壁にぶつかった衝撃で受けるであろう痛みは、その足を石化していたお蔭か全く感じなかった。
一方、頭部という司令塔を取られたスケルトンキングの身体は、そのままの姿勢で突っ立っていた。
「こ・・・こんなアホみたいな事が・・・・」
自分たちの回りに残っていたスケルトンを倒し終わったロイドたちが、剣を振り上げた姿勢のまま硬直してしまったスケルトンキングとその頭部を抱えるリッツとを呆れ果てて交互に見る。
「わーい!ロイドぉ!」
そんなロイドに大きく手を振り笑みを投げかけるリッツ。
そして、その大きさなら乗れると判断したリッツは、足の石化を解きその上にバランスを取って乗ろうとして、その額にはまっているりっぱな王冠に気づく。
「うーーん・・転がすには王冠が邪魔みたいなのぉ。」
そして、突っ立っているキングの身体に目掛け、それを投げはじめた。
「これは、返すのぉ。」
−ヒューーン!−
どうやら、今回のお遊びは投げ輪らしい。
−カラン!−
「ああ!失敗なのぉ・・。」
上手く首に掛からず、側に落ちてしまった王冠を見てがっかりするリッツ。
「今度こそ上手くやるのぉ。」
呆れ果て呆然と立ち尽くしているロイドたちを尻目に、リッツは、2度3度と失敗したあげく、なんとかバランスをとってキングの頭部に立つことができた。
そして、王冠のところまで、それを乗りこなして行き、拾った王冠を再びその首目掛けて投げる。
「うーーん、なかなか難しいのぉ・・。」
独り言を言いながら、何度も輪投げに挑戦するリッツ。
「わーーーい!成功なのぉ。」
10回目くらいだっただろうか、ようやく首にその王冠がかかる。
「わーーーい!ねー、見てた?ロイドぉ?」」
「あ・・ああ・・・上手いもんだ。」
手を叩いて喜ぶリッツに、ロイドたちは半ば呆れながらも拍手する。
「じゃー、リッツ、向こうで遊んでくるのぉ。」
キングの頭の上で上機嫌のリッツは、元気にそう言うと、そのまま玉乗りしてその部屋から出て行った。
心なしか、窪んだキングの両目から涙が出ていたようにも見えた。
「な、なんなんだ、あれは?」
ロイドの仲間の一人、やはり戦士であるボルガが呟く。
「まー、・・あれさね、・・命の恩人ってことさ。」
女戦士スカヤがくすっと笑いながら言う。
「・・そうなるのかな、やっぱり・・しっかし、これどうすんだ?」
動かなくなったキングの身体を見上げ、ロイドがため息まじりに言う。
「ほかっておいて害はないようだけどな。」
『命の恩人』という言葉に苦笑しながらボルガは自分の剣を鞘に収める。
「そうだね。どうやら息の根を止めるには、頭部に止めをささないといけないみたいだしね。」
スカヤもまた剣をその鞘に収めると、にこっと二人に笑いかける。
「行こうじゃないか?面白いもん見れるかも知れないよ?」
「あ、ああ、そうだな。」
今起きた事は奇跡が奇跡を呼んだもの。こんな幸運な事がそうそうあり得るわけはない。そう思うと心配になった3人は、足早にリッツの後を追った。

 が、そんな心配はリッツには必要なかったようだった。
フロアは、ゴロゴロとキングの頭部の転がる音とリッツの上機嫌な笑い声、ホーリーボルトやファイアーボルトなどの魔法弾の飛び交う音と光、そして、遊び相手にされた哀れな魔物達の倒れる音や断末魔の声で満ちていた。
「こ・・こりゃ〜・・俺たちの出る幕はねーようだぜ・・・。」
3人は、ただただ呆気に取られて、その様子を眺めていた。


 「面白かったのぉ・・。」
散々遊び、フロア全ての魔物を倒してから、呆れ果てたものの置いていくわけにはいかない、とキングの身体のある部屋で待っていたロイドたちの所へリッツは戻って来るといかにも嬉しそうに言った。
「そうかい、よかったね、坊や。」
スカヤがにこやかにリッツの頭を撫でる。
「ぼく、坊やじゃないのぉ。リッツなのぉ。」
そんなスカヤに笑顔を返しながら、すかさず訂正させるリッツ。
「そ、そうかい。そりゃー悪かったね、リッツ。あたしはスカヤ。で、向こうの筋肉マンがボルガさ。よろしくね。」
予想外の事を指摘され、苦笑いしながらスカヤは言った。
「うん!よろしくなのぉ!」
元気一杯に答えるリッツ。
「ったく!・・こんな所まで来てガキのお守りか?」
ボルガがいかにも面白くないといった表情で座ったまま吐く。
「お守りされるのは、果してどっちかな?」
キングと苦戦していた事を思い出して、ロイドが少し意地悪く言う。
「そうだよ。いやならいいんだよ、ボルガ。可愛い子じゃないか?」
すっかりリッツが気に入ったスカヤがボルガを睨む。
「へいへい、勝手にしてくれ!その代わり、何があっても俺は知らねーからな。」
そっぽを向き、言い捨てる。
「ああ、喧嘩しちゃ駄目なのぉ。」
リッツが慌てて二人の間に入り、交互に見る。
「喧嘩じゃないさ。大丈夫だよ、リッツ。」
「そうなのぉ?」
心配そうに見つめるリッツにスカヤは微笑む。
「ああ、ちょっとすねてるだけさ。」
「誰がすねてんだ?誰が?」
八つ当たりと分かってはいるが、多少なりとも頭にきたボルガが勢い良く立ち上がる。
「ボルガさん、お願いがあるのぉ。」
「お?」
が、その怒りもリッツのくったくのない笑顔でかき消されてしまう。
「なんだ?チビ?」
「ぼくリッツっていう名前なのぉ。」
「だけどチビはチビだろ?」
ボルガはリッツと背を比べてみせる。身長2mほどのボルガは、キングの頭に乗ってはいるというものの、リッツには、首が痛くなるほど見上げなければならない。
「うん、そうなのぉ。ボルガさんの言うとうりなのぉ。リッツ、チビなのぉ。」
「およ・・・」
素直に認めたリッツに、ボルガは拍子抜けする。
「ははははは!」
二人のその様子を見ていたロイドとスカヤが笑う。
「OK、OK〜・・・で、お願いってなんだ?」
二人を軽く睨んだ後、ボルガはため息をつくとしゃがみ込んでリッツと視線を合わせる。
「肩車して欲しいのぉ。お首を返してあげるのぉ。」
ストンとキングの頭から下りると、にこっと笑いリッツが答える。
「か、返すって・・そんな事すると・・」
少なからず焦るボルガ。聞いていたロイドとスカヤもぎょっとする。
「大丈夫なのぉ。」
「だ、だけどなぁ・・・。」
賛同はできなかったが、リッツの笑顔に負けた形で、一戦交える事を覚悟して肩を貸すボルガ。
「はい、遊んでくれてどうもありがとうなのぉ。」
リッツは、ボルガの肩の上であるにも係わらず、頭を乗せるには、精一杯の背伸びをしなくてはならなかった。
−カクン・・カシン・・−
頭部を乗せると同時に距離を取ったボルガは、動きはじめたキングに注意を払いながら急いでリッツを肩から下ろすと戦闘態勢を取る。ロイドとスカヤも既にそのつもりだ。
と、呼び止める間もなくリッツがキングに駆け寄った。
「お・・おい!」
すっとリッツを抱き上げるキング。
これでは攻撃ができない、と緊張する3人の眼に、涙するキングの姿があった。その空洞となった両目でじっとリッツを見つめているようでもあった。
「ア・ル・ブ・レ・ヒ・トォ〜・・・」
部屋中にその暗く悲しみに沈んだ声が響き渡る
そして、今一度、ぎゅうっとリッツを抱きしめると、その姿はふっと消えた。
−トン!−
床に上手く着地したリッツは、珍しく沈んだ面持ちで、小さく呟いた。
「遊んでくれてありがとなの。王子様とは、きっと向こうで会えるの。」
「おいおい・・ってこたぁ、なんだ・・・奴さんは成仏したってことか?」
ボルガがそのぼさぼさの頭髪をくしゃくしゃとかきながら呟いた。
「だろうね?」
スカヤもまるで狐に摘まれたような表情をしていた。
「玉代わりにされておもちゃにされて、か?」
再びその姿を表しはしないか、と、辺りに注意をはらいながらロイドが言った。
「・・うーーん、そうだねーーー。」
腕を組んで考え込むスカヤ。
「多分、遊んでる(遊ばれてる?)うちにリッツの綺麗な魂にふれて浄化されたんじゃないのかい?」
「・・まー、そう取れないこたぁないが・・・」
「とにかく、だよ・・」
スカヤはリッツを抱き上げた。
「大した坊や、じゃなかった・・魔法使いだよ、リッツ・・・あんたは!」
「そうだな。リッツ、すごいぞ!さしずめ小さな大魔法使いってとこだな!」
3人の笑顔につられ、リッツにいつもの笑顔が戻っていた。
「リッツ、大魔法使いなのぉ?」
「ああ、そうさ。」
「わーい!リッツ、大魔法使いなのぉ〜!」
「あ!こら、そんなに暴れると落っこちるってば!」
スカヤに抱かれたまま、リッツは両手を上げ、飛び上がって喜んでいた。



<<Back>> <<Next>>

【DIABLO】