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【 ローグ、ニケ その8・黄金の弓 】
〜Diablo Story No3〜



 ニケとキリーは、街外れにある丘に登っていた。
「ホントにこのベールのような霧って、ヤな気分だなぁ・・。」
「うんそうね。闇の気でしょ?これって。この辺り全体を覆い尽くしてるもんねー。」
邪気に覆われたトリストラムからは、輝く太陽は見えなかった。薄いベールを通してぼんやりと見える太陽。山育ちで太陽を一杯に浴びて育ったきたニケは、眩しく輝く太陽が懐かしかった。
「あたしね・・邪気を払うっていう黄金の弓を探してるの。村のおばばが、そう占ってくれたの。あたしの弓は、太陽の弓だって。」
「太陽の弓?」
「うん。どんなのか見たことないから分からないけど。でも、きっと一目見れば、そして、手にすれば感じるの。これがあたしの、あたしの為の弓なんだって!世界のどこかで、あたしを待っててくれてるはずよ!」
「そっか・・俺たち魔導士の間に伝わる言い伝えと一緒だな。俺たちの間にもドルイドの杖っていう話がある。」
「ふーーん・・で、キリーはそれを探してるの?」
「欲しがらない奴はいないと思うぜ、魔導士ならな。」
にっこりとし、キリーは街が一望できる土手に腰をかける。
「で、ニケちゃんは、その弓が見つかったら、村へ帰るのか?」
「うん。見つけて帰れば、一人前よ!でも、その前にディアブロを倒さないと!」
ニケもキリーの横に座り、眼下に見える修道院を見つめる。
「そうだな。」
しばらく2人は、お互い黙ったままトリストラムの街を、修道院を眺めていた。明日は、再び15階へ下りる。ラザルスを倒し、そして、魔王、ディアブロを!

 「ニケちゃん?」
「何?キリー?」
遠くの空を見たまま、自分を呼んだキリーの横顔を見るニケ。
「もし、ディアブロを倒すことができたら・・・イヤ、絶対倒してみせるけ
ど、その時まだ、弓が見つかってなかったら、一緒に旅を続けないか?」
「うん!キリーが一緒だと心強いわ!」
ニケは明るく答える。
「見つかったら、キリーもあたしの村へ来ない?みんな大歓迎するわ、きっと!」
無邪気に言うニケに、まだキリーへの特別の感情はみられない。キリーは、その澄んだ薄緑色の瞳と視線を合わせ微笑む。
「ああ、そうだな。きっといい所だろうな。」
「あーあ・・早く弓が見つからないかなー?そうしたら、まず、空に向かって弓を射るの!太陽に向かって!この霧を追い払うの!!」
街の風景から空に視線を移し、元気良く言う。
そんなニケをキリーは黙ったまま、そして、愛おしそうにじっと見つめていた。


 そして、翌日。ニケ、キリー、そしてアルバートは、再び15階へ下りていた。
「よーし、行くぞ!」
この前の二の舞はしない!3人はそれぞれ自分にそう言い聞かせていた。
「ニケちゃん!」
少し緊張しているらしく、強張ったような表情をしていたニケの頭をコツンと軽く叩き、キリーが微笑みかける。
「大丈夫!俺様に任せておけって!絶対ニケちゃんを守ってみせる!俺様の命に代えてもな!」
「ダメよぉ・・そんなの!命に代えちゃ!キリーも無事でなきゃ、意味ないじゃないのぉ?!」
ニケはわざと口を尖らせてみせる。
「ははは!そうだな!うん!大丈夫だ!」
「そ!大丈夫!!」
そして、3人は、奥へと進む。闇の大司教ラザルスを倒すために。


 −ブゥゥゥーーーーン−
巨大な火球を次々と繰り出し、侵入者を焼き尽くさんとするラザルス。
ニケたちは、ラザルスの間で苦戦していた。
移動の術を巧みに操り神出鬼没。ラザルスは、部屋のどこに出現するか予想がつかない。
が、そこは、石化の術がある。他の魔物のように長時間の効き目はないが、ある程度効力はあった。だが、そう易々と倒される相手でもない。
−シュゥーーーーン−
「げ!分身の術かよ?」
キリーが思わず叫ぶ。
1人だけでも手がかかるのに、一度に10人にも増えたラザルスに、ニケたちは、否応なく苦戦を強いられる。
巨大な火球も10倍・・瞬間移動の術でそれを避けながら、石化の術で動きを止め、攻撃する。
「ダメだ!本体をやっつけなけりゃ、いつまでたっても一緒だぞ!」
アルバートが叫ぶ。影を倒しても、一瞬後、再び出現する。
「ほ、本体って言っても・・どれなの?」
ニケが火球を避けながら叫ぶ。
「ああ!もう面倒だーっ!」
キリーが自分の頭をぐしゃぐしゃかき回して叫ぶ。
「やってやろうじゃねぇか?」
そして、火球が襲いかかってくるのも構わず、次々と石化の呪文を繰り出す。
1人ずつ石化して倒していたのでは、埒があかない。倒さずに本体も影も全て石化してしまおうという、やっけぱちの戦法。
「危ない!キリー!」
巨大な中でも、一際巨大な火球がキリー目掛けて放たれた。
ニケは思わず自分の立っていた後ろ、祭壇の後ろにベールで覆って立てかけてあった弓を手にし、火球に向けて矢を射る。まるで、その弓に呼ばれたかのように、無意識に。
−ヒュン!−
−バシュッ!−
矢は確実にその火球の芯をとらえ、それは一瞬にして消滅する。
「お?」
キリーがニケを見る。
ニケの手には、黄金に輝く弓があった。
「ニケ!」
その言葉でニケは、初めて気づく。今自分が手にしているものに。
「こ、これ・・?」
弓を持っている感じがしない。そう、まるで身体の一部、自分の腕のよう。
(これが、あたしの弓?!)
ニケの思いに呼応するかのように、一瞬弓が光り輝く。
(そう!これこそが、探してた弓!)
そう確信すると、ニケは次々と、石化され身動きできなくなったラザルスたちを撃ち始める。
(負けちゃいられねぇな。)
そんなキリーとニケを見て、アルバートも一層奮起する。
「いくぞぉーーーーーー!!」
次々と放たれるキリーの石化の呪文、アルバートの大剣が舞うように光り、そして、火球をも消滅させるニケの矢が連射されていく。



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【DIABLO】