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【 ローグ、ニケ その7・閑話休題 】
〜Diablo Story No3〜



 「もう!ホントに頭にくるんだから!」
ニケは修道院地下1階へ1人で探索に下りていた。
「何が、100万年早い、よ!お礼を言えなんて思わない。認めるなんて言ったくせに、結局子供扱いするんじゃないのぉ!」
ニケは、芯から怒っていた。
それもそのはず、アルバートに散々からかわれてきたのだった。
「後先考えないガキって・・あの時、アルバートの方がそうだったのにぃ!」
ぶつぶつ文句を言いながら歩き続けるニケ。
と、奥から、わらわら、ガチャガチャとスケルトンの集団が歩み寄ってくる。
「ったく!うるさいんだから!」
ニケはやり場のない怒りをモンスターにぶつける。
「チェイン・ライトニングー!」
−バリバリバリ!−
周囲に稲妻が走り、ガラガラと見事にスケルトンは総倒れ。
「ふう・・・。」
ため息をついていた時だった。
−ガン!−
いきなり頭に衝撃が走る。
剣か何かで叩かれたようだ。が、兜をかぶっているので、大事には至らない。
「ち、ちょっと痛いじゃないのぉ?」
頭を押さえ、後ろをふりむくニケ。
「え?」
視線の先には、なにやら肋骨らしきものが・・・。ニケは徐々に視線を上げていった。
肋骨、首、そして・・・骸骨!!
そして、目の窪みにぎょろっとした真っ赤な瞳。視線が合ったその途端、確かににっこりと微笑んだような気がした。なんとも言えない気持ちの悪さで寒気がして、ぞっとするような微笑み。
「こ、これは・・レオリック王におかれましては、ご機嫌麗しく・・・なんて、言ってる場合じゃないーーっ!」
レオリック王の微笑みは、獲物を見つけた喜び。彼は手にしている特大のミスリルソードをニケに向かって振り下ろしてきた。
「ど、どうしてこんなところに王様がいるのよぉ?ここ、1階よぉ?!」
慌てて距離を取り、矢を射る。
−ヒュン!−
が、肋骨の間を通り抜けた。
「ち、ちょっとぉ・・・!」
−ヒュン、ヒュン、ヒュン!−
狙いを付け連射する。が、レオリック王はニタニタと笑いながら、ひょい、ひょいと上手く避ける。まるで楽しんでいるかのように。
「げげーーー・・」
ニケの放った矢はことごとく骨の隙間から抜けていってしまう。
石化の魔法も瞬間移動の魔法も身につけていなかったニケは、焦った。
敵の動きの方がすばやい。距離を取っても、すぐ追いつき、その長い剣でたたきつけるように切りかかってくる。
「あーーーん・・アルバートが瞬間移動と石化の魔法書を手に入れてこないうちは、潜らないって言った意味が分かったーーー!」
「でなけりゃ、里へ帰っておとなしく花嫁修業でもしてろ。」と言ったアルバートの声が頭に響いた。
「もーーー、絶対、見つけるんだからぁ!」
逃げながらニケは固く誓っていた。が、とにかく今はこの状態をなんとかしなくてはならない。ニケはフロア中を走り回っていた。
と、目の前にスケルトンの弓矢隊が!
慌てて、弓矢隊が控えている横の扉を開け中に飛び込む。
−バタン!−
扉を閉め、それにもたれ掛かって肩で息をするニケ。
と、その途端、気持ちの悪い声が部屋中に響く。
「フゥレッシュ・ミィートォー!!」
慌てていて気づかなかった。そこは辺り一面血の海。血糊の絨毯の上に、くし刺しになった人間の死体があちらこちら!!
そして、部屋の奥から、ブタの化け物が!!
「ドッシェーーーーッ!ここって、あのブッチャーの部屋だったのぉ?」
血と腐敗の臭いなど気にしていられない。ニケなどいとも簡単に一刀両断できそうな、巨大な斧のような包丁を構え、ブッチャーは近づいてくる。
前方は人食い豚、後方は弓矢隊を引き連れた骸骨。ニケは絶対絶命!!
「よ・・よーーし!」
意を決して扉を開ける。そして、ブッチャーが扉を開けれないことを聞いていたニケは、慌てて閉める。
案の定、ブッチャーが扉を開ける気配はない。が、目の前には、獲物を追い詰めて喜ぶレオリック王が。
−ニタリ−
真っ赤な目が笑っている。
「もう!空間移動してるからって、何もあたしの時に両方出なくてもいいでしょう?」
ニケは自分の運の良さを呪った。一体どれだけの戦士が、この2人との遭遇を祈っているのだろう。ここに潜る戦士のほぼ全員はこの2人を倒したいと思っているはずだ。なのに、会うことができないというのがほとんど。なのに・・。
「もう!チェイン・ライトニングーーー!!」
ニケは後ろに控えている弓矢隊に向けて、思いっきりチェイン・ライトニングの呪文を唱えると、レオリック王がその大剣をニケの頭上に振り下ろさんとするその瞬間、彼の股下をくぐる!そして、歯抜けとなった弓矢隊の間を縫うようにして駆け抜けた。

 「はあはあはあ・・・・」
どこをどう走ったのか、どっちの方向に走ってきたのか、覚えがなかった。が、
一応、一息できそうだと判断したニケは、慌てて入ったその小部屋の扉の横の壁にもたれかかって、荒く息をしていた。心臓が破裂しそうだった。
今度は、ブッチャーの部屋でない事は確か。
−バッターーーンッ!−
と、不意に扉が勢い良く開け放たれる。
入ってきたのは、ニケを執拗に追っているレオリック。
彼は、戸口で小部屋の中をじろっと見渡し、いないと判断したのか、そのまま立ち去る。
−ギギギギギーーー・・−
開け放たれたままの扉が、ゆっくりと戻る。
−バタッ!−
と同時にニケが勢いよく床に倒れる。
ニケは・・・思いっきり開けられた扉と壁の間に挟まれ、その時の衝撃でとうに失神していた。

 そんな事があった後、ニケは心配して探しにきたキリーに倒れているところを発見された。ニケが欲していた魔法書と共に。不幸中の幸い、ニケが逃げ込んだその部屋は、まだ未発見の書庫だった。
勿論、キリーが来た時は、レオリック王もブッチャーもいない。ニケは助けに来てくれたのがキリーで良かった、と心から思った。これが、もし、アルバートだったら・・・こんな話は頭から信用してくれないだろう。またまた馬鹿に
されるのがオチだ。1階の魔物相手に気絶・・・これ以上のかわかわれるネタはない!
最も、今回に限り、キリーも本当に信じたようではなかった。口では信じてると言いながら、それ以後、決してニケを1人にしようとはしなかったから。
例え1階でも、ぴったりと寄り添っていた。



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【DIABLO】